第50話【魔王編】ゴンザレス、コルランに入るの裏話⑤

 研究仕事の合間に雑談ついでに惚れ薬の話をパーミットちゃんに話す。


 かつてはチョコレートがその役目を担うこともあったとかいう話。

 もちろんチョコレートにお酒が入っててその勢いってヤツだけどね。


 研究所に帰ってそんな話をパーミットちゃんにした。

「ア、アレスさん!?

 惚れ薬とかそんなの作くれるんですか!?

 どうやって作るんですか!?

 教えて下さい! 教えると言え!」

 俺の襟首掴んでパーミットちゃんが俺をガクガクと揺らす。


 や〜めーてー。

 ゴンザレスから小さいゴンザレスが出ちゃうわぁ〜!?

 し、仕方ない。


「じゃあ、今度、パーミットちゃんに教えてあげよう」


 パーミットちゃんが分かりやすくウキウキしながら歌を歌い出す。

 上機嫌ね?

「あっのひっとに〜♪

 薬で〜イチコロよー♪」


 そんなに新しい薬を覚えられるのが嬉しいのかな?

 この娘もよく分からない娘だよなぁ?

 薬と言ってもチョコレートを媚薬と言い張るのと同じようなものなんだが?


 仕方ないな、頭をボリボリと掻く。

 するとパーミットちゃんにフケが落ちると、嫌そうな顔で距離を取るられた!


 自分だってボサボサ頭で偽装してるのに!!

 パーミットちゃんは伯爵貴族のお嬢さんで丸メガネで野暮ったい格好をしている。


 この娘なんで『偽装』してるの?

 美女なのに。

 次の日、ジョニーは衛兵の隊服と金貨1枚を持って来た。

 金貨1枚は最後まで渡すことをしぶっていた。


 俺はため息混じりに薬を渡して、注意事項を説明する。

 蓋付きの箱に入れたビンを一つ渡す。


「相手に蓋を開けさせて相手がそれを直ぐ飲めば効果がある。

 相手がそれを飲めばすぐにビンを箱に片付け相手に告白しろ。


 必ず成功する。

 反対に躊躇ちゅうちょして飲まない場合はどうしようもない。


 諦めろ。


 その時は金貨1枚は返してやる。

 あと、そのビンは惚れ薬用の特殊加工だからな?

 必ず返せよ?」


 ジョニーは何度も手順を確認し、緊張しながらそのほれ薬を持って帰った。

 さらに次の日、ホクホクとしながらジョニーは酒場に現れ、俺はビンを受け取ると共にジョニーの惚気話を夜中まで聞かされた。


 罰として、つまみと酒を沢山持ち帰りジョニーに支払わせておいた。


「んで、コレが惚れ薬を作るビンね」

 俺はパーミットちゃんにそのビンを渡す。


 パーミットちゃんはビンをしげしげと眺め……ビンの蓋を開けてビン底を見た時に、あっと声を上げる。


 底にはビンの蓋を開けた時のみ、読める文字が書いてあった。


『あなたの目の前の男は、あなたがコレを飲めば告白してきます。

 オーケーなら飲んで下さい。

 ノーならば、絶対に飲まないように』


 出戻りバツイチ子持ちの女なら、真っ当な衛兵の職についているジョニーを逃すはずがあるまい。

 性格はどうあれ。


 パーミットちゃんはそれを見てふるふる震え出す。


 おや? パーミットちゃんの様子が?


「詐欺だぁぁああああ!!!!」

 飛び蹴りかまされた。

 何故、俺が詐欺師とバレた!?


「詐欺だ!

 本物の惚れ薬と思って期待したのに!

 あの人に使って既成事実を作ろうと思ったのに!!

 ちくしょー!

 純情な乙女心をもてあそびやがって!

 万死に値する!!」


 やめてー!! パーミットちゃん!

 貴女が手に持ってるのは、研究用の魔獣の鋭い牙だから!

 刺されたらゴンザレス死んじゃうから!

 死んじゃうから!!


 あと何か聞き捨てならない事言ってない!?

 あと惚れ薬を使う乙女心はロクなものじゃないわよ!?

 あとそれ持って迫ってくるな!

 殺す気かー!


「死ねー!!」

「嫌だー!!」


 結局、その日はパーミットちゃんから逃げ回り、顔面にあと少しで突き刺さるギリギリのところでバグ博士により助けられ、事なきを得るのであった。


 ほんと、なんでやねん。

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