第20話ゴンザレスとエール共和国③
エール共和国の元首の元から去り、俺たちはすぐに出発することにした。
小雨が降っているが、そこを気にしていると逃げるのが間に合わなくなる。
魔獣は街の前面、つまり山の反対側の平原からやってくるらしい。
だから多少無理をしてでも山を越えエストリア国を目指す。
「No.0!」
荷物を担ぎ、街の門に向かう途中にキョウちゃんに呼び止められる。
とりあえず、No.0ではないのでスタスタ無視して歩く。
「No.0ー!!」
叫びながらキョウちゃんが俺の前で通せんぼ。
「キョウちゃん退こうか」
俺は優しく言ってあげる。
俺は可愛い子には優しいのだ。
ほ、ほんとだぞ? 命が懸かってなければ。
「僕はこの街を守る! No.0! 力を貸せ!」
「断る!」
殺されるわ!
「No.0! 貴様ー!」
だからNo.0と呼ぶな!
なんとかキョウちゃんから逃れ山に入る。
連日の雨のため、山道はグチョグチョだ。
雨の日の山道なんて歩きたくないが仕方ない。
魔物に襲われるよりは余程マシだ。
「よろしかったのですか?」
メメがまた聞いてくる。
「何がだ?」
「いえ、見捨ててしまって」
俺は思わず首を傾げる。
「俺には何も出来ないぞ?」
「私の時は助けてくれたじゃありませんか」
責める感じではない。
ただ不思議そうに首を傾げる。
ちょっと可愛らしい。
ちょっとじゃないな、かなり可愛い。
「あれは……」
ただ単に
思えば、あれから何故かずっと一緒に居るよなぁ。
改めてこの娘なんで、ずっと俺について来ているんだ?
No.0だと思ってるからだろうなぁ。
ごめんな!
詐欺だ。
飯も奢ってくれるし、ご褒美もくれるし、詐欺師なのに罪悪感感じそうになった程だ。
駄目だぞ?
簡単に詐欺に騙されたら!
「俺、No.0じゃないぞ?」
メメは小首を傾げる。
だから? とでも言うように。
え? No.0だと思ってついて来てたんじゃないなら、それこそなんでだ?
俺はメメに言葉を発しようとして一歩踏み出し……そのまま足を滑らせた。
「うおおおおー!!!」
雨でぬかるんだ山は、俺の身体をつるんと運び……。
俺は斜面から一気に急降下。
メメが俺に何かを叫びながら手を伸ばすのが見える。
「あいるびーばああぁぁーーーーーーっく!!!」
天然の滑り台はどこまでも続き、俺は必死に身体を制御する!
俺は、俺は生きるぞーーーー!!!!
随分、下にまで滑り落ちた。
だが!
俺は生きてる、生きてるぞー!!!
立ち上がりメメの元に帰ろうと……。
あら?
わたくしの目の前に、魔獣の大群が。
凄いですわね?
こんなに大量の魔獣なんて見たことありませんわ?
ざっと見るだけで数千!
エール共和国の平原から来ている魔獣と同じぐらいの数いるかも知れなくてよ?
魔獣さんの大行進よ!
山側のこっちからずっと街に近づいていたのかしら?
とにかく……。
俺は魔獣にクルッと背を向け……ダッシュ!!
「おー助けーーー!!!!!」
絶賛、魔獣の群れに追いかけられています。
激しい地響きと共に、背後の魔獣が追いかけて来るのが分かる。
「おーれーはー! 生きるぞーーー!!!!」
魔獣たちの地響きは山を揺らし、雨でぐずぐずになっていた山は。
激しい山崩れを起こした。
「ギヤーーー!!!」
山崩れは、魔獣と俺を……。
その時! 俺の身体を何かが。
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