第9話【序章の詐欺】領主ゴンザレス裏話⑤
そして、時間はいくらあっても足りないもので、ついにコルラン国が攻めて来た。
世界ランクNo.1も一緒に。
ウラハラ領(カストロ公爵領)終了のお知らせ!!
早速、俺は逃げた。
逃げるついでに相手の食料集積所が有ったので、計画通り燃やしてもらった。
逃げるにしてもやることはやった俺エライ!
予定集積地への道は馬が走りやすいように整備済み。
そのための名馬に騎馬隊も組織。
白馬隊という名の精鋭部隊まで出来てしまった。
時間との勝負よ。
No.1がサルビア大要塞を攻めて留守の間に、集積地を燃やす方が良いのでは、とサボンなんかは提案するが。
ノンノンノン、世界最強のNo.1が居るからこそ油断すんのよね、人って。
普通はその通り、No.1が留守時を狙うもの。
流石は世界最強No.1、そう簡単に足止め出来るものじゃない。
で、す、が!
こちらには世界ランクNo.8のイリス・ウラハラが居ます。
「足止めだけなら、お任せ下さい」
そう言って、儚げに微笑まれた。
あ、そう?
30分ほど粘ったら逃げたら良いから。
伝わってる?
まあ、世界ランクNo.1は良くも悪くも紳士である。
戦争の決着がついて、追い討ちをかけたりはしないことだろう。
それは平時では優しさであり、戦時では甘さだ。
戦争を知らないとも言える。
彼にはそういうところがある。
だからまあ、最悪でも捕虜となり乱暴はされないことは間違いない。
かー! この小娘もねぇー!
何度も思うけど、怖くさえなけりゃぁなあ!
もうね! もうね! 我慢は辛いのよ!
目の前に極上の高級料理(超猛毒入り)を並べられているような感じなのよ!!
カラハムに愚痴ったら、手を出せば良いのでは、とかなーり不思議そうな顔をされた。
冗談じゃない!!
手を出したら殺されるでしょ!?
偉い方にはそれが分からんとですか!?
何にしても、作戦は上手く行き過ぎなほど上手くいった。
とにかく俺は逃げるけど、ウラハラ領(カストロ公爵領)は今後もエストリア国で頑張って本を作り続けて貰わねばならんからな!!
頑張れ! ウラハラ領(カストロ公爵領)!!
この大戦の後、この土地はウラハラ国元王女イリス・ウラハラの要請で、正式にカストロ公爵領と呼ばれるようになった。
同時に世界ランクNo.1を退け、なんと僅か500の兵でコルラン国の大軍を追い返した世界最強No.0の伝説は、さらに世界に広まった。
とはいえこの日、公式にNo.0の名が出てきたわけではない。
この戦争の発生の少し前、亡国ウラハラの王女イリス・ウラハラが何者かを伴って、この地に領主としてやってきた。
その何者かは、大国コルランに滅ぼされたシースルー国の天才執政官スラハリと騎士団長セボンを奴隷身分から引き上げ、その領地の采配の全てを託した。
それだけではなく娼婦に落ちていた大政治家セリーヌを見出すと、彼女に公的立場と人材発掘を命じた。
流浪の情報屋のウェンブリーと義賊を自称するカラハムもまた、カストロ公爵領の裏と情報を統括していく。
なお彼らは時々、とある詐欺師に接触し情報を渡しているが、それはこの領地のこととは何ら関係がない筈である。
娼婦に落ちていた数多の有能な女性が登用され、領主邸には有能な人材で溢れた。
この時謎の人物が命じた清掃清潔衛生の3つの言葉は2S1Hとして、広く人々の生活の規範となり流行病の激減に繋がった。
また、その先駆者となった公営娼館は国1番の娼館として、領地に潤いと娼婦たちの希望の地となった。
行われた智謀の数々。
聖者の如く教え。
寡兵にて大軍を粉砕し敗北確定の戦場をひっくり返した武勇。
そして退けられた世界ランクNo.1。
その謎の人物こそカストロ公爵アレスと言う。
そして、ここまでの偉業を見せつけれられて、人々はある人物を想像せざるを得なかった。
それが世界最強No.0。
世界ランクを刻む世界の叡智の塔。
そこには未だNo.0という番号は、ない。
なお、これだけの出来事を引き起こしておきながら、とある詐欺師はやっぱり自分のやらかしたことについて気付いてはいない。
そして、自分がカストロ公爵領の領主であることも……やっぱり気付いて。
おっと、とにかく世界最強No.0『かもしれない』、詐欺師ゴンザレス。
彼はそういう男である。
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