第10話【序章の詐欺】罪人ゴンザレス裏話
世界最強と呼ばれる存在がいる。
曰く、全てを見通す千里眼を持つ大軍師。
曰く、万の敵すらも打ちのめす大将軍。
曰く、病の悉くを治療して人を救う聖者
曰く、最強にして無敗、世界の叡智の塔に刻まれるランクNo.1も超えた最強ランクNo.0
だが、その正体は一切不明。
男か女かオカマか、年齢も不詳なら、生まれも公爵家の捨て子だとか転生者とか生まれながらの救世主だとか、数え上げたらキリがない。
それら全てを合わせて、誰も見たことがないという。
それが、世界最強ランクNo.0
……だが、とある詐欺師は
元々そんなのいねぇよ、と。
俺はアレス。
着飾ればイケメンと飲み屋で評判の銀髪イケメンだ。
ゴンザレスという名ではない!
詐欺師である。
それもチンケな。
決して領主の真似事したり、国と国との大戦に巻き込まれたりする国際的詐欺師ではない!!
さて、真面目に慎ましやかに世から隠れて生きていた俺だが、ついに我慢の限界を迎えた。
女遊びがしたい!!!
そうと決まれば、即行動。
エストリア国のとある街にて、ウラハラ領(カストロ公爵領)の名馬を売った金で大豪遊。
溜まりに溜まって
アライブオンリー(生きて連れて来い)なのでまだマシだが、お尋ね者など冗談ではない!そんなわけで次は帝国に行くことにした。
帝国のとある街の娼館。
俺は奇跡の美女に出会った。
元王女の小娘を見て目が肥されてしまった俺は、娼館で遊びつつもなかなか満足出来ない身体になっていた。
金が底を尽きかけたタイミングになって出会ってしまった女こそ、誰あろう帝国の秘宝!
世界ランクNo.9ソーニャ・タイロン公爵令嬢にして、有名な帝国第3諜報部隊隊長でソーニャファンクラブ(非公式)を持つ脅威の美女!!
それが娼館に居た。
俺はその罠にあっさり引っ掛かり、ナンパしようとしたところを拉致されてしまった。
だって好みだったから。
恐ろしい罠だった。
そんな大物が娼館に居る訳がないし、居たとしてもそれ相応の事情があり関わるべきないのは、考えなくても分かるはずなのに、見た瞬間飛び付いて口説いてしまった!!
恐るべし! ソーニャ・タイロン!!
仕方ないじゃないか!
スッゲェ、可愛かったんだぞ!?
もうそこだけオーラが違うっていうか。
ああ、コレこそが公爵の血筋なんだな、と心から思うほど。
何でチンケな詐欺師がカストロ公爵遺児で通じたんだ?
そんなオーラないぞ?
あと関係ないけど、ソーニャ様は横髪ドリルが有名だぞ!
娼館ではしてなかったので、綺麗な金髪のスタイルの良い美人さんでした。
なんとか必死の説得により始末されずに済んだが、邪教集団潜入任務を命じられました。
邪教があるということは当然、正教がある。
帝国の正教は女神教と言って、一言で言うと1000年前に居たとされる女神を主とする。
1000年前に女神と邪神が争い、邪神が時空の彼方に封印され女神はその肉体を失った。
エストリア国に滅ぼされたレイド皇国と帝国がその女神教を国教としており、神託により国を維持していたとか。
女神教の特徴の一つは聖書を用いないこと。
司祭などは、口伝にて女神教の教え1000篇を
ばっかじゃねぇの?
……そんなことを口に出したら教会騎士に追われるから気をつけよう。
今回の邪教は元々はその女神教からの分派で、要するに宗教の派閥争いの結果でもある。
しかし、ここ最近はその邪教集団は邪教らしく過激に成りつつあり、ついに国の調査が入ったという訳だ。
それも帝国において精鋭部隊とされる第3諜報部が動いた、と。
当たり前のことだが、この帝国諜報部も俺に成果を期待している訳ではあるまい。
いくつもある一手に過ぎないだろうな。
広場でなんの変哲も無い青年と一緒に、疲れ切ったそれなりに見た目の良い中年女と一緒に邪教に入団。
中年女の方は旦那が暴力男のクズだったらしい。
俺もクズだけど、俺は『良い』クズだよ!
なぁんて小気味良い言葉と態度で女の心の隙間につけ入り、神の教えを身体で説く。
分かりきったことだが俺は邪教なるモノだけに限らず、神なるモノをカケラも信じちゃございやせん。
だが解釈を
ある若造は言った。
借金苦で苦しんでいた時、何故、神は救って下さらなかったのでしょうか?
俺は答えた。
神は言ったそうです。
『見守り試練を超える時を待ってます』と。
見なさい、今、貴方は此処に居て神の教えに従いて、借金苦の陰はありません。
貴方の苦労は無駄ではなかった証拠です。
俺は思った。
返すアテがなく借金した時点で間違ってるし、借金の代わりに邪教に売られたんじゃね?
あるオッサンは言った。
妻が浮気し、男と逃げました。
何故、こんな苦しみを味わうのでしょう?
俺は答えた。
神は言ったそうです。
『心弱き者に多くを求めず』と。
許しておあげなさい。
貴方の妻は貴方のように心強き者ではないのです。
その男共々、自らの行いを悔いるでしょう。
俺は思った。
それで逃げて邪教に入信してるお前より、間男の方がマシだろうよ。
あるババアは言った。
アレスさん、ちょっと聞いてよ!
隣の奥さんたら、私に挨拶も碌にしないで!
引っ越して来たばかりならまずご挨拶に何かを私に寄越すのが礼儀でしょうに!
俺は答えた。
神は言ったそうです。
『正しき人よ、その教えを広めよ』と。
他の方にも貴女の正しき教えを、そのように広めると良いでしょう。
俺は思った。
さっさとどっか行け。
こういった信者の相談事に口で誤魔化していたら、見込みがあると勧誘の時の青年幹部に連れられて、幹部共の集会に連れて行ってもらうことになった。
なお、俺以外の第3諜報部の繋がりのありそうな信者は軒並みバレて始末されていた。
なんという危ないところに放り込んでくれるんだ!!
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