第49話【魔王編】ゴンザレス、コルランに入るの裏話④
バグ博士の研究室では実験ありの研究あり、さらにバグ博士の蔵書も読み放題。
同僚に隠れS級美女のパーミットちゃんも居る。
パーミットちゃんに手を出す隙がないことを除けば、最高の職場だった。
特に、特にですよ? 奥様!
な、なんとぉぉおおお!
お給料が出るのですよ!
それも月銀貨5枚!
夫婦2人が1ヶ月なんとか生活出来るレベル。
さらに宿付き本読み放題!
ここが
まあ、貴族でないと雇って貰えないけど。
俺?
俺はエール共和国の男爵の息子って言ってるから……つまり詐欺で入り込みました。
とにかく!!
あと、ここにメメちゃんかエルフ女が居ればさらに最高。
最近はこの際怖いけど、No.8の小娘でもいいかと思いだしている、美女だし。
……俺はとにかく手を出せる美女に飢えていた。
ここ最近で手を出せそうな美女はナリアちゃんだけだ。
男の娘だけど。
いずれもS級の美女なので、スラム民どころか市民になれても、遥かに手の届かない存在なのだが。
あっれぇ〜!?
それがなんでチンケな詐欺師なら手が届くんだ!?
世の中間違ってる!
間違ってるよぉ〜!!!
そんな感じで、日々を過ごして行きつけとなった酒場で、衛兵のジョニーが俺に話しかけて来た。
「アレスよ〜。お前さん、惚れ薬とか作れたりしないか?」
「惚れ薬〜?
お、お前まさか!?」
このジョニーという男。
体格も良く衛兵として恵まれており気も良い奴なんだが、いかんせんヘタレ。
超ヘタレ。
幼馴染のキャサリンにもこの酒場の看板娘のべシーにもウジウジして告白出来ず、結局、社交的な別の男に掻っ攫われたそうだ。
そりゃそうだ。
ウジウジしてる間に女は結婚適齢期を過ぎる。
厳しい世の中、ヘタレている暇なんざ一切無い!
もっともその数年後には、幼馴染のキャサリンは子供を連れて実家に帰って来たらしいが。
ウジウジ男は良い男ではないが、かと言って社交的な男が良い男とも限らない。
難しいものだ。
ジョニーは俺がバグ博士のところで、色んな薬を作ったり研究をしていることを酒の肴にしたのを覚えていたようだ。
「おうよ。
ちょっとキャサリンに告白しようと思ってな……」
恥ずかしそうにガタイの良い身体をモジモジさせる。
人として腐ってやがる、
まあこの際、惚れ薬に頼ろうとしている辺り、この男が致命的なことはあえて気にしないでおこう。
「作れるよ?」
俺は軽い感じに返事をする。
「お! マジか!
是非! 是非作ってくれ!!」
「金貨2枚」
今は娼館でレイナーちゃんというそれなりに可愛い娘を発見したから、全給料を注ぎ込み攻略中なので金がいるのだ!
なかなかというか、流石というか手強い!
なんとしても店外デートに誘わねば!
勝負はそれからだ!
俺はやるぜ!
そのために俺は金が要る。
俺は(金がほしくて)意思がこもる目でジョニーを見る。
「た、高ぇなぁ……
もっと安くならねぇか?」
ケッ! 素人が!
……いや、カモとも言うか。
俺はニヤリと笑う。
「おいおい、惚れ薬なんてもんは秘伝中の秘伝だぜ?
コルラン広しと言えど惚れ薬を作れるなんて、コルラン最高の研究者バグ博士の助手である俺ぐらいだろうぜ?
……ただまあ。
よし、分かった。
金貨1枚に負けてやる。
代わりに、ここの支払いと……。
何かねぇかなぁ〜?
何か衛兵の物品横流し出来ねぇか?
この際、金貨1枚分とは言わねぇけど……武器は流石に足がつきやすいから不味いし、衛兵の制服とかどうだ?
銅貨何枚にもなるかどうかだけどよ?」
「あー、物資とかはほんとは足が付くから不味いけど、破れた廃棄予定の隊服とかなら……」
ジョニーは目を上の方に向け、そんな程度しかねぇけどダメか、と。
「おいおい、ゴミ処理かよ?
まあ、布としてか
少しは着れそうなの持ってこいよ?
無理なら金貨1枚分だからな!!」
ジョニーは俺の返事に嬉しそうにニヤリと笑い、サンキューと返す。
どうやらアテがあるようだ。
俺は表情では渋面を作りながら、内心では毎度ありっと笑う。
衛兵の服ってのは外部の人間がそう安易と手に入る訳じゃない。
それを着るだけで庶民は勝手に信用してくれる。
犯罪者には
ま、使い所次第だけどね!
エストリアでもその制服があれば、楽に世界の叡智の塔に落書き出来たんだがなぁ〜……。
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