第109話帝国とゴンザレス⑤
「No.0は後でしばくとして、本題に入って良いか?」
皇帝陛下がそう言う。
本題聞かなきゃダメ?
後、皇帝陛下はゴツいオッサンなので、しばきに来ては行けません。
「要件は他でもない。邪神のことだ」
……そうか。
理解した。
「じゃあ、俺はこれで!」
手を上げクルッと反転。
詐欺にミスった時に備えて逃げ足だけは自信がある!
俺の首根っこを慣れた手付きで掴むエルフ女。
に、逃げ……られない。
「は、離せエルフ女……!
俺は、俺は生きるんだ。」
何故だ!?
ブルータ……じゃないエルフ女、貴様もか!
エルフ女は俺を解放することなく皇帝の前に首根っこ掴んだまま引っ張って戻す。
「話が進まないから早く聞く!」
「待て! 邪神がどうしたか知らないが俺に何が出来る!」
出来んぞ!?
出来る訳がない。
「魔王ぶっ飛ばしておいて何が出来るも何もないわ。
サクッと世界を救ってしまえ」
なんて横暴な!
密林で俺の手のひらで踊ってくれた純粋なエルフ女は何処へ行った!!
「救えるかー!!!
大体、魔王倒したの俺じゃねぇだろ!?
エルフ女! お前常識どこ置いてきた!」
「常識なんてあんたに魔王城で捨てられたわよ!
それに魔王倒したの、あんたでしょ。
魔王城全員で出た後、聖剣のスイッチ押したじゃないの。
今更、チンケな詐欺師のふりしなくていいわよ!」
「アレはスイッチ渡そうとしたら早く押せとせっつかれたからだ!
騙しやがったな!!
あと、フリじゃねー! 本職だ!!」
はん、と皮肉げに笑いながら、エルフ女は言い
「あの時、生きて帰ったら詐欺師辞めると言ってたじゃない。
はいはい、辞めた辞めた」
さらにハッと鼻で笑いながら挑発してくるエルフ女に俺は必死に言い返す。
俺は詐欺師! 詐欺師なの!
カストロ公爵なんかじゃないし、ましてやNo.0なんかじゃ絶対にない!
「辞めてないー! 辞めてないー! 辞めて……ます」
ふと我に帰るとお国の偉い方々3人からジーッと見られてます。
や、やっちまったー!!!!
忘れてはいけない。
詐欺師とは犯罪者のことである。
え? 誰も忘れないって?
俺は今、忘れてたんだよ!!
皇帝陛下と帝国皇女とメメの前でバラしちゃった……。
やばいーやば〜い。
へへへ……やっちまったぜ……。
……さぁて、どうやって逃げよう。
俺の詐欺師発言に皇帝陛下は驚愕の表情。
「な、なんだと……!!
貴様……!」
クッ、皇帝から逃げる、つまり帝国から逃げるということ。
どうする、どうする!!
メメはそんな皇帝を横目に、動揺することなく俺を見て口を開く。
「事実かはまだ研究中ですが、世界の叡智の塔は邪神が仕掛けたおもちゃみたいなものだという説があります。
仮称邪神が世界の叡智の塔に映し出した通り、その影響下にある人々は欲望を増幅されてしまうのです。
幸い帝国はいち早くそれに気付いたカレン姫様により、世界の叡智の塔は破壊されましたが」
皇帝と俺の動揺を無視して、メメちゃんは何事も無かったかのように話を続ける。
え? あれ? メメちゃん?
皇帝陛下もお目々をパチクリ。
メメの言葉を受け悪ノリするように……きっと間違いなく悪ノリしながら、帝国皇女様も続ける。
「そうそう、ただ世界の叡智の塔の周りは魔獣が出たり、欲望を暴走させた人たちに邪魔されたりと壊すのも一苦労だったわ。
そんな訳で貴方に世界中にある世界の叡智の塔を破壊してもらいたいという訳よ!」
ビシッと俺を指差す帝国皇女様。
あれ? 帝国皇女様?
皇帝陛下と俺は顔を見合わす。
「あの〜、俺、詐欺師……」
「はいはい、分かってますからご主人様。
今度は置いて行かないでくださいね」
「ああ、えーっと、はい」
え? え? 分かってるって……何が?
「え? 良いのか?」
皇帝陛下も戸惑ってる。
あ、良かった。
皇帝陛下も同じで状況が理解出来てない。
「では、参りましょう」
「えー! もう行くのー?
私もアレスさんともっと話したい!」
「ダメです。王女様ホイホイを甘く見てはいけません。
ふとした弱った時に絶妙なタイミングで隙を突いてくるのです。
よっぽどの時以外は近寄ってはいけません!」
ねえ、メメちゃん?
その王女様ホイホイって何?
時々、帝国皇女様が言ってるけど?
「えー、メリッサは近寄ってるじゃない!」
「私は良いのです。既に手遅れなので」
手遅れってなんだ!?
手遅れって、何を持って手遅れというのだ!
誰か教えてくれ!!
俺をこの異次元からタースーケーテーー!
ぽんっと俺の肩をエルフ女が叩く。
おお……やはり、エルフ女は俺の常識の守護者なのか?
だが言ってきた言葉は……。
「あんたの状況が手遅れってことよ」
ニヤッと笑われた。
そんなことはない、そんなことはないはずだァァアアアアア!!!!!!!
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