第151話ゴンザレスVS世界最強No.0②

「……とまあ、それは冗談なんだが。

 起きたようだな」


 俺は一足飛びで窓に足をかけて、飛び降りる直前の体勢で振り返る。


「お酒こぼして、自分でパージとか言って服脱いでたわよ?」


 スキンヘッドの後ろに腕組みした妖艶な美女が居る。

 フードこそ被っていないが、昨日見たS級美女だ。

 俺は恐る恐る確認する。


「ケツの毛……。

 抜かない?」


「ケツ、の毛?

 そんなの抜かないけど……抜けるの!?」


 そうか、知らないか……。

 それなら、良いんだ……。

 世の中には知らなくて良いことが沢山ある。


 その中の最重要機密がコレだ。


 俺はベッドの横に散らかっていた服を、ビクビクしながら一枚ずつ胸に抱えながら集めてからベッドの影で着ていく。


 そして、黙って見守っていた2人にキリッと顔を向けた。

「俺に一体何のようだ?」


「それを見ていた私たちは何を言えば良いのかしら?」


 見なかったことにして下さい。


 部屋を見回すが取っていた宿ではない。

 ベッドがあるだけの殺風景な部屋だ。

 残念、泊めてもらえるなら宿なんて取らなかったのに。


 妖艶美女は呆れた様子でこちらを見ている。

 隣のスキンヘッドマッチョは旦那であろうか?

 手を出さなくて良かった。

 本当に良かった!!


 危うく、樽に入れられて埋められるか、海に沈められるところだった……。


 世界の叡智の塔が不思議パワ〜を放ち出して、俺の我慢があまり効かなくなっている。


 恐るべし! 世界の叡智の塔!

 本当だよ?


 そうでないと、いくら何でも帝国の皇女様に手を出したりしないよ?

 本当だよ!!!!


 あ、考えたら恐怖で寒気が……。

 来るぅうう……、皇帝陛下が大剣持ってしばきに来るぅうう。


 おっと、ここはゲシュタルト連邦王国だ。

 いくらなんでもここまで来ることはないから大丈夫なはずだ……、多分。


 青くなったり震えたりする俺を見て、妖艶美女はため息を一つ。


「星が貴方を呼んだのよ」

「お邪魔しました」


 なんだ、宗教の勧誘か。

 そんなのは何処かの邪教で間に合っています。


 ワタクシ、それの教祖様でしてよ?


 アレスは逃げ出した!

 しかしスキンヘッドに掴まれた!

 逃げられない!!


 万事休す!!!


「まあ、ゆっくりして行けよ」

 スキンヘッドの説得!


「ご遠慮します!」

 だが、断る!


 まあまあと言いながら、スキンヘッドは俺をぶら下げてベッドに置く。


 妖艶美女が胸元からどこかで見たスイッチとマーカーを取り出す。


「これのお話もあるからねぇ」

「それ今すぐ渡してもらって良いですか?いえ、ちょっと触るだけで良いので」


 いえ、スイッチとマーカーは要らないですが、今だけそれに触れたい気分でして。

 美女の温もりがある内に!!!


 ふふふ、と妖艶美女は笑う。

 朝見ても色気があります、お姉様。


「どうしよっかなぁ〜?」

「少し触った後は好きにして構いませんから、少しだけ……。」

「へぇ〜……。

 少し触ってどうするのかしら?

 スイッチでも押すの?

 聖剣発動スイッチの」


 ご存知でございましたか。


「いえいえ、流れで持ったままだっただけなので……金貨20000で如何でしょう?」


 スイッチとマーカーを眺め妖艶美女は言う。


「本物ならその価値は有るわよね。

 例えば……星見の里を壊滅させるとか?」


 ……なんですと?


「さて、吐いて貰いましょうか?

 何の目的で私たちに近づいたの?」


 俺は首を傾げる。

 連れて来られただけだけど?


 スキンヘッドが妖艶美女を見る。

「ミランダ?」


「ええ〜!?


 だって星見の夜にマスターに私たちの話を聞いて、即座にブランデーを一気に飲む。

 接触した星見の者の酒を勧められたら、それも即座に一気に飲む。


 これが私たち星見の者への接触のための合図じゃない!」


「いや、知らないから」

 妙齢美女が突然、若い娘のように狼狽した。


 見た目と年齢が違う?

 大人っぽく見せていただけか?

 どうやら、詐欺の一種に引っ掛かてしまったようだ。


 俺としたことが!

 妖艶美女だと思ったら、中身は若い娘の妖艶娘だった!!


 ……なんの問題もないな。


「じゃ、じゃあ!

 貴方はナンバーズだったりNo.0だったりしない?」


「違います」

 断固として否定させて頂く。


「ど、どうしよー、セバスチャン!

 この人嘘ついてない!

 星見では救いの主が現れるって出てたのに!!」


 星占いは参考にしたとしても人生の指針にしてはいけません。

 占いは占いで予言ではありません。


 予言は予言で99%詐欺です。

 俺が占うと100%詐欺です。

 ご注意下さい。


 そして、昨日の妖艶な雰囲気は何処へやらすっかり年若い娘がそこに居る。

 S級美女は変わらないけど。


「では、貴様は何者だ?」

 何者と言われても……。


「旅の者としか……」

「嘘よ! チンケな詐欺師にしか見えないわ!」

「ソ、ソンナコトナイヨ?」


 俺が必死に否定すると即座に妖艶娘が叫ぶ。

「この人、詐欺師だァァアアアアア!」


 な、なんでバレる!?

 嘘を自然と見破る力があると言うことか!?

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