第24話船の上のゴンザレス②

 俺は暇を持て余して、船の上から釣り糸を垂らしながら全く興味はないが女に聞いた。


「それで? その島とやらには何を求めて行ってるんだ?」


「魔王討伐に使用する秘宝グニルニグムがそこにあるとか。

 もっともそれについては期待薄ですが、後は火と水の魔石から作る宝珠ですね。


 我が領はあるじ様の采配のおかげで何処よりも魔獣被害は少ないですが、それでも全く被害が無いわけではありませんので」


 ふーん、と俺は関心無さそうに。

 実際、あるじ様とかこの女は言うが俺の領地でも無いし。


 そんな感じなので俺は変わらず気の向くままに思うことを言う。


「追い込み漁みたいに出来れば、魔獣は立派な資源なんだけどな」


「え?」


「だーかーらー、追い込み漁。


 魔獣に追いかけられたけどアイツらそんなに頭良く無いだろ?


 山の土砂崩れとか気にせず、ドタドタ目の前の餌に向けて突っ込んでくるし。


 潤沢な火の宝珠とか水の宝珠とか使って罠にかけて狩ることが出来たら、素材とか良い材料になるだろ?


 エール共和国の冒険者とか、それで稼いでいるんじゃ無いのか?」


 違うのか? と女に聞く。


 女は真剣な顔で顎に手をやり考え出す。

 場所は何処が良いでしょう? と聞かれた。


 知るか!

 と言いたいが怖くて言えん!


 女はまるで、俺からの指示を待っているかのように待っている。

 マジで待ってんの!?


 この熱い視線が普通の女からのものなら、直ぐにベッドへゴーなんだがなぁ。


 あの俺を拉致した領地なら……。

「平原から山の方に向かって急に窪地になってる場所あるだろ、あんな感じのところじゃねぇの? やるなら、だけどな」


 この女もなぁ〜、変な凶暴性とか執着心とかなけりゃあ、ふっつうに上等な美人なんだがなぁ……。


 手〜出したいけど出したら最期、No.0じゃ無いとバレた瞬間にズンバラりんだろうな。


 バレなくてもこの女の感じなら、それこそ他の女と関係持ったりしようものなら、俺ごと殺して私も死ぬ、とか抜かしそうだし。


 あー、やだやだ、逃げたいけどこの女の船の上〜(断じて俺の船ではない!)、アチキ囚われのゴンザレス。


「バーナード船長!」


 女は髭面の海賊風な船長を呼び何かを話す。

 海賊風船長は頷き、海賊風部下に鳩を連れて来させて、女が渡した手紙を括りつけ飛ばしいる。


 ねえ? 君まさか、ボクちんが言った話を真に受けてないよね?


 聞いたこと無いよ?

 魔獣を狩って特産物にするなんて。


 ……まあ、いいや。

 他人事だし。


 あ、でも、俺のせいにするなよ?

 俺は適当に言っただけだからな?


 聞いてるか?


「分かっております、あるじ様。

 全てはあるじ様の思し召しのままに、如何なる結果もあるじ様のなすがままに」


 え? どういう意味?

 それと何でひざまづいてるの?


 君ってそういうキャラだっけ?


 出会いの時を除けば、ずっとこうだった気がする……。


 ……まあ、いいや。


「好きにすると良い」

 いやほんと。


 それなのに何で目をキラキラさせて涙ぐんでるの? 怖いよ?

 詐欺する前に騙されないで?


「はい!」


 いや、はい! じゃないから。

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