第19話ゴンザレスとエール共和国②

「無理」


 話を聞いて開口一番にそう言った。


 数千の魔獣を撃滅してくれ〜!?

 出来るかー!!


「そ、そんな!」

 エール共和国元首のちょび髭は、情け無い顔で机に手をつき身を乗り出した。


 そんなもクソもあるかー!

 そんなことしたければナンバーズ連れて来い。


「な、何とかなりませんか! 国家存亡の危機なのです! お願いします、貴方様のお力をお貸し下さい」


 必死に頭を下げるちょび髭だが、それには何の価値も無い。


「残念だが行くぞ、メメ」


 あ〜あ、な〜んか適当な口実見つけてご褒美貰いたかったなぁ。

 ほんと残念だよ!


「よろしいので?」

 メメが聞く。


「よろしくは無い。よろしくは無いが、こんな手前勝手な話なら打つ手はない。

 本当に残念だ」


 ほんと涙が出そうだよ!


 こういう機会でもないと、そう簡単にメメからのご褒美なんて貰えないんだから!


 商業連合国の時は良かったなぁ〜。

 いっぱいご褒美貰ったし。


「俺に頼るなど話にならん!

 ベテラン冒険者ならともかく!」

 俺を魔獣と戦わせてみろ!

 一匹目でお陀仏だ。


 メメを連れ立って執務室を出た。







 カストロ公爵アレスがあっと言う間に立ち去ってしまい、エール共和国元首マーク・アイスは暫し茫然とした。


 そして力尽きる様に椅子に座り込んだ。


 何がいけなかったのだろうか?


 帝国の使者カストロ公爵アレスと言えば、ここ最近は世界ランクNo.0なのではないかと、各国の上層部には情報が入っている。


 だが条件面を一切聞くことすらなく、カストロ公爵は立ち去った。


 これはどういうことか、マークは自問自答する。


 エール共和国は今、存亡の危機にあった。

 小国であるエール共和国には数千もの魔獣を食い止める手段はない。


 それこそナンバーズ、それも現在生き残っている中でも、No.1とNo.2にしかその数の討伐は不可能だろう。


 だが……その2人を超えるNo.0なら容易い話の筈だ。


 現に数十万の魔獣を討伐し、No.2のカレン姫と帝国を救って見せたのはNo.0だ。


 No.0にはナンバーズを除く帝国最強の元皇女メリッサが付き従っている。

 そんな情報もあった。


 だが、どうやら違っていた様だ。


 ……それでも、マークには悩んでいる時間はなかった。

 今、この時も魔獣は迫って来ているのだ。


 何とかしなければ……。


 その時、不意にカストロ公爵が残した言葉が頭に浮かび上がる。


『よろしくは無い。よろしくは無いが、こんな手前勝手な話なら打つ手はない。本当に残念だ』


 手前勝手な話……なら?


 それに気付いた瞬間、落雷に打たれた様にマークはハッとする。


 彼は、カストロ公爵は何と言ったか?



『俺に頼るなど話にならん!

 ベテラン冒険者ならともかく!』


 マークは立ち上がり部屋の外へ出た。


「誰か! 誰か居るか! 至急、冒険者を! ベテラン冒険者を集めてくれ!!」


 元首に就任して2年、マークはかつてないほどに救国の志に燃えていた。

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