第39話【魔王編】ゴンザレス領地(?)に帰る裏話③
今日も今日とて、ソファーに転がって本を読んでいるとエルフ女が俺の上に飛び乗って来た。
ゴフッ!?
「ねえ、アレス〜。勇者来た〜?」
「知らん!
カストロ公爵領の奴等が迎えに行ってるだろ?
頼んでおいたし」
カストロ公爵領は国1番の領と言われながらまだまだ発展途上だ。
様々な政策も始めたばかりで何につけても金が足りない。
本についてもそうだ。
本は贅沢品であるため、屋敷の中にも飾り的な意味合いで置いているだけのものが多い。
由々しきことだ。
「ちょっとアレス〜、暇なんだけどー?」
「分かった分かった。
魔獣退治参加させて貰って来いよ」
おざなりにエルフ女の頭を撫でてやる。
視線は本に。
本を増やすには、この領をさらに豊かにする必要がある。
何故なら、ここでは俺はソファーに寝転がって本を読み放題だからだ。
……理由は分かんないままだけど。
あの会議で奴隷受け入れの話をしたのも、より有能な人材が大量に必要だからだ。
各国は小国を滅ぼすだけ滅ぼしてそのケアを怠たった結果、今も奴隷に堕とされてしまった有能な人材が山のようにいるのだ。
まあ、世界そのものの構造が、奈落に落ちた奴を拾えるシステムになっていないのが1番の理由だがな。
各国の後始末をしてあげるんだよ?
そんな方向で話を進めるのが良いだろう。
ヘタを打てば余計な敵対関係を生むので注意が必要だ。
滅ぼした国の人材はその国からしたら敵以外の何者でもないからだ。
さらに領地売買の件もそうだ。
他国に対して領主が勝手に外交しようというのだ、丁寧に行わないと確実に
いくら各領地のことは各領主の権限であっても、他国となればそうはいかない。
エストリア国内でもさまざまな各派閥に配慮しなければならない。
カストロ公爵領で言えば、ケーリー侯爵への配慮は絶対だ。
この領地、外交得意な奴……居たかなぁ?
それもアドバイスしてあげた方がいいか?
「魔獣退治、アレスも行かない〜?」
「行くわけない!」
エルフ女、こんな間延びした言い方だっけ?
そう思い俺の上に乗りながら、昼寝しようとしてやがる。
耳を触ってやった。
「ちょっ、あんた! 耳やめなさいよ!」
「なんかこういう特徴がある場所って弱点ぽいことあるよな?
なんでだ?」
「知るかー!」
どつかれた。
エルフ女は顔を真っ赤にして、肩を怒らせてドシドシと去って行った。
後でベッドでいじめよう。
そこにタイミング良く内政官スラハリがやって来る。
スラハリは肩を怒らせて立ち去るエルフ女を見送りながら。
「良かったのですか?
奥方様を怒らせて」
「あぁ〜ん?
ルカちゃんも言ってたが奥方じゃねぇよ。
勇者へ届けに来ただけだからな。
ところで……」
カストロ公爵領の外交担当が誰か尋ねると、大体はスラハリが対応しているそうで。
「お前は内政特化だろ?
情報や外交は専門家でないと外交は……。
あぁ〜、やっぱ人材不足ってことか」
はい、と頷かれた。
各領では外交については領主が行うことが多い。
このカストロ公爵領ならカストロ公爵アレスとやらが行うのが1番なんだろうが……。
こ、公爵様って何処にいらっしゃるかしら?
あら? 教えなくて良いわよ?
わたくし危うきには近寄らない主義よ?
「どなたか、任命して頂ければ……」
スラハリが躊躇いながらもそう口にするが。
わ、わたくしに任命権など、あ、ある訳ないのでしてよ?
貴方、何をおっしゃってるのかしらー、カシラー!?
俺はカストロ公爵のことには触れずに代案を出す。
「カストロ公爵の奥方のこむす……No.8イリス様に任命させれば良いんじゃないか?」
迂闊に小娘と口にするところだった。
あの方は強くて偉い世界ランクNo.8様よ。
「おじょ……イリス様が奥方、ですか?」
「違うの?」
この領って結局、なんなの?
ウラハラ領からカストロ公爵領に変わったのって、イリス・ウラハラがカストロ公爵アレスに嫁に入ったからじゃないの?
「いえ! その通りであります!」
何故か、目の前でスラハリに男泣きされる。
これでお嬢も報われますって。
あ、そ、そう? お嬢って誰……?
今、No.8の話してなかったかしら?
聞かないよ?
カストロ公爵並に嫌な予感がするから。
「とにかく窓口はお前で、必要な情報についてはウェンブリーとかカラハムに頼れ。
後、外交面は何事につけてもケーリー侯爵をたてろ。
エストリア国内はそれでなんとかなる。
心付けもケチらず忘れるなよ?」
「御意」
あら? 素直ね?
良いの?
詐欺師の言うことそんなに信じてしまって。
今、わたくし、勢いで命令っぽい口調しなかったかしら?
何も言ってこないから気のせいですわね!
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