第23話船の上のゴンザレス①

 世界最強と呼ばれる存在がいる。


 曰く、全てを見通す千里眼を持つ大軍師。

 曰く、万の敵すらも打ちのめす大将軍。

 曰く、病の悉くを治療して人を救う聖者

 曰く、元男でも関係無く愛せる慈愛の人

 曰く、最強にして無敗、世界の叡智の塔に刻まれるランクNo.1も超えた最強ランクNo.0


 だが、その正体は一切不明。

 男か女かオカマか、年齢も不詳なら、生まれも公爵家の捨て子だとか転生者とか生まれながらの救世主だとか、数え上げたらキリがない。

 それら全てを合わせて、誰も見たことがないという。


 それが、世界最強ランクNo.0





 旅行けば〜。


 どうも、アレスです。

 そろそろゴンザレスに戻して、平和に生きたい気もします。


 詐欺師です。


 この肩書きも最近、無理がある気がします。


 今、船の上に居ます。

 俺の隣には、年の功は10代後半といったところ。

 亜麻色の髪を肩まで伸ばし、綺麗より可愛い系の女。


「あるじ様。もう2日程で目的のメーべ島に着きます。

 そこで買い出しをして目的の物を揃えたら、エストリア国のカストロ公爵領に帰りましょう」


 俺をNo.0と勘違いして、あるじ様と呼ぶ世界ランクNo.8の危険な女。

 会った当初に剣で殺されかけて、ずっと俺にとって恐怖に対象だ。


 俺は遠い目をする。

 あー、メメちゃんに会いたい……。


 見渡す限りの海、海、海。


 逃げ場ねーなー。


 ちろっと女を見る。

 田舎っぽさが抜け、更に可愛くはなっていたが、いかんせん怖い!


 後、それなりに大きな船に乗ってるんだけど、これウチの船らしいんだぁ。


 ねえ? 誰か教えて。

 ウチのって何?


 俺、ただの詐欺師よ?

 いつから船抱えるような大物になったの!?


 ……まあ世界ランクNo.8ともなれば、そんぐらいの規模の人ぐらい動かせるわな。


 あれ? でも最初こいつ、国失って1人でウロウロしてなかったか?

 あー、まあ、あん時は帝国に狙われてたからな。


 今は仲間と合流したんだろ。


「しかし流石ですね。あるじ様。


 ついには帝国をも操ってみせるとは。カストロ公爵領への支援が国を越えて帝国からも届くようになりました。


 お陰でこのような船の手配もスムーズに行えました」


 あー、あー、聞こえなーい。


 必死に現実逃避しているんだから、変なこと言うんじゃねー。


 俺の常識がガラガラ崩れて、まるで俺がカストロ公爵で、この船の持ち主で、本当に世界ランクNo.8の化け物のあるじみたいに言うんじゃねー!

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