第7話【序章の詐欺】領主ゴンザレス裏話③

 そんな肝心の小娘の方はよく分かっていないのだろう。

 何故かいつも俺の指示を待っている。


 俺への夜伽も頼めば平気でしてくれそう。


 だけど商売としてとか、契約でもなくて夜伽とかに呼んだりしたら。


 貴様は何様じゃァァアアアアア、ぶすり、ぎゃァァアアアアア!!!


 ……ってなりそうじゃない?


 そもそも元王女を夜伽に呼ぶ詐欺師って、どこからどう聞いても犯罪臭しかしない。


 だから夜伽に呼びたい俺の心の叫びをグッと堪えて、別の指示を出して部屋を追い出す。


「分かりました。全てはあるじ様の御心のままに」


 そう言って、少しだけ残念そうな顔で優雅な礼をして執務室から出て行く。


 その度ごとに俺は小娘を食べたくて、椅子の上で身悶えして、ついには椅子から転がり落ちてケツうった。




 そんな訳で、いい加減我慢の限界の俺は、自分がどういう立場なのかさっぱり理解出来ないまだが、それでも娼館で豪遊しようと思ったら娼館は色々とボロボロ。


 あ、これ、ここでイタしたら病気になるなと思い、泣く泣く諦める。

 そして次の日。


「娼館の女をここに呼べ」

「それは……いえ、御意」

 小娘は少しだけ抵抗しようとしたが、それ以上、反論せずそう返事をした。


 ちょっと可愛くむすっと不満顔。

 くおぉぉおおお! おのれぇぇえ小娘ー。

 ちょっと可愛い顔をして、この俺を誘惑しやがってぇぇええ!!


 貴様に俺が今、手を出したら言い訳のしようもなく、元王女のお相手に確定してしまうと気付いての狼藉ろうぜきかぁぁあああ!!


 今ですら、訳分かんない立場で怖いのにチンケな詐欺師にそんな重責背負えるかぁぁあああ!!!


 ……あと、手出したら切られそうで怖いの。

 いきなり切りつけられたこと、わたくし、忘れませんことよ!


 とにかく、スッキリしたいけど、今のこの領内の娼館ではダメな訳よ。

 で、まあ、娼館勤めの娘さんたちを呼んで貰った訳だが……コレはないだろ?


 若さとか容姿やスタイルとかそういうことじゃないんだ。

 コレがもう臭いの何のって。


 もうね、ここの領地の前任者何してたの?

 何でここまで酷く出来るの?

 前任者あのデブ侯爵かー。

 おのれー、我が覇道(娼館遊び)を邪魔すると言うのかァァアアアアア!!


 まあ、娼館に興味がなかったのかも知んないけどさー。

 娼館の担当者いる?

 あ、居ない?


 この土地では娼館を公営で管理していないようなので、裏の人間にも話をつけて公営管理にする。 

 奴隷と同様に娼館も訳有りが非常に多く集まる。


「とりあえず、風呂だ。

 それとそんなにガリガリでは話にならん。

 食事の改善、衛生面の改善が、必要だな。

 衛生面は掃除にうがい、手洗いの徹底だ。


 管理者は、そこのお前。

 お前が衛生担当と食事担当を任命し以後管理しろ。


 困った事があれば、近いうちに新しい担当が来るからそいつを頼り、予算を確保してもらえ。

 後、この中から領主邸に務めさせろ。

 もちろん、見た目が良く優秀な奴だぞ」


 俺は、やや年配でキツめな目をしていた女に責任を押し付けた。


 押し付けた後で気付いた。


 このキツめな目の女……大政治家セリーヌじゃねぇか。

 コルラン国の議会で辣腕らつわん奮って、奮い過ぎて対抗勢力にめられて奴隷落ちさせられたのか。


 コルラン国は王制ではあるが議会がある。

 そうは言っても絶対の権力は王族にある訳だが、一部法律を採用したりもする国だ。


 大国の中では比較的に新しい国だ。

 その国でも女性の立場は高くない。

 大国で言えば、女性の地位が高いのは、帝国ぐらいかもしれない。

 それ以外の小国なら様々ではあるが。


 そういう訳で、スラハリたちと同じ立場に任命して、色々任せると指示したら泣かれた。


 クックック、働かされて辛かろう。

 え? 女でありながら、こんな大役を任せていただいて感謝致します?

 あ、そう……変わってるね?


 ゴンザレス、ここまで一生懸命働きたくないわ?


 な、なんか全員、涙脆もろくない?

 ゴンザレス泣かないよ?

 現状が訳分からなさ過ぎて、泣きそうだけどな!!

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