第66話ゴンザレスと聖剣①

 月にー照らされー砂漠ーをー行くー。


 そんな感じで、No.8と2人旅。


 途中で盗賊らしき奴らが居たんだ。

 らしきって何かって?


「へっへっへ、そこの女を置いて」

 で、盗賊が魔力の光と共に、目の前から消えたんだ。


 振り向くと、No.8の女が盗賊が居た場所に向けて、手をかざしていた。


 にっこりと笑うNo.8。


 あらぁ、良い笑顔ね?

 美女の笑顔が怖いって、わたくしの気のせいかしら?


 悪即斬ね!

 わたくし詐欺師ですから、悪即斬?

 まあ、怖いわ!


「さあ! ある、アレス様。参りましょう」

「……はい」

 何事もなく、進みます。


 もう俺何処に連れて行かれているのか、さっぱり分かりません。


 情熱の国バーミリオンの方に向かってるのは分かってる。


 行ってどうすんの?

 そもそも何で俺を連れて行くの?


 エルフ女とキョウちゃんは大分先に行ったのか、合流出来ていない。

 そのため無言でNo.8と2人。


 つ〜ら〜い〜!!


 というか、いい加減に沈黙に耐えられなくなってきた。


「あの〜、イリスさん?」

「アレス様、私めはイリスとお呼び下さい」

 なんで、元王女は呼び捨てで、俺は様付け?

 偉い人の考えは分からないなぁ。


「イリス……。俺、何処連れて行かれてるんだ?」

「はい、アレス様にはバーミリオンの首都に向かって頂いております。

 大変申し訳ないことですが、アレス様に聖剣探しをお手伝いいただきたいのです」


 なんで聖剣探しに俺?


「俺、役に立たないと思うぞ?」

「ご謙遜を。アレス様に出来なければ誰にも不可能かと」


 ねえ? No.8。

 それなんの演技なの?

 意味分かんなくて怖いし。


「せめてアレス様呼び、やめてくんない?

 アレスで」

「え! そ、そんな恐れ多い!」


 やんごとない人に様付けされるのは、むずむずするから止めてくれ。


「……では、アレス……、アレスアレスアレス……ふふふ……、アレスアレス。ふふふ」


 ヒィ〜!!!


 変なこと言うんじゃなかった!恍惚な顔して、俺の名前を連呼するの止めて!?

「ごめん、やっぱアレス様のままで」


 こえーよ。

 No.8は少し残念そうにしながらも、頷く。


「分かりました、アレス様。行きましょう」

「……はい」





 No.8が時々、俺の名前を意味なく呼ぶたびにビクッと背筋を真っ直ぐさせながら、どうにかバーミリオン首都に到着。


 この街見たことある。

 相変わらずストリートで踊る男ども。

 金貨100枚ゲットした街。


 ここ首都だったんだ。


 早速、宿に入り宿の一階で食事。

 フルコースが出て来た。


 そして、No.8は何故か俺の背後に立つ。


 お、俺の後ろに立つなぁぁああ!!!

 こえーよ!!

 こえーんだよ!


 ちょっと涙目で、席に一緒に座るようにNo.8にお願いする。


 少し躊躇いながらも、俺の正面の椅子に座り同じテーブルで食事をする。


「あ、あのな?」

「なんでしょう?」

「もう少し、気楽な感じになんない?」


 常にいつ斬りつけられるか、分からなくて怖いんだけど?

 ずっとピリピリしてるし。


「いえ、しかし、護衛……、あ……。

 ……分かりました」

 護衛!?

 護衛ってなんなの!?


 誰か着いてきてんの!?

 しかも、『あ……』って何!?

 何が『あ……』なの!?


 動揺しつつ、No.8を見る。

 真正面で見るNo.8は、とても華奢で可愛い美女にしか見えない。

 ナイフとフォークを綺麗な作法で使い分ける。

 上流階級の美女だ。


「あ、あの……! あるじさ……アレス様は。

 私が、邪魔ですか?」


 邪魔です。

 怖いので。

 そして、怖くて言えません。


「い、いや?」

 少し声が上擦った。


「アレス様は……

 私に、手を出さないですよね……」

 超可愛い美女が目の前で、落ち込んでるようにしか見えない。


 な、何を企んでいるんだ……。


 ガクガク……と震えそうになるのを必死で我慢。


 怖いから手を出しません、と答えるとどうなるのか?


 そもそも、もし本物のNo.0ならNo.8を怖がる訳がない。

 つまり、バレる!


 そ・れ・は・ま・ず・い。


 生きるのだ!

 生きるために考えろー! 俺ー!!


「お、俺! 実は!」


 思考しろ!


 思考しろぉぉおおおーー!!!


 その時、俺の頭にある名案が浮かんだ。

 綺羅星きらぼしが光るかのように。


「俺! 実は、『お嬢』と結婚するんだ!」


 だから、あんたには手を出せん!

 これでいこう!!!!


 からん、とNo.8が持っていたフォークを落とす。


「『お嬢』……とです、か?」


 俺はコクリと頷く。


「『お嬢』って、あの……カストロ公爵領の……?」


 コクンと緊張をにじませながら頷く。


 通じるか?

 通じろ、通じろー!!


「……わ、分かりました」


 No.8は俯いて、震える。


 ……通じた、のか?


 No.8がどうして、俺に手を出させようとしたのかは分からない。


 美人局つつもたせにしては、掛ける餌が大きい割に、俺のような小物を釣る意味がさっぱり分からない。


 策謀を得意とするカストロ公爵に何か考えがあってのことか。


 あるいは俺の溢れんばかりの危険な魅力に、ウブなNo.8が騙されてしまったのかもしれない。

 いや、きっとそうなのだろう。


 俺、罪な奴。


「最後に確認させてくれ。

 イリス……お前はカストロ公爵の女……だよな?」


 イリスは俺の目を見て、コクンと頷いた。


 やっぱりーー!!!!

 あっぶねー!!

 手を出したら間違いなく、カストロ公爵に殺されるところだった!


 No.0は実在しているか分からないけれど、カストロ公爵アレスは確かに存在は確認されている。


 しかも、策謀を得意とし商業連合国を潰したり、とっても怖い人なのは間違いない!


 その女を何かの間違いでも寝取った日には確実にお終いだ!!!


 諦めてくれたらしくNo.8は黙って食事を再開するので、俺も安心して食事をする。


 あー、この肉うめー。

 サイコー。


 酒も飲んじゃおっかな〜。


 食事が済み、ルンルン気分で部屋に戻る。

 2人で。

 あれ? そう言えば、同室?

 なんで?


 アーーーーーーーー!!!!!


 ……美味しくベッドでいただかれました。

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