第18話ゴンザレスとエール共和国①

 何故かあの後から、筋肉ダルマな男や美少年ぽい男や明らかそちら側の男に兄貴兄貴と呼ばれるようになった。


 助けてメメちゃん。


 そんなことを言うと、それに優しく頷いたメメちゃんに連れられてやって来たのは、共和国元首の執務室前。


 あ、どうも、カストロ公爵アレスです。


 ……俺、全国指名手配されないよね?

 また公爵様の名前騙かたってるのに。


 帝国のお力すげ〜。


 だんだん自分がマジモンのカストロ公爵な気がして来た。


「ご主人様は本物のカストロ公爵ですよ?」

 とメメちゃん。


 あ、そう? なら正妻にメメちゃんよろしくね?


「私で宜しければ喜んで。これでレイド皇国を再興することも夢では無いかもしれませんね」


 あ、そう? 流石はメメちゃん。冗談も上手いよね。


 ……冗談だよね?


 レイド皇国って、何世代前かだけど覇権国家で一時大陸全土支配したよね? 元だけど超大国の。


 はっはっは、そこの最期の生き残りの皇女がメメちゃんみたいに美人らしいね。メリッサとか言う名前みたいだね。


 しかもナンバーズほどでは無いけど、超強いらしいとも聞いたことがある。

 美人の情報は優先して調べるようにしてる。


「ふふふ」

 可愛く笑われた。


 ま、まあいいや。

 幾ら何でも元とは言え、皇女が俺と一緒に行動してるとか無いよね〜。


 ねえ? メメちゃん?

 何で否定してくれないの?


「面白いので」


 美人に翻弄ほんろうされるのは嫌いでは無い。

 時々、とんでもなく贅沢なご褒美くれるし。


「今回も、だからな」

「良いですよ? それなりの成果を出して頂ければ」


 口元に手をやり、貴族令嬢がそうするようにクスクスとメメは笑いながらそう言った。


 そこから、メメは不思議そうな顔で小首を傾げる。


「でもよろしいのですか? 帝国から元商業連合国の領地を貰うことも可能かとも思われますが?」


「俺が領地をもらってどうしろと? 俺に領地経営など出来ん」


「現在、No.8イリス・ウラハラが代理で治めるエストリア国のカストロ公爵領は、世界でもトップクラスの領だと評判ですが?」


 へー、

 No.8のあの女すげぇんだな。


 何故かメメは頭に手をやり軽くため息を吐く。


「……カストロ公爵領は奴隷からの優秀な人材の発掘。


 娼家の建て直しとこれまた優秀な人材発掘に育成システムの構築。


 軍・内政共に滅びた国の優秀な人材を起用した改革を徹底的に行ったのみならず、大国コルラン国との戦争でも、エストリア国に大勝利をもたらした立役者でもあります。


 しかもこれまた驚異的なのは、世界ランクNo.1閃光のハムウェイを退けての勝利です。


 う・わ・さでは、それらを成したのは世界最強と言われるNo.0で、No.8イリス・ウラハラなどは、臆面もなく我があるじと言っているだとか」


 ジーっとメメに見られるので、頑張って目を逸らします。


 色々やっちゃったけど、俺はその場に居合わせただけです。

 残念ながら結果には全く関わっていません。


 俺がNo.0なら酒池肉林するよ、酒池肉林。


 まあ、今、メメと一緒に行動しているから酒池肉林いらんけど。


 第一、メメからのご褒美以上に嬉しいものなんて無いぞ?

 分かってる?

 ほんと何でこの娘、俺について来てるの?


 貴女、超S級よ?

 今なら更に超をもう一つ付けても良い。

 生命賭ける価値有りまくりよ?


 それを伝えるとまた可愛くキョトンとして、それから可笑しそうにクスクス笑う。


 いいわぁ〜、美人のそのクスクス最高。


「ご主人様は本当に変わった人ですね?」

 そうか?

 当然だと思うが。



 俺たちの今の格好は商業連合国との会談の時と同じ。


 今回は帝国の冒険者支援の通達のために、帝国貴族カストロ公爵がやって来たというシナリオらしい。


 前回と違って、土地の交渉とかは無いらしい。


 あれ? これカストロ公爵を騙る必要なく無い?

「騙る必要はないですよ? さ、ご主人様、参りましょう」


 いや、参りましょうって言ったって、心の準備というものが……あー。

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