外伝21:シュトレーゼンのチート男ハーレムと詐欺師①
あ、どうもアレスです。
チンケな詐欺師ゴンザレスとは、あっしのことでやんす。
S級美女を嫁にした世界統一皇帝とか言う人は知らないよ?
ボクジャナイナヨ?
S級美女には手を出したけど。
そんな俺は珍しく居酒屋で1人酒を呑んでいる。
「見つけたぞ! この詐欺師!」
居酒屋では、なかなかお目にかかれないB級からA級ぐらいの、そこそこ可愛い紺色の縮れ髪が色っぽい美人さん。
名をリトネという。
居酒屋の若女将だ。
とあるS級どもが俺の周りをうろうろしているので、B級だとイマイチに思われるかもしれないが、それは例外。
B級は十分に美女だ。
軽くほろ酔い気分でその彼女を楽しく口説いていると、どこかで見たような男がやって来てそう言った。
いやいや、冗談だ。
詐欺った相手を忘れるわけがない。
詐欺を詐欺するプロも世の中には居るぐらいだ。
詐欺った相手を一瞬でも忘れてしまえば、詐欺師生命は終わると思え!
ゴンザレス、心の叫び。
詐欺師生命が終わることはいいことなきもしなくはないが、それは気にしてはいけない。
「これはこれはイセカ・イバンザ様。
この間はウチの『商品』をお買い上げありがとうございます。
またのご要望お待ちしておりますよ」
にこやかな顔でチート男にそう言いのける。
見る限り、チート男は落ち潰れた様子はない。
チート能力がまだ残っているのか、それとも身なりを整えられる程度には実力があったのか。
いずれにしても、また客になってくれると言うのならば上々であるが。
「なん、だと?
ぬけぬけと!」
ゴゴゴと怒りのオーラを放ちながら俺に詰め寄るチート男。
それに対して俺は訳が分からないという態度でそれに応じる。
「な、何を怒っておられるのです!?
貴方様がお望みの『商品』はわたくしめの前から消えて、代わりに代金が確かに届きましたよ?
いやぁ〜、素晴らしい。あのような秘術をお持ちとは。
流石はA級冒険者様は凄いものですなぁ!」
「だから貴様の言う『商品』とやらは……!」
「しーっつ! 旦那!
ここじゃあマズイ!」
俺はわざとチート男の言葉を遮り、慌てて遮り周りを見回す。
エルフ女を買おうとしたなどと堂々と公言していいのかなぁ?
シュトレーゼンでは奴隷制度は採用していない。
むしろ女の奴隷を買おうとしたなどと言われれば、女の敵扱い確定である。
男の奴隷?
なぜか遠巻きに期待の目で見られるらしいから要注意だ!
飲み屋の可愛い子ちゃんリトネがジーッとこちらを見ている。
俺がイヒヒと愛想笑いをすると、俺を無視してチート男にすり寄る。
「イセカさん? 『商品』ってなんですか?
この方から何か買ったんですか?」
「いやあの、リトネ。
これはその〜……」
わざとらしく頬を膨らませて、チート男に甘えるような言い方で告げるリトネ女将。
チート男がしどろもどろし出す。
チート男はすでに女将と顔見知りのようだ。
おそらくチート男もこの店に通っているのだろう。
そして女将もそんなチート男にご執心、と。
もちろん、金ヅルとして。
え? ハーレムチート野郎のモテモテ物語の典型例じゃないのかって?
馬鹿言っちゃあいけねぇ。
いくら見た目が可愛かろうとも、世間の荒波を乗り越えて生きる飲み屋の姉ちゃん、それも女将として店を切り盛りする女傑がそんなアホウな訳が無い。
普通に考えてみろ?
彼氏でもない奴に人前であんなマネを素でしてて見ろ?
ただのイタイ奴だ。
つまり女将のこの行動は演技……というか『営業』だ。
そして俺はこの女将たちの女の
こういったちょっとした女の手腕も楽しんでこそのお姉ちゃんとのお遊びだ。
そもそも、生きるってのはそんなに楽じゃない。
時にこういったテクニックも駆使して頑張っているのよ。
おっと、仕事を頑張る姿にゴンザレス、感動で泣けて来た。
だからね、勘違いをしちゃあいけない。
彼女らはチョロインなんかじゃないの。
今を必死に生きる
おっとチート男の腕に絡みつくリトネに一瞬だけ睨まれた。
『おい! そこのチンケな詐欺師。
コイツァ、あたいの獲物だよ?
横からしゃしゃり出て来るんじゃないよ!』
『へ、へぇ! 姐さん!』
俺は目線だけで女将、もといリト姐さんの意図を読み取り、即座に無言で直立不動。
チンケな詐欺師、空気を読むことが大事。
「じゃ、じゃあ、旦那!
あっしはこれにて!
『商品』は確かに渡しやしたからー!」
「あ、おい! 待て!」
待てと言われて待つ詐欺師は居ない!
俺はスタコラサッサと居酒屋を後にした。
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