外伝22:シュトレーゼンのチート男ハーレムと詐欺師②
「おい、あんた見つけたわよ。
分かってる?
ウチはツケはやってないんだよねぇ〜?」
何をどうやって嗅ぎ付けたのか。
通りを歩いているとリトネ姐さんに捕まり、夕方の開店前の店に連れ込まれた。
昨日金を払わずに店から出たことについて説教を受けています。
「へ、へぇ、いえ、あっしはですね?
今日にでも払おうとは思ってやんしたよ?」
俺はすっかり小さくなって、リトネ姐さんに頭を下げる。
「ハァン?
そりゃあ、払わねぇ奴の常套文句じゃねぇか!」
「いえ! 本当です!
本当にそのつもりでした!」
こ、こえぇ!
なんでか知らないが、世界ランクナンバーズ並みの逆らってはいけない何かを感じる!
お店ではあんなに可愛く見えたのに!
今も可愛いお姉さんだけど、逆らえないオーラが出ている!
「分かったよ、じゃあ今払いな」
「そ、それがですね、今、持ち合わせがですね……」
「あぁん! それじゃあ、最初っから無銭飲食しようって腹づもりだったってか!
舐めたこと言ってるとけつ毛むしるぞゴラァ!」
ヒィエー!
ヤラレるー(物理的に)
その際は是非、姐さんの手でおねげぇしやす!って、ゴンザレスはマゾの趣味はないのよ?
本当よ!?
「あぁら? やけに汚い罵声が聞こえると思ったら、泥棒猫のリトネじゃない?」
このタイミングでカランカランと扉を開けて、長い黒髪の剣士風の女が店に現れた。
「ちっ」
どうやら開店時間のようだ。
「お客様に大した対応ね、リトネ」
「客商売でも招かざる客は居るのよ?
知らなかった? クーコ」
「仕方ないじゃない、イセカがこの店を指定するんだから。
人の客を横取りしないで欲しいものね、リトネ」
客というのはイセカのことだろう。
この界隈からするとイセカは都合の良い金づるなのだ。
ハーレムとか言っているやつは特に気をつけろよ!!
「あぁら? おあいにく様。
イセカさんは私の客だわ。
ちょっとあんた、ゴンザレス!
金がないなら身体で払いな!」
え?身体で?
いやぁ〜、ゴンザレス困っちゃう。
ゴンザレスS級でないと食指が動かない呪いにかかってるけど、まあリトネ姐さんならアリかな!
感じ的にはローラに似てるかな。
S級美女に似てるとか、リトネ姐さんもなかなかの美女である。
「あぁん!? 何を勘違いしてやがる!
今日一日店の手伝いして返せってことだよ!
あたいの身体はそんな安かないよ!」
あ、そういうこと?
残念。
とりあえずクーコに店で1番高い酒を出す。
クーコは文句も言わず、それを飲み出す。
あれ? 文句言うかと思ったが。
「どうせ支払いはイセカだから。
あとつまみも適当に」
そう言ってリトネ姐さんに追加で注文するクーコ。
ここにいないのに勝手に借金を増やされるイセカ。
イセカ……あんた、騙されてるんだね。
きっと都合の良いハーレムでも夢見たんだろう、どっかの本みたいに。
「まだ料理人が来てないのよねぇ……、簡単なものでいい?」
「いいわよ」
厚切りベーコンを軽く焼いた物がすぐ出て来た。
客がどうのこうのと言ってたが、リトネ姐さんの対応はまともだ。
「当たり前でしょ?
競合はしてても、店で金を落とすなら客だよ。
イセカは上客だからね。
こうして取り合いにはなるけど。
まあ、最低限で店への支払いさえキッチリしてくれるならどうでも良いのよ」
リト姐さんは商売人である、ゴンザレス覚えた。
そして今更ながらに気付く。
この店、姐さんの店なんだね?
何杯目かの酒を顔色一つ変えずクーコが飲み干したところで、噂のイセカが女を1人伴って現れる。
ローブを着た陰気そうな女性だが顔は悪くない。
イセカのパーティー仲間らしい。
噂のハーレム?
でもリト姐さんたちをハーレムと呼ぶなら、どうにも世知辛い気がしてならない。
いえ、確かに世の中そんなもんだが。
「あー! あんたは!」
イセカが俺を指差し叫ぶ。
俺のエプロンを付けただけで、店員になりすました完璧な変装を見破るとはやるな!
……そりゃバレるか。
「あ、ども兄さん」
俺はペコリと頭を下げる。
お客様はお金様です。
「よくも騙してくれたな!」
まだ言うか!
「何をおっしゃられますお客様。
商品は無事、お客様の元へ届けられたはずですよ?
わたくしめの元からは見事消えてお代金を頂戴致しましたが?」
そっち行ったはずよ?
プレミア付きのエルフ女の帽子が。
「何!? しかし届いたのは……」
「しー! お客様!」
俺は怪訝そうな顔でこちらを見る3人の女の様子を気にする風を装う。
当然、このチート男がやろうとしたことはどう考えても人身売買なので、ハーレムの女たち(偽)に聞かせるには都合が悪い筈だ。
俺は特にリトネ姐さんに愛想笑いをして誤魔化す。
同じくイセカも人身売買がバレるのを気遣ってか、リトネ姐さんに愛想笑いをする。
リトネ姐さんは俺に見せていた怪訝な表情を一瞬で隠し、花がほころぶような満面の笑みを浮かべて返してきた。
リトネ姐さんの裏を知っているだけに怖ェエ。
「もしや兄さん。
ウチの商品を誤魔化して、難癖付けようとしました?」
逆に俺はここぞとばかりにジトーっとイセカを見る。
ちょっと出るとこでやしょうか?とも。
出るとこが何処かは俺にも不明。
シュトレーゼンの1番でかい中枢の屋敷とか行くと、エルフ女がヒョコッと顔を出すかもしれないので行けませんが。
奴は今、シュトレーゼンの王宮でワインでも飲んでのんびりしているだろうから。
慌ててイセカは追及を誤魔化そうとする。
「あ、いや、悪かった。
俺が誤解しただけだ。
あー、そうだ、何か注文しよう!」
そう言って慌ててリトネ姐さんを呼んで簡単な食事を注文。
俺は引き際を心得た詐欺師なので、リトネ姐さんが近付くと同時に足音も立てず笑顔でフェードアウト。
詐欺師は逃げ足が肝心!
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