第3話メリッサとゴンザレス①

 私はメリッサ。


 帝国第3諜報部隊の一員として、街の酒場で看板娘をしたり、城でメイドをしたり、護衛をしたりと忙しくする諜報官だ。


 世界ランクナンバーズには及ばないが、帝国ランクNo.1。

 世界ランクナンバーズを除けば、帝国最強だと自負している。


 普段からショートカットだけど、貴族の令嬢は髪を短めにするのを嫌う。

 だからメイドをする時は長めのウィッグをつける。


 かつて失われたレイド皇国の姫だった私は、故国を失い帝国に亡命した。


 逃げ惑う中で、ずっと世話をしてくれた乳母もついに私を見捨てた。


 そのまま奴隷になるところだったその私を、カレン姫様が救ってくれた。

 だからカレン姫様は恩人だ。


 それ以降、カレン姫様のしもべとして時に騎士となり、メイド、諜報官として頑張って来た。


「メリッサは可愛いのに、そんなに男顔負けで頑張っていたら、嫁の貰い手が無くなるわよ?」とカレン姫様にはよく笑われた。

 その度に、私は。


「良いのです。私はこのまま、カレン姫様にお仕えすることだけが願いですから」

 そう答えるのが常だった。


 そのカレン姫様の命が危ない。

 魔獣が何万と襲い掛かり、カレン姫様の居られる部隊が戦闘状態に入ったと知らせが入った。

 その日から、私の眠れない日々が始まった。


 戦いは激戦となり、帝都防衛の第一から第四までの部隊の内、半分がカレン姫様救援に向かった。


 神様、お願いします。

 これ以上、私から何も奪わないで下さい。


 だが神は無情でカレン姫様が1人行方不明となられた、と。

 私はその場で崩れ、茫然と座りこんでしまった。




 1ヶ月前、世界に絶望が訪れた。

 世界の叡智の塔が、その絶望を人類に示した。


 世界最強を表すNo.1の上に現れたのは『魔王』。

 その後、すぐにNo.5、6が沢山の兵と共に魔獣により殺された。


 世界の叡智の塔から、No.5と6の名が灰色に表された。

 まるで、世界から希望を一つ一つ奪うように。


 魔獣は溢れ各国は対応に追われた。

 だが絶望はさらに広がり、No.7、4、そして恐るべき事にNo.3までも灰色に染まった。


 残るは下位のNo.8〜10、そして上位のNo.1と2。

 何故、下位No.8〜10が襲われていないのか、その理由は不明。


 ただ帝国の秘宝、帝国第3諜報部隊隊長ソーニャ様はポツリと洩らした。


 No.0が何かしたのかも知れない、と。


 多くの人が一笑に付した。

 私も何を馬鹿な、と思った。


 No.0と思われる人物に私も会ったことがある。

 酒場の看板娘に変装していた私を、やたらと口説いて来た胡散臭い男。


 その後、ソーニャ様自身がNo.0であることを否定した。


 だけど、その話を後でソーニャ様とした時、ソーニャ様は青い顔で、

「だったら、どうして私は死んでないの? どんな理由があって襲われない?」


 その事に私は何も言えなかった。

 上位であるNo.3ですら、突然の襲撃で殺された。


 下位であるソーニャ様も殺されて然るべきで、今、生きているのも運としか言えなかったから。

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