第16話話ゴンザレス王、ぶっちゃける⑤

「まあまあ、落ち着け」

「こ、れ、が、落ち着いていられますか!?」

 ソーニャちゃんはその場で地団駄を踏む。

 自由な公爵令嬢だなぁ〜。


 見てみろ、ツバメちゃんとナリアちゃんなんて空気じゃないか。

 キョトンとしてるぞ?


 ナリアちゃんと目が合う。

「アレス兄様は……詐欺師なんですか?」


 あ……。

 俺はぎこちなく目を逸らした。

 カレンと目が合う。

 たはは、と苦笑いされた。


 イリスに目で助けを求める。

 ため息を吐かれた。


「アレス様は以前は詐欺師と名乗っておられましたが、今はエストリア国と元ゲシュタルト連邦王国の王に御座います」


 ナリアちゃんはカッと目を見開く。

 あれ〜?

 もう詐欺師じゃないけど、ダメ?


「王、様?」

 ナリアちゃんは小首を傾げる。


 やっぱりこの娘も可愛いよなぁ〜、是非ともTS薬を手に入れなければ。


「エストリア国と元ゲシュタルト連邦王国の王様」

 俺は自分を指差す。


「詐欺師は?」

 また小首を傾げられる。


「元詐欺師」

 俺は自分を指差す。


「世界最強No.0?」

 ナリアちゃんが俺を指差す。


「誤解誤解」

 俺は手を横に振る。


「誤解じゃない、誤解じゃない」

 ナリアちゃんと俺を除く全員が手を横にフリフリ。


 1番の誤解だよ!?


 ポカ〜ンとするナリアちゃん。

 可愛ええなぁ〜。


 ゴンザレス、男の娘でも良いんじゃね?

 ユー、目覚めちゃえよ!

 俺の中の何かが言っている。


「王様?」

 ナリアちゃんが俺を指差す。

 俺が頷く。


 俺を指差した状態でワナワナ震えるナリアちゃん。

 ……そして。


「エエエェェェエエエーーーーー!!??」


 うるせぇ。


「な、何で王様があんな森の中で1人でウロウロしてたんですか!?」


「あの時はまだチンケな詐欺師だったからだよ」

「いえ、アレス様はあの頃から世界最強でしたよ」


 イリス、だまらっしゃい!

 あの頃、俺は何もしてないじゃないか!

 お前と一緒にケーリー侯爵を詐欺に掛けただけだろ!?


「何で王様が今もふらふらしてるんですか!?

 え!?

 じゃあ、今、私の目の前に居る妊婦の方、誰なんですか!?

 帝国とかカレン姫とか、仰っておりましたが……?」


 ナリアちゃんはカレンの方を向く。

 え? 今更?


「帝国皇女、元帝位継承権第5位カレン姫。

 んで、俺の嫁の1人」


 今まで分からずに一緒に居たの?

 まあ、一般人が普通にこの場に居る自体が想像つかんわな。


 またナリアちゃんはワナワナと震え出す。

 そして……。

「うぇぇええええ〜ん……」

 大泣きした。


 エエエェェェエエエーーーーー!!??


「どどどどどどどどどど、どうしたの!?

 ナリアちゃん!?」


 ナリアちゃんはツバメちゃんに抱き付き、マジ泣き。

 ツバメちゃんは顔をへにょっと困った顔をする。


「そうだよねぇ〜、ここまで追いかけて来た好きな人が雲の上の人だったなんて、詐欺みたいだよね〜」


 ええええええええ!?

 詐欺してないのに詐欺したことになるの!?


 時々、国がどうとか話していたのに気付いてなかった!?

 まあ、本当に王様だとは思わないよなぁ。


「え!? これ、俺が悪いの?」


 全員からジト目。

「悪いわよ!」

「誤解しても仕方ないかと」

「アレス様は、いつもそのような感じかと」


 俺はワタワタと言い訳する。

「ナリアちゃんは俺の嫁予定なんだけど……ダメ?」

 全員がナリアちゃんを見る。


 ナリアちゃんはグスグスしながら。

「本当に?」

「本当、本当。TS薬が手に入ったら、すぐにでも……」


 ナリアちゃんはまた大泣きした。


「TS薬って、王様でも手に入れられない秘薬じゃないですかー!!

 やっぱり私、捨てられるんだぁぁあああ!!」


 捨てる以前に拾ってねぇぇえええ!!!


 口に出すとエルフ女のように、このクズがと言われるのは間違いなしなので、何も言わずに俺はワタワタするだけ。


 だが助け舟は意外なところから。

「ナリアさんは女性かもしれません」

 そう口にしたのは、何かを考える素振りを見せるカレン。


 さっきも医術師を勧めてたね?

 このカオスをなんとか出来るならなんとかして?


 ゴンザレス、いつも人任せ、それが俺


「両性具有という言葉があります。

 ナリアさんはそれの可能性があるかと。

 つまり女性ではありますが、男性のそれが付いている症状です」


「ふえ?」

 ナリアちゃんは泣き止み、そんな声をあげる。


 可愛いな、おい。


 カレンは自身のアゴに手を当て、まるで有能探偵にように。


「そもそも、アレスさんが女性と男性を見誤るということがあるのでしょうか?」

 前言撤回、根拠そこか!?


「アレス様が見誤るということはないでしょうね」

 何故かそれに答えるイリス。

 どういう理屈で言ってんの?

 見誤ってばかりよ?


 見誤って王様なんてなっちゃったのよ?


「アレス様は勇者のキョウも、その本質が女性であることに気付いておられました。

 ナリアが少なからず、その心根が女性であることは間違い無いでしょう。

 さらには我々が見てもナリアは女性にしか見えません。

 つまり、外見は完全に女性的であると言えます」


 そこでソーニャちゃんが俺にとって、致命的な一言。


「貴方が男だろうと女だろうと嫁にすると言えば、良いだけじゃないの?」


 男でも……だとぉぉぉおおおおお!?

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