第24話【魔王編】カストロ公爵再び裏話①
「なんでこの街に滞在していらしたのです?
もっと遠くまで逃げているかと思いましたが」
可愛く小首を傾げられては、ゴンザレスに抗う
逮捕された詐欺師。
これにて一巻のおしまいか。
いいや、逃げる!
逃げてみせ……やっぱり逃げれません。
なんでって?
ベッドの隣でメメちゃんが居る。
S級美女からのご褒美を頂きました。
なんで?
もうね、なんでがいっぱいなわけよ。
え? なんのご褒美?
ちなみにゴンザレス、怖くて聞けません。
なんていうの?
死刑囚が最期に何食べたい、と聞かれた感じ?
うん、明日処刑でも間違いなくメメちゃんとのご褒美選ぶね!
大盤振る舞いし過ぎでしょ?
貴女S級美女よ?
チンケな詐欺師に抱かれてどうすんのよ?
まあ、だからって女の質が落ちるとかそんなことはないけど。
S級美女はS級美女だと俺なんかは思うわけよ。
こ、これが帝国精鋭第3諜報部隊長の手腕か!
全く逃げられる気がしない!
でもなんで重犯罪者にご褒美あげてんの?
訳分かんなくてゴンザレス怖いの。
明らかに過剰でしてよ?
それはとりあえず、頭の隅の方に箱に入れて樽に入れて燃やして、心の海にばら撒いて置いておくとして……。
「商家で本が欲しかったからなぁ〜」
それでバーバラちゃんのお家に詐欺でも仕掛けて本を貰おうかと。
「そうですか、分かりました」
何が分かりました、なんだ?
そう思った翌日、その本を買ってくれました。
つまり、貢がれました。
な、なんでだぁぁあああああああ!!
もちろん、そんな美味い話には裏がある。
これ常識。
そのことに俺の常識が崩壊しなくて、内心ホッとしたのは秘密だ。
なんの裏もなく貢がれたかった気がしなくもないけど、スラム上がりの小市民ゴンザレスにはそこに裏がないと疑わないのは無理よ?
スラムでは盗みでもなく、ただで物を貰ったら命を奪われる。
割と本気で。
そういう世界である。
その場合、即座に逃げるのが正しいが、今回の問題は釣り餌が豪華過ぎて逃げるのが遅れてしまった。
S級美女からの身体を張ったご褒美とチンケな詐欺師の命。
うん、どう考えてもS級美女のご褒美の方が価値が上である。
とにかく……俺たちが商業連合国の首都の港街の宿で、朝食を取り食後のお茶を飲んでいた時、唐突にそれは宣告された。
「ということで、商業連合国の国家元首との、アポイントメントを取っておきました」
ということで、と言いながら何一つ説明されておりません。
「なんでだ?」
「面白そうだからです。
冗談です。お仕事です。
現在、我々は帝国の調査員兼連絡員として活動しています。その一環です」
まあ、仕方ない。
とにかく何事においても事前情報が大事である。
「ちょっと酒場に……」
情報収集にと言おうとしたが。
メメちゃんがさらに告げる。
「あ、今からですので、着替えをしたら即行きましょう」
うん、色々ちょっと待とうか。
流石に何もかも無茶苦茶過ぎるぞ?
俺の様子を見て、メメちゃんはクスクスと笑う。
チクショー可愛いー!!
メメちゃんのあまりの可愛さに、まあいいや、と思う自分が嫌いじゃない。
「ご主人様はチョロいですね」
チョロいと言うなー!
しかも本人の目の前で!
チクショー!
流石は元酒場の看板娘メメちゃんだ!
恐ろしい娘!
この俺がこうも簡単に手玉に取られるとは。
「ご主人様が簡単なだけですよ?」
俺の心の声を読むなー!
そんでもって、商業連合国代表の執務室に案内される前に。
「ご主人様は今、カストロ公爵の遺児アレス様です」
うん、さっきも思ったけどもうちょっと事前に説明しようか?
「面白そうでしたので」
うん、可愛いく首を傾げるけど、ちょっと無茶苦茶だよね?
そんな風におねだりしたら、何でも叶えてくれると思ってない?
何でもは無理だけど出来ることはやるよ?
バッチコーイ!
そもそも俺、ここに何しに来たの?
「とりあえず、商業連合国からカストロ公爵として領土を分捕って下さい」
「うん、ちょっと待とうか。
今までもずっとそうだったけど、ここに来て流石に今回はもっと訳分からない」
ふふふ、とメメに楽しそうに笑われた。
ちなみにメメちゃんは、使用人の格好をしているが、オーラ全開モードであり、どう見てもそんじょそこらの使用人の娘さんには見えない。
「帝国の者が挨拶に来るという建前が大事なのです。
その時点で仕事は完了しております。
後は、まあ……、好きにしていただければ、と」
あくまで最低ラインはクリア済み、と。
「何か成果あがったらベッドでご褒美貰うからな!」
メメは一瞬だけ、キョトンとした顔をして直ぐにフフフ、とまた魅力的に笑う。
出来るなら、どうぞ、だと。
はてさて、『どこまで』を想定してそう言われているか、まだ探り出せないな。
……ああ、むしろ『試されている』ということか。
まだ、No.0とでも疑っているのかねぇ。
身体まで使って。
恐ろしいものだ、国の諜報部隊とは。
「言っておくけどな!
ご褒美はがっつり頂くからな!
泣いてもダメだぞ!」
「ええ、分かっておりますとも」
そう言って、蠱惑的な微笑で楽しみですね?
そんなことを言われてはどうしようもない。
もうゴンザレスの頭の中はピンク色。
うん、まあ、S級美女を好きに出来るなら、悪い条件ではないかもね?
多分?
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