第6話公爵ゴンザレスVS異世界召喚勇者①
俺の名はあれっす、じゃない、アレス。
昔の名はゴンザレス。
昔のことだ、忘れてくれ。
今、絶賛、混乱中。
「そうですか、アレス殿はカストロ公爵の……」
「はい、正統後継者になります」
女とおっさんが話しながら、ニコニコ笑顔。
おい、どっちも目が笑ってないんだよ、こえぇよ?
俺の隣に居る女は、年の功は10代後半といったところ。
亜麻色の髪を肩まで伸ばし、田舎っぽさを感じる綺麗より可愛い系の女だ。
おっさんは、金ピカ貴族のおっさん。
金髪小太り、やたらとジャラジャラと悪趣味な服。
ザッ貴族って感じ。
なんでこんなことになってんだ?
この女が俺をあるじ様とか呼ぶから、
「俺はお前の主人ではない」
「いいえ、私の忠誠は永遠にあるじ様のものです」
いらんよ、こんな自爆女。
あと、ところどころで俺をNo.0だと言おうとするから、No.0と誰にも言うなと釘を刺す。
「あるじ様は正道を行かれるお方。
各方面にあるじ様のご威光を伝えねばなりません。
No.0の存在を示すのもその一環なのですが……」
と言われた。
お前は本当に俺をどうしたいの?
殺したいの?
死ぬよ? お前がそのショートソード軽く振っただけで、俺サクッと死ねちゃうんだよ?
チクショー! 誰が死ぬか!
俺は生きて生きて生き抜いてやる!
女は、仕方ないあるじ様だ、と呟いて、代案として地位を用意すると言って、今ここだ。
ごめん、全く分からないよな?
そうなんだ、なんでこうなってるのかサッパリなんだ。
エストリア国の内部に作られていた帝国の施設を破壊した功績とやらによって、国務大臣のこのおっさん侯爵に面会したら、この女、俺をウラハラ国の公爵の遺児だと抜かしやがった。
おい! エストリア国の侯爵を詐欺にかけてんじゃねぇよ。
だいたい、お前は本物のその滅びた小国ウラハラの王女じゃないか。
それとランクNo.8の化け物。
そりゃ侯爵も警戒するわ。
やろうと思ったら、今すぐ侯爵殺して屋敷を半壊すら出来る。
エストリア国はランクNo.6とNo.5が居るらしいが、侯爵の護衛には付いていないようだ。
隠れてたら知らんけど。
だいたい、いつまでこんな女と一緒にいなきゃならんのだ。
命がいくつあっても足りやしねぇ。
おかげで娼館にも碌に行けねぇし。
なんとか説得して、娼館に行こうとすると、
「あるじ様、溜まっているのでしたら、私で発散して下されば……♡」
とか言いやがる。
こぇええんだよ!
手出したら、本気で一生付きまとわれる。
しかも死の危険付きの自爆女!
顔もスタイルも良いんだけど、そこだけがヤバくて致命的なのだ。
誰かこの女寝取ってくんねぇかなぁ……。
でも、こんな女寝取れるような猛者なんて……そうだ。
「勇者……」
俺はボソリと呟いた。
物語でよく見る勇者なら、ハーレム形成のために、見目麗しい女たちを寝取ることがあるではないか!
それも剣聖とか聖女とか、明らかに手を出したらヤバイような奴を。
名案とばかりに俺は思わず笑顔になった顔を上げると……驚愕と恐怖が入り混じった表情の侯爵の顔。
「な……ば、ばかな……。化け物か?」
「……ああ、なるほど。ふふふ、これがあるじ様なのですよ?」
女は妖艶に笑うが、当然、俺にはなんのことだかサッパリだ。
侯爵の後ろの壁から、人が滲み出てくる。
年の功なら10代後半、黒髪で中性的な印象も受けるが、喉仏の見える手足の細い少年。
「よく、分かったね?
隠密スキルはMAXのはずなんだけど……看破MAX持ち?」
これには俺もこの少年が誰なのか分かった。
世界広しと言えど、スキルを操るのは異世界転生者か、勇者。
おそらく、この少年は異世界召喚された勇者!
まさに俺が待ち望んでいた、
「救世主……」
「な! ばかな!? まさか僕の称号まで見破ったというのか!
鑑定がMAXでもそんなこと……そうか!
神眼か!
だが、この世界で神でも無ければ神眼なんて……ま、まさか?」
少年は何をそんなに驚いているのかな〜?
また嫌〜な予感がひしひしとするんだが?
俺、予知能力目覚めたかもしんない。
「ふふふ、そう、あなたの考えた通りのお方よ?」
「……実在したのか。
曰く、全てを見通す神眼。
曰く、万の大軍も跳ね返す猛将。
曰く、病に侵された者の最後の希望。
曰く、ランクNo.1を超えるランクNo.0!」
ランクNo.0の謳い文句、人によって微妙に違うのな。
あと、人違いだからな?
バレたらやっぱり切られそうだから、言えないけれど。
「この僕の鑑定MAXでも、詐欺師レベル2しか見えないなんて……」
少年と侯爵は愕然とする。
バッチリ見えてますやん。
「ふふふ、あなたごときが、あるじ様の能力の全てを知ろうなんて1000年早いわ?」
少年と侯爵とは反対に、女は足を組み、余裕の表情。
もう1000年過ぎたか。早かったな。
「……勝負しろ」
少年は、意思を固めた眼で俺を睨みつける。
はい?
なんばいいよっとね? この坊主。
「やめろ、死人が出るぞ?」
俺が死ぬ。
やめてくれ。
「……世界最強はこの僕だ。
それに女性を奴隷にして、連れ回すのを認めるわけにはいかない」
この国では、奴隷は一般的に富裕層のステータスであり、肉体労働者、使用人、性奴隷などその用途は幅広い。
当然、そこに立っている侯爵も奴隷を使っているわけで。
あ、目を逸らした。
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