外伝5:シュトレーゼンの見世物小屋と詐欺師②
「それで? 今度は何企んでるの?」
俺の首根っこを離して、エルフ女は腰に手を当て呆れた顔で尋ねてくる。
「へ? いや、言った通り、あり得なさ過ぎて怖くて逃げただけだけど?
あと詐欺師の俺が王様とか、ははは、ナイナイ」
「あ、そう。良いけどついていくかんね」
明らか信じてない気配200%!
なんて素晴らしい信用だろう!
当然ですね。
しかしまあ……。
「お前ら連れて行くと美人過ぎて目立つし」
だってS級だもの。
目立って良い事などない!
「いいから行くわよ」
エルフ女は俺の耳を引っ張り歩き出す。
痛てて! 俺をエルフにしようとする企みか!
仕方なく俺はエルフ女を伴って最寄りの街に入る。
そうしてぐるぐる街を回り、酒場で情報収集。
本来なら飲み屋の姉ちゃんを口説きながさららに情報を聞き出すのだが、エルフ女がガッチリ俺をガード。
何したいの、お前?
「情報収集出来ねぇんだけど?」
エルフ女も今までこういう邪魔したことなかったんだが?
エルフ女は
「……また女増やすの?」
「いやいや、別に増やそうと思って増やしてないんだけど?」
これもまた俺の恐怖を
俺、それなりにイケテルとは思うが絶世の美形でもないんだけど?
S級美女は意外と男と出会いがないのか?
「そりゃあそうだけど」
不満そうにエルフ女はそっぽを向く。
お、か、し、い!!
今までエルフ女と幾度も旅をしたが、こんな感じで嫉妬するような様子は一度も!
ただの一度もなかった!
エルフ女は心なしか耳が垂れ下がって、酒を傾けながらそっぽを向いたまま。
「……あたしらの誰かなら良いけど、他の女を新しく引っ掛けられるのはヤダなぁ」
俺はその場でぴくぴくと身悶えする。
ふぉぉおおおおお……。
き、貴様は、誰だぁぁああああ!!!!
どこの男を惑わす超S級美女だァァアアアアア!?
俺に簡単に騙されていたポンコツエルフ女をどこにやったァァアアアアアアアアア。
お、堕とされるゥゥゥウウアリガトウゴザイマス!?
なんだこのS級が可愛くゴネるような超絶美女エルフでしおらしく甘えるようなわけが分からん、それでいて脳髄をやられそうで超絶可愛い生き物は!
俺は混乱する頭を覚まそうと酒を
人間動揺するのが1番いけないクールにいこう、クールに。
安易に手を出したら、ケツの毛をむしられるのは経験上知っている。
アレェ? 何が起きた?
なぁ、誰か説明出来る奴居るか?
まるでエルフ女が俺の愛人みたいじゃないか。
アレ? そういえばこのエルフ、俺の嫁じゃなかったっけ?
そのまま酒なのか、なんなのかよく分からないモノに脳みそをやられた俺は気付けば朝になっていて、とっても『疲れ切った身体』でベッドに横たわっていた。
何がとは言わないが、とてもスッキリもしている。
夢だったか……。
隣で普通にエルフ女が満足気に一緒に寝ていたが、とりあえず色々と夢だったことにした。
「で? 結局、何をしようと言うの?」
昨日の精神ダメージが冷め切らぬ俺と何やらスッキリした表情のエルフ女。
今、俺たちは空き家の前に机を置き、通りの前を行く人にビラを渡している。
「この建物の中に『モヘモへヘモグロビン』という聖なる魔獣が居る!
さあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい!
なんと今ならオープンセール銅貨30枚で良いよ!」
エルフ女も一緒にビラを配る。
そして感情の欠落した美しいお顔で、また一言。
「で? 何をしようと言うの?」
「路銀を稼ごうと思ってな」
ただでメシは食えないんだよ。
俺の返答を聞き、エルフ女は何故かそのまま無言になり、またビラを配る。
そして呆然としたように。
「王様ってただでご飯を食べられない身分だっけ……?
1番対極に居る存在じゃなかった?」
そうね、それでキミは王の妃の1人だね。
城で優雅に暮らす立場だね!
最後にエルフ女はポツリと、常識ってなんだっけ、と。
さ、さあ? 王様になってみたら分かるんじゃないかなぁ……(声震え)
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