外伝14:シュトレーゼンのチートと詐欺師③
「あとついでだから言っちゃうけど、ジャングルでたまたまだかわざとか知らないけど。
そこで怪しげな家で会ったエルフをいきなり自分の女にしようとする奴が世界のどこに居るのよ?
ないでしょ?
怪しいじゃない、そんな女。
なんで迷わず自分の女にしてんのよ?」
エルフ女、自分で怪しいって言っちゃってるよ。
「あとあっさりと役目から解放するし魔王倒しちゃうし、どんなチンケな詐欺師よ!
そんな詐欺師居るか!!
騙された!!!」
畳み掛けられた。
意図せず騙していたらしい。
「あとさあ〜」
まだあんの!?
「これあたしら全員、わりと確信を持ってるんだけどさ〜」
何かな?
聞くのがとっても怖いんだけど?
「これから先、あたしらにとんでもないピンチがあってもあんたがなんとかしちゃいそうなのよねー」
やめてやめて。
チンケな詐欺師の俺にそんな恐ろしい過剰な期待をしないで!?
「そりゃさあ〜。
あたしらだってそんな簡単に馬鹿な真似はしないし〜?
努力もするし〜?
なんとかしようと足掻くよ?
でもいよいよ、あー、ダメだとなったら……あんたがなんとかしちゃうんだろうなぁ〜っていうか。
あんた、散々なんとかしちゃったんだから今更、そこ疑うのって逆におかしくない?」
どうしてこうなった?
なんで俺はこんなよくわからん信頼を得ているんだ?
誰か教えて!
「いや、だからあんたがやらかしたからだって。
それとさあ〜」
まだあんの!?
「あんたさぁー。
ずっと自分をチンケな詐欺師と言い張るけど、あんた、とんでもない優良物件だかんね?
無尽蔵に女増やせるから気をつけてよ?」
それはいくらなんでも聞き捨てならない!
詐欺師とはクズである。
他に言いようもなくクズである。
俺はクズ男の自信が心の底からある!!
俺は、クズだ!!!
「なんでだ!!
いくらなんでも有り得ない中でさらに有り得んだろ!?」
「あんたに惚れた女の前でよく言う」
だからそれがおかしいと……。
エルフィーナさん、貴女S級よ?
こんなクズに引っ掛かるのおかしいのよ?
「意地でも認めないわよね?
もう良いけどね、そのクズ男が良いんだって」
世の中間違ってるわ……。
「自分のことでしょ?
よくそこまで言えるわね?」
俺は自分の身の程を知ってるからな。
「知ってないじゃん。
超超超優良物件のくせに」
何処がだよ!?
それが何よりもおかしいじゃねぇか!
「いや、あんた。
世界を支配する王様でしょ。
世界最強でしょ。
ピンチになったら助けてくれるでしょ。
なんだかんだで優しいし、殴らないし、女として求めてくれるし」
王様やら世界最強やら誤解だからともかく……。
「世界中でそれ認めてないの、あんただけだから」
ともかくそれ以外って割と当たり前じゃね?
「当たり前だと良いんだけどね〜。
割と当たり前じゃないんだなぁ、これが。
ピンチになったら女置いて逃げる奴も居るし。
優しくない奴も山ほど居るし。
殴ってくるクズも居る。
女として求めてもらうのだって、結構ほったらかしにする男も多いよ?
さっきの男だって、チートだっけ?
そんな力があるのは良いけど人の話聞かないじゃん。
なんか勝手に自分に女が寄って来るとでも思ってんのかしらね?」
寄って来るんじゃないか?
やろうと思えば一週間で金貨1000枚稼げるみたいだし。
俺も金が……金さえあれば!!!
「いや、だからあんたそれ以上の金持ちで……なんでそんなに認めないわけ?」
「いやだって、なんか怖いし。
常識的に」
「今更、あんたが常識を語るな」
1週間後。
宿の部屋でエルフ女とゴロゴロとしていると契約書が突然、金貨1000枚の入った袋に化けた。
おお〜、ずっしり重い。
「契約、成立したんだ?
ねえ、ほんとに大丈夫なの?」
エルフ女が心配そうに俺の隣でそう言う。
「もう契約終わってるからなんの問題もなし、毎度アリってね」
俺が持ち歩いていたエルフ女の帽子が消えている。
契約通り、金貨1000枚と『帽子』が交換された。
「どういうこと?」
「俺一回もエルフ女を売るなんて言ってないしね。
常に帽子を手に持って、帽子を示しながら『コイツ』って言ったから、契約通り帽子を金貨1000枚で売っただけ。
元値からすれば、S級美女のエルフ女が被ってたから、プレミア付きで。
仮にあの契約書がエルフ女を示したとしても、最後に付け加えた一言『同様の契約は上書き出来ない』から問題なし」
忘れてるかもしれないが、エルフ女とは大エルフの象徴たる世界樹の名に賭けて、すでに同様の契約を施行済み。
つまり上書きは出来ない状態なのだ。
それに調べた限り、あの男の強制力もそれほど強くないようだからな。
世界の叡智のような変わった力を使ったが、せいぜい借り物の借り物って感じ。
太古からの国シュトレーゼンの王族に伝わる秘術ってやつかもな。
あの男がその力をどこから借りてこれたのかは、まだ謎だけどな。
それを言ってやるとエルフ女はベッドに呆れながら寝そべる。
「……呆れた。
また裏で色々コソコソして。
あんた、また目的があってシュトレーゼンに来てたのね……。
それにこれであの男の恨み買ったんじゃない?
どうすんのよ?
しつこそうよ、アレ」
まあなぁ〜。
古代の書物でもああいう男が復讐だ〜とか言って、好き勝手する物語があったりもする。
「ま、大丈夫だろ。
あのチートとか言う能力。
多分今頃、無くなってるから」
「どういうことよ?
あんたやっぱり知ってたわね?
それがシュトレーゼンの秘術とやら?」
やっぱり、とか言うなよ。
……まあ、知ってたけど。
便利そうな契約書の能力の存在も。
「最近、噂で女神と呼ばれる人物がある薬を売ってるらしい。
もっとも、それはある程度能力を使うと消失してしまうらしい。
味を占めたチート能力者はそれを求めてまた女神の元を訪れてを繰り返す」
要するに麻薬と一緒だな。
女神やら能力やら、よくわからん力だがな。
「いつの間にそんな情報……」
エルフ女が呆れながら呟く。
合流する前からすでにちょくちょくと情報収集ね。
情報は大事よ?
「大体さぁ〜?
楽してチートとか楽して最強とか、どっかで聞いた定型文と同じと思わないのかねぇ〜?」
「どんな定型文よ?」
すぐに思い付かなかったのかエルフ女が尋ねるので、俺は即座に答える。
「楽して金儲け。
そんなの詐欺の常套手段じゃん」
「あっ!」
皆、詐欺には十分注意しよう。
この日、金貨1000枚の代わりに帽子を得たある男が詐欺にあったと訴えたが、能力が消えたことを訴えたと思われ、自己責任の一言で片付けられた。
しかし、謎のチート能力を与える女神とは一体。
謎はまだ謎のままである。
そのことに世界最強No.0が関わっているかどうか、まだ誰も知らない。
世界ランクを刻む世界の叡智の塔。
そこに世界最強No.0が刻まれることは今も、ない。
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