第8話【序章の詐欺】領主ゴンザレス裏話④

 俺の理想のパラダイスを詰め込んだら、僅かな期間で国1番の娼館となって希望の星とか言われ出した。


 娼館を改善の結果、見目麗しい娘は館にあげてメイドになってもらったよ。


 それと娼館も含め学業にも力を入れさせた。

 娼館でも様々な知識や技を学べる様にして身請けも、自分自身での借金返済も増えた。


 文字を!!

 貴様ら文字を覚えるのだ!!

 そして本を書けい!!!


 反対する奴らや利権をむさぼる(俺以外の)悪党共も当然居たが、この土地誰の土地だと思ってんの?


 化け物ナンバーズの小娘、No.8イリス・ウラハラ様の土地よ?

 叩きのめしました、小娘が。




 その中でも利に聡そうな奴を見つけたので、各国の情報収集や調略を任すことにした。


 流浪の情報屋のウェンブリーと義賊を自称するカラハム。

 結構、その筋では有名人。


 君らなんでこんなところに居るの?

 流浪の情報屋ウェンブリーは、ヘマして帝国の第3諜報部隊に追われてたらしい。


 カラハムは昔からこの土地を根城にして、街道の道案内や裏街を取り纏めていたらしい。


 この地方は、国境なのもあって紛争が絶えず、忸怩じくじたる思いを常にしていたそうだ。


 俺が言ったのは、単純なこと。

 極端に言うが、お前らがやりたいと思うことをすればいいじゃんと。


 これは確かに普通の領主は言うことはない。

 俺が領主ではないことは置いておいて、領主は利権を手にしてなんぼである。

 それらの利権を集め、私服を肥やし贅沢をするのだ。


 俺も領主ならなぁ〜……。

 綺麗になってメイドになった娼館の姉ちゃんたち並べて、豪遊するんだけどなぁ〜。


 人生ってままならないね。

 それを愚痴るととても変な顔をされて、すれば?

 そんなことを言われた。


 いや、俺、領主じゃないから。

 そいつらには信用出来そうな商人を紹介してもらい、商品をコルランに売ってもらうことを頼んだ。


 さらに大要塞サルビアの備蓄や補給から、横流しを段取りして貰えるように頼んだ。

 それに合わせてコルランが近々攻めてくることも話した。

 トップシークレットよ?


 それにはカラハムが目を見開く。


「へ? コルランが攻めてくるなら、備蓄を売らせるのは不味いんじゃないですかい?

 旦那」


「普通はそうだがな。

 今、領内で行っている思い切った政策は、利権が整う前に一気に行うのが大事なんだが、まず金が足りなくなることで足が止まる。

 つまり、国云々よりこの領には金が要るんだよ。

 俺は戦争が嫌いだが、特需も生み出す。

 売り先はコルラン国。

 奴らは今ならいくらでも買う、そこに乗る。

 ……とは言っても、だ。

 戦争でこの領がぼろぼろにされても本末転倒。

 よって、戦争が始まった瞬間にコルランにはお帰り頂く。

 これはそのための一挙両得よ?」


 簡単に言うと、備蓄が減っている情報を流し、コルランが攻める時期を冬頃に誘導する。


 冬将軍が来たりする地域ではないが、冬の時期は活動が制限される。

 だから、本来はその時期は攻めてこない……と、エストリア国は思うだろう。


 情報を流し、あえてその不意をコルランに突かせるのだ。


「まあ、この後はサボンたちも交えて話すがな。

 コルラン国を罠にかけようと思ってな。

 実際、危ない橋を渡るしかない。

 土地を守るってのはそんな甘いもんじゃねぇしなぁ」


 失敗したら逃げるから、お前らもその時は逃げるんだな。

 エストリア国を1度は危険に晒すのだ、そんなことがバレたらヤバいしな。


「ウェンブリー、情報については頼んだぞ?

 あとついでに、こむす、イリス……えーっと、殿下? 

 まあいいや、お嬢が俺をNo.0なんて口にしてたから、変な誤解が広まったりしないように頼む。


 俺はまかり間違っても、No.0なんかじゃないからな!」


 俺の長い話を黙って聞いていた2人は、何故か呆然として互いの顔を見合わせた後、重々しく口を開く。


「……旦那がウラハラ国でもっと早くカストロ公爵を継いでいれば、ウラハラ国は滅びなかったことでしょうね」


 ウェンブリーがそう言うが、俺は逃げた時に後腐れがないように素早く否定する。


「俺、カストロ公爵でも無いから」

「へ!? いやしかし!」


 俺は両手を広げ肩をすくめる。

「俺はチンケな詐欺師よ。しがない根なし草さ」


 その俺の反応を見て、2人は何故か、再び呆然として……やがて、頭を下げる。


「……全て御心のままに」


 なんでだよ!?

 お前ら本当に分かってる!?


 カストロ公爵だけど、秘密にしろって意味じゃ無いからな!?

 本当にカストロ公爵じゃないだけだからな!!





 他の奴らにもコルランが攻めてくることと、そのタイミングについて説明。


 その時期までに金を稼いで、施策を実行していくように指示。

 上手くいくかなんて俺は責任を持たんがね。


 セボンだけにはコルランが攻めて来た際の配置と動きを説明。

 絵が上手い奴を連れて来て、地形を教えながら地図を書いてもらう。


 この辺りも旅して来たことがあるから、大体知ってる。

 良い本は燃やされてあまりなかったけど、地元の人の話が面白くて纏めといた。

 冬の時期の乾燥した季節に吹く風の向きやらなんやら。


 いつか本にして古本屋を開くんだぁ……。

 この領内で店出させて貰えるかなぁ?


 そんな俺の夢を語ると、セボンにとても変な顔をされた。

 何言ってんだコイツ、みたいな顔。


 スラム上がりのチンケな詐欺師でも、夢ぐらい見たっていいだろ!?

 ムキー!!!


 それはともかく、コルランの補給集積地になりそうなポイントを洗い出し、そこに事前に火の宝珠を仕掛けておく。

 あ、要するに爆弾ね。


 サルビア大要塞を狙わせることで、コルラン軍の動きを誘導するのだ。


 戦争なんてね、段取りが全てな訳よ?

 武力でどうこうじゃない訳よ、書物はしっかりと教えてくれるのよ?


 兵法書などもあまり多く残っていないので悲しい時代である。

 元々書く人が少ないのかもしれないが。


 職人とかも師弟してい制がまかり通っている所為で、技術が共有されず発展性が乏しいのも問題だ。


 本だ! 本で広めるのだ!


 どうせ、にわかな職人の腕では他の領には勝てんのだ!

 新興には新興のやり方がある!


 ついでに俺の本に対する欲望を乗っけるだけのこと!


 そんな話をサボンにすると……。


「お館様がカストロ公爵家を早々に引き継いでいれば、ウラハラ国は滅びないどころか、帝国を逆侵攻していたかもしれませんね……。

 まさか世界最強のNo.0様がそんなところに居るとは思いもしますまい」


 無理に決まってんじゃん?

 単純な武力で帝国をどうにか出来る訳ないじゃん?

 あと俺、カストロ公爵の遺児じゃないしNo.0でも無いから。


 広めるなよ?

 そのガセネタ。


 全て詐欺だから。

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