第13話【序章の詐欺】とある部族のゴンザレス裏話

 世界最強と呼ばれる存在がいる。


 曰く、全てを見通す千里眼を持つ大軍師。

 曰く、万の敵すらも打ちのめす大将軍。

 曰く、病の悉くを治療して人を救う聖者

 曰く、最強にして無敗、世界の叡智の塔に刻まれるランクNo.1も超えた最強ランクNo.0


 だが、その正体は一切不明。

 男か女かオカマか、年齢も不詳なら、生まれも公爵家の捨て子だとか転生者とか生まれながらの救世主だとか、数え上げたらキリがない。

 それら全てを合わせて、誰も見たことがないという。

 それが、世界最強ランクNo.0


 だが、とある詐欺師はかたる。

 元々そんなのいねぇよ、と。



 帝国の金でエストリア国の娼館で大豪遊して、ソーニャちゃんに追い出されるようにエストリア国を後にした。


 ソーニャちゃんとのキャイキャイした旅は楽しかった。

 ラッキースケベしまくりで。

 間違いなくセクハラで逮捕ですね。


 でまあ、情報ってのは、千差万別せんさばんべつ、求めてる情報以外も手に入る訳で。

 例えばこんな話を聞いた。


 魔獣が増えているそうだ。

 最近、娼館に来たばかりの娘でケニーちゃん(源氏名)が言っていたことだ。


 魔獣は1000年前、魔王が残した負の遺産であり、魔獣と野生動物とで自然繁殖もする。

 今でも地方の街や村は被害を受けており、各地でも冒険者なる自由業が活躍している。


 特に大きな産業もない国、例えばエール共和国などは冒険者の国と呼ばれ、ギルドランクシステムもそのエール共和国の発案で一気に世界に広まった。


 代表的なのはキョウちゃんのランクSSSで、彼女だけはナンバーズに匹敵すると言われているが、現時点では匹敵するというだけで強さ自体は届いていない。


 だが自然繁殖では増えるが、爆発的に増えるのはよほどの例外のみだ。

 ダンジョンによる魔力の溜まり過ぎや、もしくは……魔王の影響。


 俺としては放置しても良かったが、どうにも興味が湧いた。


 様々な本に書かれていることは本当なのだろうか?

 検証したくなる。


 俺にはどうにもそういう性分がある。

 だから、カストロ公爵領……何故か今はそう呼ぶらしいあの領地で、色々試してしまったのだ。


 好奇心ゴンザレスを殺す、にならないように気を付けよう。


 前置きが長くなったが、これまでのことを何故思い返しているかと言えば……。


 木の棒に括り付けられて、周りを原住民族らしき腰ミノだけ巻いた裸の男たちに回られている。


 こ、これが噂の走馬灯か!?


 要するに大ピンチだ!!

 暗黒の暴龍に追いかけられたり、ソーニャちゃんに絡んで殺されかけたりして以来の大ピンチだ!!


 俺、大ピンチばかりじゃねぇか?


 ……とまあ、色々あったけど無事に最大の危機を乗り越えて、ナリアちゃんと一緒に問題の許されない泉のそばにいる。


「なにか、分かりますか……?」


 ナリアちゃんは長い茶色の髪に、鳥の羽飾りを髪にさした年の頃なら10代後半。

 美しさと可愛いさの両方を兼ね備えたカラフルだが落ち着いた色合いの民族衣装を着た娘だ。


 族長の娘だから、部族の姫ってところか。

 依頼達成後は俺のモノである。

 来たぞぉぉおおお!!!


 俺の時代が、遂に!!!

 これほどの美少女は美しさにおいて、ナンバーズにさえ匹敵すると言って過言ではない。


 そうS級美女、S級美女なのだ!


「いくつか試さないといけないが、大体掴めた。

 あとは俺に任せておけ」


 キラキラとイケメンフェイスの俺。


 両手を組み、ぽ〜っと俺に見惚れるナリアちゃん。

 その華奢な身体をそっと引き寄せる。


「あ……ング」

 唇を奪っておいた。


 さらにぽ〜っとする美味しそうなナリアちゃんを頂くのは、楽しみに取っておくとしてまずはこの水だ。


 特定の場所の特定の魔力を持つその泉はある寄生虫を呼び寄せる。

 ただし、その寄生虫は1000年前の魔王の時に消滅したとされている。


 魔王が人々を滅ぼそうとした時に発生させた疫病の元が、その寄生虫だったと古い文献の中にあったのだ。


 その寄生虫が湧いている可能性がある。

 それはつまり……魔王復活の前兆。


 どういう意図か、世界から魔王に関する……いや、1000年前のことについての書物が失われているのだ。


 世界各地の本を読み漁っている俺ぐらい。

 つまり、現状を本当の意味で把握している人間が俺以外いないときた。

 ただの詐欺師には、荷が重いどころではない。


 寄生虫は目に見えないほど極小で、いくつかの薬剤を混ぜ合わせて確認する。


 ちなみにこの泉の水を濃縮して配合すれば、ある程度のレベルの魔獣を呼び寄せることも、反対に遠ざけることも可能な薬品が作れるはずだ。


 ナリアちゃんに頼んでこの周辺にある薬草やら道具やらを頼む。

 意外と森の中でありながら、道具が揃っている。

 商人は頻繁に来ているのだろう。


「僕にお任せ下さい! アレスお兄様」

 可愛い笑顔で自身の無い胸を叩く。


 うんうん、美少女にお兄様呼びされるのは悪く無いどころか、大変良い気分だ。


 薬品を調合して煮詰めて、それを小瓶につめて蓋をしていく。


 その間にナリアちゃんに色々な話をする。

 話のネタは豊富だ。

 失われた亡国の姫のお話、暴れるブラックドラゴンの話、邪教の話、そして、女の子になった勇者キョウちゃんの話。


 ナリアちゃんは勇者に憧れがあるのか、キョウちゃんの話を殊更ことさらに聞きたがった。


「僕の勇者様はアレスお兄様です!」


 そう嬉しそうに言うので、お兄様はその場で鬼畜になって襲い掛かりたいと思ったが我慢しました、ゲヘヘ。

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