第150話ゴンザレスVS世界最強No.0①

 世界最強と呼ばれる存在がいる。


 曰く、全てを見通す千里眼を持つ大軍師。

 曰く、万の敵すらも打ちのめす大将軍。

 曰く、病の悉くを治療して人を救う聖者

 曰く、最強にして無敗、世界の叡智の塔に刻まれるランクNo.1も超えた最強ランクNo.0


 だが、その正体は一切不明。

 男か女かオカマか、年齢も不詳なら、生まれも公爵様だとか、転生者とか、生まれながらの救世主だとか、魔王を指先一つで討伐したとか、数え上げたらキリがない。

 それら全てを合わせて誰も見たことがないという。


 それが世界最強ランクNo.0。



 どうも〜、アレスです。

 詐欺師です。

 ゴンザレス様と何処かのS級ナデシコ美女娘が呼ぶので、ゴンザレスも悪くない気がしてます。


 現在、船の上で釣り糸垂らしております。

 今回はちゃんと客なので掃除夫ではありません。


 驚いたことに前と同じ船でした。

 元同僚にモップ渡された時は思わず掃除してしまいました。


 なんでやー!!


「て、てめぇ……、美女のツレが1人増えてやがるじゃねぇか」

 前回の船乗りチームも顔を合わせました。


 一際体格の良い男に男泣きされました。

 気持ちは分かるがすっごく気持ち悪かった。


「あんた、ゲシュタルト好きよね?

 ゴンザレスと呼ばせてるし」


 そうかな?


「里に居る時も、お名前はゴンザレス様と名乗られましたね」


 う〜ん、里の時も意識してのことじゃ無かったが、古き良き田舎みたいに感じてるのかも?

 後、詐欺ってないから居心地が良かったか?


 あの牧歌的な感じが癒されるのだろう。

 ゴンザレス、都会に疲れたのよ。


 あとゴンザレスで呼ばせるからって特に信用しているとかじゃなくてよ?

 里でもゲシュタルトも入り込む時は殺されかけたし。


 ま、何処であろうと長く居たら、どうせ金でも盗んで逃げ出してただろうけど。


 今回は客なのでそんな感じに話しながら酒飲んで釣りしてたら、船酔いした。


 船が停泊したので降りて荷物にもたれて地面を満喫してたら、気付かれずに船が出港した。

 なお政情不安定のため、次の船の予定は無いそうで。


 こうして、また1人旅となった……。


 とりあえず、歩いてゲフタル方面に進んでいくつか山を越えた。


 そして、小さな山間の町に着いた。

 ここ何処?


 とりあえず情報収集には酒場である。

 本日の宿も取らねばならぬ。


 酒場のミレイちゃんに聞くところによるとグリノアの端らしい。

 特に目的もないので久しぶりに誰かを詐欺にかけてしまおう。


 ピンッと俺のレーダーが反応。

 S級発見。


 ローブを被ってはいるが、大人っぽい色気のある顔が伺える。

 少し紫にも見える変わった髪を前に少し垂らしている。

 それがまた大人の色気を感じる。


 やはりゲシュタルト連邦王国は美女が多いな。


 ふむ? 誰も男が近寄っていない。

 俺はカウンターに座りブランデーを注文。

「へい! マスター。

 あそこの美女にどうして誰も声をかけないんだ?」


 ヒゲマスターはブランデーをトクトクと注ぎ、俺を一瞥いちべつ

「あんた、他所よそもんか

 あれは星見の里の女王様だ」

「星見の里?」

 魔法の元祖だと主張する占星術とやらを使う集団だという。


 星を見て進むべき道を探ると主張するので、グリノアの首脳部とは相入れず一種グリノアの中でも別部族のような扱いを受けている。


 女王は時々、ここにフラッと現れて誰かを待っているんだとか。


 ふ〜ん、という感じだ。

 S級美女の気配はあるが、関わらないのが無難だな。

 クイッとブランデーを飲む。

 さっさと立ち去ろう。


「邪魔するよ。マスター、このお兄さんに私からも一杯」


 マスターは黙って俺のコップにブランデーを注ぐ。


 お〜い! 明らかな地雷が向こうから来た!

 地雷は普通、自分で歩いて近寄って来ないはずなのに!


「ふふふ、乾杯」

 隣に来た美女が俺のコップにカツンと自分のコップを当てて、妖艶な微笑みをローブの中で見せる。

 ふおー、隣から良い匂いが〜!


 それを誤魔化すようにクイっとコップをあおる。


「いい〜飲みっぷりねお兄さん……。

 マスター、もう一杯、お兄さんに」

 ヒゲマスターは黙って俺のコップにブランデーを注ぐ。


 俺はそれをかたむける。

 良い匂いのする大人の美女の隣で飲む酒は実に良い。


「ふふふ、ゲシュタルト王都が救われた日に、星が流れたわ。

 宿命の星がささやいたの」

 美女はまた妖艶に笑う。


 言ってることはよく分からん。

 電波なるものを受信中かしら?


 S級美女だから、まあいいか。


 ……。


 目覚めると裸だった。


 バタンッと部屋の扉が開く。

 スキンヘッドのいかにもなオッサンマッチョ。

「くおらぁああ! 貴様、誰の女に手出したとおもってやがんだぁあああ!!!!」


 や、やっちまったぁぁぁああああ!!!!

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