第22話ゴンザレスとエール共和国⑤
その日、エール共和国を襲った危機は去った。
その危機についてエール共和国元首マークはこう語る。
「カストロ公爵、いえ、No.0はこう言いました。
貴様らの覚悟を見せろと。
世界最強に頼るのではなく、この危機は……この世界の危機は、全員で乗り越える試練なのだ、と。
それと同時に彼は希望もまた、私に提示しました。
ベテラン冒険者を集めよ、と。
当然、彼は知っていました。
最強勇者と呼ばれるキョウ・クジョウがこの街に居たことを。
なんのことはない、私の執務室を訪れる前にキョウ・クジョウに接触済みだったのです。
キョウ・クジョウはNo.0の女であるという噂もあります。
彼は自らの大事な女をこの街に置いて山の方に入っていったそうです。
そう、我々が情報を掴むよりずっと前から魔獣が前面だけではなく、後背の山から接近していることに彼は気付いていたのでしょう。
気付いていたから彼は私にああ言ったのでしょう。
後ろは任せろ。
全員で前から来る魔獣を防げ、と。
世界最強と呼ばれる存在がいる。
曰く、全てを見通す千里眼を持つ大軍師。
曰く、万の敵すらも打ちのめす大将軍。
曰く、病の悉くを治療して人を救う聖者
曰く、元男でも関係なく、愛せる慈愛の人
曰く、最強にして無敗、世界の叡智の塔に
刻まれるランクNo.1も超えた最強ランクNo.0
それが、世界最強ランクNo.0。
その伝説に偽りなしです」
だが、そこからカストロ公爵アレスと名乗るNo.0は忽然と姿を消した。
ある者は言う、彼はその身を賭して、魔獣と相打ちになったのだ、と。
ある者は言う、彼は神の遣いであり、使命を果たし消えたのだ、と。
ある者は言う、彼はいつものように、忽然とその姿を現すのだ、と。
だが、誰一人として、その真実を知らない。
それが、世界最強ランクNo.0彡☆
温かい……。
誰かが俺を救い出し、抱きしめている。
女性特有の良い匂いだ。
何処かで嗅いだことのある……。
そう、いつも一緒に居た……。
俺はゆっくりと目を開ける。
年の功は10代後半といったところ。
亜麻色の髪を肩まで伸ばし、綺麗より可愛い系の女だ。
「あ♡あるじ様。お目覚めになられましたね!」
その名は世界ランクNo.8イリス・ウラハラ。
俺をNo.0と慕う勘違い女。
そして……、俺の恐怖の対象。
ヒーーーーヤアーーーー!!!!!!!!
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