第33話奴隷ゴンザレス③
まあNo.0がどうであれ、それは憎しみの対象だ。
特に羨ましいのは、美人と噂の滅びたレイド皇国のメリッサ元皇女を愛人と言って連れ回していることだ。
くー、羨ましー!
俺もメメちゃん、連れ回してたけど。
ああ、あの日に帰りたい。
あの娘も俺にご褒美くれるとかやり過ぎ。
詐欺師の俺ですら罪悪感感じたわ。
……またご褒美くれるならもらうけど。
そんなかつての夢も見るが、奴隷では永遠にその夢は叶わない。
そんな訳で当然、俺はここから抜け出す方法を考える。
今居る場所は帝国の何処かの鉱山だ。
奴隷は100いや、もしくは1000とか居るかもしれない。
いくつかのグループに分けて掘削しているはずだ。
俺のところでは監視というか看守は10人程度が2交代。
掘っているのは魔石、だよな?
何かが掘れたら監視の一部が潜って確認している。
逃げるにしても地形の把握が必要だ。
さてどうしたものか。
ゆっくりと情報を集めチャンスを待つか。
数日後……。
なーんか疲れたなぁ。
働いて働いて飯食って働いて寝る。
風呂入りたいなぁ。
風呂ないなぁ。
3日に一度布で拭くだけ。毎回真っ黒。
これが〜、噂の〜ブラックかー。
気力を失いつつも情報収集。
看守に饅頭貰わないとなぁ。
女奴隷とは部屋別だしなぁ。
なーんか一団の中には薄汚れてるけど、美少年ぽい子を囲ってる奴隷たちもいる。
囲っている奴らも堅物っぽいけど人は見かけによらんよなぁ。
あー、ヤダヤダ。
男の娘でも人気ってか?
愛の形は人それぞれだけどなぁ。
俺は遠慮しとく。
他の奴隷も動く気配ないなぁ。
あー。
そんな日々についに救世主(?)が現れた。
ドタドタと看守たちが走り奴隷たちがなんだなんだ、と様子を伺う。
「看守の旦那? 一体どうしたんで?」
知り合いの看守を引っ掴んで、尋ねる。
「魔獣だ! 魔獣の大群がこの山に! 数百以上は居るぞ!」
あー。
そうかー、このままだと死ぬなー。
……そうか、これが奴隷の気分か。
何もかもどうでもいいや、という気持ちにされる。
「看守さん。逃げ道は?」
「駄目だ。唯一の出入口から魔獣が迫っている。周りは崖だし、それこそ何処から魔獣が来るか……」
解説ありがとう。
いざとなりゃ、ここの奴らを囮にしている間に無理矢理崖下りだな。
「ふーん、看守さん。防衛と援軍については?」
「え? ああ……両方当てはない 」
ないって……そりゃあ、
「ここの代表もしくは指揮官は?」
「へ? いや、ここにはそんな大層なもんは……強いて言えば……俺かな?」
「おお! あれ? アンタただの看守じゃなかったのか?」
「あ、ああ。貴族の権力争いに負けて、僻地のここの責任者に。
要するに左遷されて……ジャック、お前、なんか話し方が」
どうでも良いだろ、そんなこと。
それより助かる方が大事だ。
何か策とか持ってるなら聞くけどないよな?
そういうのは苦手?
うん、見れば分かる。
ついでに政治的なものが弱いのも。
だから援軍来ないんだろ?
俺は奴隷たちや他の看守から集めた情報を元に、現在の状況を推測。
つまり奴隷鉱山はいくつもあって、元手を抑えて発掘は進めていて、そこまで重要視していない。
帝国でも僻地だし管理側もあまりやる気がないし、美味い蜜もほとんど吸えない。そんな土地。
だから能力があったり野心がある奴は絶対来ない。
程の良い左遷先でもあるし魔獣を追い込むにも丁度いい鉱山、しかも犯罪奴隷たちばかりで救援を出す必要性は皆無、と。
概ねその通りって、やだわぁ、当たっても嬉しくないわぁ。
「看守さんが責任者なら話が早い。皆をここに集めてくれ。死にたくなけりゃあな。
……後、何か服貸して」
身形が奴隷では格好がつかんだろ?
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