第25話【魔王編】カストロ公爵再び裏話②

 商業連合国代表のオッサンを目の前にしている訳だが、俺に分かりやす〜く威圧してくる。


 俺はまず思った。

 コイツ、アホか?と。


 会談の結果、エース高原の領地の問題について、商業連合国はエース高原を分割しユーフラテス山脈の麓まで大きく領土を広げた。


 反対に帝国はエース高原からセントラル川つまり、俺が渡る時に詐欺をしたあの大きな川のラインを帝国側にすることで合意。


 元カストロ公爵領だったらしいから、なんだか変な感じに勘違いしてくれた。

 よくある詐欺の手法です。


 そのついでに可愛いメメちゃんを愛人扱いしておいた。


 危ない橋を渡らされたんだ。

 このぐらい役得がないと。


 ていうかメメちゃん、有名だよね。

 そりゃそうか帝国ランクNo.1ならナンバーズを除く最強の一角だもんね。


 これは一見、ユーフラテス山脈の麓まで豊かな土地と広大な領土を奪い取られた帝国が大損ぶっこいた形に見えなくはない。


 だが、実情は違う。


 間を遮っていた大森林が消えた事でもう今ではあの川を経由して、商業連合国首都まで一気に船で降って行くことが可能になった。


 そうなると事実上、商業連合国の喉元にナイフを突きつけているようなもの。

 武力でも商売でも圧倒的な立場に立てる。


 今まで邪魔をしていた大森林が『何故か突然』消失したからだ。


 お、俺、知らないよ?


 大体さ〜。

 商業連合国代表、名前忘れたけど、アイツが間抜けだから悪いんだよ?

 普通に考えて、こんなあからさまな不平等な商談なんて結ぶ訳ないじゃん。


 誰も忠告してくれなかったんだろうなぁ〜、それか無視したか。

 ワンマン経営者あるあるね!


 初めて会った人間にいきなり威圧かけてくるから、こんな風に詐欺られるんだ。

 交渉で威圧から入って何を交渉したいんだか。


 いや、そういう方法もあるけど相手が怯えなかったら逆効果だし。

 それか交渉カード切ってからにしろよ。


 交渉……外交もそうだが、主に互いのカードを切っていくゲームと思えば良い。


 相手が何のカードを持っていて、何を譲れるか、相手から出したカードの情報は信用出来るものなのか?

 それを探りながら行う。


 先程も言ったように、いきなり強気に出る方法もなくはないが、相手のカードをある程度、読んでおく必要がある。


 俺とオッサンは初対面。

 オッサンの情報を俺は知ってるが、オッサンは俺の情報知らない。

 負ける訳ないじゃん。


 そんな訳でたっぷりメメちゃんにご褒美貰って、大満足の昼に一緒にお食事。

 やばい、これ同伴と言ってお水のお姉ちゃんにたっぷりお金取られるやつだ!


 食事代メメちゃん持ちだけど……。


 お、俺の常識がガラガラ音を立てて崩れて行くー!!!


 幸せなんだけど怖いの。

 異世界に叩き落とされた気分なの。


 いきなり女神様から、ご褒美に夜伽してあげるよと言われたに等しい。

 素直に受け取るなよ?

 詐欺か、美人局か、ケツ毛狙いだから。




「結局、どういうことですか?」

 そんなわけだからメメちゃんが言った言葉の意味が、最初よく分からなかった。


 はい〜?


「ん〜? ん?

 ……分かってたんじゃないの?」

「いいえ?」


 スプーンで薄いスープを口に運んでいると、フォークでサラダを突いていたメメちゃんが不意に聞いて来たのだ。


 現在、昼過ぎ。

 ご褒美にひとしきり楽しんだ後である。

 ご褒美とは基本的に前払いするものではない。


 それって繰り返すけど、女神様が代償も無しに俺に夜伽をしてくれたのと何一つ変わらないというか、そのままの現象が発生したことになる。


 俺の常識は大混乱。

 すでに頭の中でミニゴンザレス集団がダンスパーティー中である。

 訳わかんネェ。

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