第67話ゴンザレスと聖剣②

 悪夢なんだか天国なんだか、やっぱり天国だった一夜が明け、へろへろのわたくしゴンザレス。


 なんでこうなった?


 しかも、すでにコルラン国で再会した時に俺が気絶している間に、俺に初めてをくれたそうで。

 はっはっは、アレ、ユメじゃなかったのね?

 ユメだけどユメじゃなかったと言うやつね。


 もう、手遅れだった!!!


 やばいー、ヤバいー!


 間男ゴンザレス!

 最大のピンチ!


 いつ何時、公爵様の魔の手が襲いかかるか。


「先に着いていれば、通りの奥の広場でエルフィーナが待っているはずです。」


 No.8は、普段通り。

 いや、何か憑き物が取れたような爽やかな笑顔だ。


 そうだよなぁ、この女は暗殺気にしなくてもいいもんなぁー。

 世界ランクNo.8。


 いかに公爵と言えど、この女を殺せる奴を手配することは出来まい。

 すでにエストリア国最強だもんなー。


 ちくしょー!

 火遊びに使われた!

 貴族の女怖い……。


 とぼとぼとNo.8の後を歩く。

 何か手を考えねば。

 No.8から貰った金貨100枚は残っているが、暫く身を隠すことを考えればもっと金が要る。


 一生懸命、詐欺仕事をしていて見つかってしまっては元もこうもないからだ。


 そこで俺はキュピーンと閃く。


 昨日の閃きは何故かNo.8には通じなかったがこれならいける。


 それは……聖剣を盗んで売れば良いんだ!


 間違いなく高く売れる!

 エルフ女、キョウちゃん、No.8、上手くいけばこの3人の目を盗むだけでいけるはずだ!


 へろへろで頭が働かない気がしたが気のせいだった!

 俺、冴えてる!


 とぼとぼとしていた足取りが急に軽くなる。

 未来に希望が持てるようになり、そこで俺は顔を上げると周りの景色も目に映る。

 周りが通りの端っこに寄って並んでいるのだ。


 ふと遠くの方で、シャンシャンダムダムと楽団の音楽らしき音が聞こえる。


「なんだ?」

「何かの催しのようですね。端に寄りましょう」

 No.8の言われるがままに端に寄る。


 通りの先にでっかい生き物が見えた。

 それが見えると同時に、居並ぶ人々から歓声が上がる。


 なんだ?


 さながらお祭りにおける大パレード。


 タイコと鈴の音。

 それに歓声。


 大きな生き物は確か象とか言ったか。


「王族主催のパレードのようですね。どうやら、周りの声を聞く限り王太子の結婚を祝うパレードのようです」

 No.8が耳元でささやく。


 おうふ!

 くすぐったい。


 危険が危ない女だが超S級美女である。


 恐るべしイリス・ウラハラ!


 俺が悶えている間にも、シャンシャンドンドンとパレードは進行する。


 それをボーっと眺めていると見たことのある男女が目に入る。


 それもパレードの中心に居る。


 俺はそっと目を逸らす。


 シャンシャンドンドン。


 シャンシャンドンドン。


 シャンシャンドンドン。


 音が遠ざからないのはどうしてだろう?

 俺は現実から目を逸らしたくて必死だ。


 そっとパレードの方に目を向ける。


 その場に居る全員が『何故か』俺の方を見ている。


 恐らく王太子夫妻であろう、見たことのある男女が俺と目が合う。


 その2人がにっこりと笑う。


 ひーーーーー!!!!


 俺が詐欺った男女。

 口車に乗せて適当なことを言って金貨100枚せしめた相手。

 王太子とその奥方で御座いました……。


 象の台車の上で王太子が立ち上がり俺に言った。

 朗々と響く声で。


「先生!

お久しぶりです!

再会出来て光栄です!」

 副音声でここで会ったが百年目、覚悟はいいな、と聞こえます。


 隣でNo.8が流石はアレス様、と呟く。

 何が、流石なんだよ……。





 という訳で王宮です。

 なんでチンケな詐欺師が王宮に居るのだろうだろ、逮捕?


「いやあ、その節はユウナ共々お世話になりました。

 先生のおかげで無事優勝する事が出来ました」


 俺は一生懸命、首を横に振る。


「君たちの実力だ」

 いや、マジで。


 俺、君らを詐欺に掛けただけだから。

 気づいているよね!?

 変わった拷問だよね?


 じりじりと己の罪を悔い改めよって!?

 ヒィ! お赦しを!


「先生、そちらの女性は?」


 No.8は王太子に問われ、優雅な礼でもって応える。

「僭越ながら、アレス様のシモベにして妻の1人イリス・ウラハラと申します」


「イリス・ウラハラ……?

もしや元ウラハラ国王女にして世界ランクNo.8の!」


 見惚れるような微笑で答えるNo.8。


「流石、先生だ……」

もはや誤解がうなぎ上りで竜になってしまいそうだ。

 何が、流石なの……?


 あとね? No.8。


 あんた、いつ俺の妻になったの?

 あと妻の1人って何?

 1人も居ないよ!?

 色々突っ込みどころ満載なんだけど?


 どうしてこうなったんだぁぁあああ!!

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