外伝13:シュトレーゼンのチートと詐欺師②
チート男が居なくなってエルフ女は一言。
「何アレ? 人をなんだと思ってんのよ?」
「あんなもんだよ?
急に楽して力を得ちゃうと。
本には書いてなかったが、過去の勇者って奴は元々歪んだ性格があんな風に不相応の力を得たせいでさらに歪んだんだろうなぁ〜」
エルフ女は不満げに口を尖らせる。
「キョウはあそこまで酷くなかったわよ?」
「だから帰れたんだよ」
なんだかんだで、キョウちゃんは世界に拒まれるほど歪んでなかったってことだ。
普通におマヌケで性根そのものは素直な可愛い子だったからな。
「結局、アレも勇者なの?」
「どうだかなぁ〜? 違うとは思うんだけどなぁ〜?」
勇者なら大変だ。
次元の穴が空いて邪神のエネルギーが流れ込んでくるからな。
「それより! 大丈夫なの!?
嫌よ? あんなののところに行くなんて。
あたし、あんただから嫁になったんだからね!」
「大丈夫、大丈夫。
……っていやもう、今更でもなんでもずっと謎で怖いんだが」
俺はこの機会にずっとずっと疑問だったことをついに尋ねた。
「なんでお前も含め、S級美女が俺のハーレムになってんの?」
もうあまりの恐怖に正直に聞いてしまう。
するとエルフ女は、何聞いてるんだ、コイツ?という顔をする。
「あんた、何言ってんの?」
口でもハッキリ言われてしまった。
「いやいや、有り得なくない?
君らS級よ? S級超美女集団よ?
なんで俺みたいな詐欺師のクズに引っ掛かってんの?」
「あんたが引っ掛けたからでしょ?」
エルフ女はまた何言ってんの?という感じで小首を傾げる。
いや、そりゃ確かに引っ掛けたのは俺だけど、こんなS級があっさり引っ掛かるなんて誰も思わんよ?
「なんでよ?」
なんでって……、俺がなんでだよ!
そこで、あっ、とエルフ女は何かに合点がいった顔をする。
やっぱり何か裏があったんだな。
そう思い俺が促すとエルフ女は大きくため息吐き、心底呆れた顔をする。
「あんたさぁ〜、あたしに限らずなんだけど……。
自分があたしらに何したのか、気付いてないでしょ?」
何ってなんだ、何って、お股的なナニか?
「下ネタか!
いやまあ、もうあたしらあんたの嫁だから、それもあるんだけどさぁ〜」
あるんだ……まあ、そうね。
嫁だものね、でもだからなんで嫁に来てんの?
わたくしずっとず〜っと不思議なの。
「ほんと、全員そうなんだけど……。
たとえば……イリスを帝国から助けたでしょ?」
偶然な、偶然。
「それまだ偶然と言い張るんだ……?
もうイリスに気付かれたでしょ?
あんたが偶然で帝国に追われた爆弾娘のこと調べておかないはずないって。
そんで、その爆弾娘をあんたが助けた。
他にその爆弾娘を助けよう、なんて頭のおかしな奴誰が居るのよ?
他に居ないし絶望な時にそこまでされて救い出されて、口説かれたらもう恋に堕ちるしかないじゃん!」
偶然だよ?
偶然?
偶然ってなんだっけ?
変な汗が出て来た気がする。
「全員分説明しようか?」
なんでエルフ女がそれぞれにあった俺とのこと知ってんの?
ああ、いや、分かった。
君らびっくりするぐらい仲良いね?
それも有り得なくない?
「相手が普通じゃ有り得ない存在だから仕方ないでしょ?
団結しないとあんた逃げ切るじゃん!」
唇とんがらせて、あら可愛い。
なんか、最近、そういう態度多いね?
デレって奴?
何、俺死ぬの?
「なんでよ!
次、メリッサ。
これもう今更だけど、その人の女になるからって頼まれたからって帝国なんて救えないから。
当時、No.2のカレンが何万の軍と一緒で死にかけたんでしょ?
それってナンバーズの誰でも無理だから。
あと、あんたメリッサがレイド皇国の元皇女って知ってたわよね?
一般庶民はS級だからって、そんな手を出したらやばそうな相手口説かないから。
下手したら……下手しなくても殺されるし。
それも同じ!
絶望してた時に助けられて口説かれた!
しかも自分の立場とか関係なく自分を見てくれて!
はい、堕ちるぅうう〜」
ほんとによく知ってるね?
どんだけ話したんだ?
「次! ツバメとチェイミー。
これはまあ、1番それらしいと言えばそれらしいわね。
あんたが初めての相手で命の恩人。
これまた暗黒の暴龍とかいうのを、生きるのさえ諦めちゃった時に都合良く現れて助けられたら、堕ちるって!
チェイミーも同じね。
もうダメだと思った時に初めての相手に助けられるって女の憧れよ?
無理でしょ?
……っていうか、あんたもうこのパターンテンプレ化してない?」
ぐ、偶然だよ、偶然。
「まあ、偶然でもなんでも結果が大きいわよ。
過程も別にあんた何気に優しいし」
え? そう? それこそ、詐欺じゃね?
「やらない善よりやる偽善。
口だけじゃないあたりがあんたタチが悪いのよ。
もうね、全員そんな感じであんたに助けられてるし」
別に助けてない子も居るよ?
ナリアとか。
エルフ女は大きな大きなため息を吐く。
「もうぶっちゃけね、言っちゃうけど。
あんたなんだかんだで『求めてくれた』でしょ?
立場も状況も全部関係なくアタシら自身をね?」
え!? そりゃだって美女だから男なら行くでしょ!?
「そりゃあ〜、理屈的にはそうかもしれないけど。
実際踏み込む男はそう多くないわよ?
ナリアなんて可愛いけど、両性具有だからダメな人はダメでそういう人は多いわけよ?
カレンやシュナやセレンとかも王族だろうが関係なく求めたでしょ?
肩書きとか一切関係なくというか肩書きがむしろ邪魔ぐらいに。
それプラス王族でも世界ランクナンバーズでも、どうにもならないことをあっさりなんとかしちゃうわけよ?
そんな男他に居ないわよ?
ほんっと、今更だけど!!!!!」
居るよ!?
……きっと、俺たちの心の中に。
その俺の嘆きにエルフ女はサクッと一言。
「居ないって」
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