第152話ゴンザレスVS世界最強No.0③

「どうしよー!?

 やっぱり里が……、里が終わっちゃう!

 なんとかしないと、なんとかしないと!」


 やっぱりってなんだ?

 よっぽど酷い状況なんだな、早く逃げよう。


 そこで妖艶娘はピタッと動きを止め、こちらをギョロっと見る。

 ちょっと怖い。


「貴方……もしかして、指揮経験とかあったり……、しませんか?」


 なんで突然、丁寧語?

 まあそれはともかく……。


 はっはっは。

 普通、詐欺師が指揮経験なんてあるわけが無い。


 ……だが、俺には何故かある。

 何故だ!?

 俺の詐欺人生に何が起きているというのだ!


 そっと目を逸らす。

 純粋そうなその蒼い目を見てはいけない。

 目を逸らすのよ、ゴンザレス。


「あ、あるわけない……」

「あるんだ!?」


 妖艶残念娘が妖艶さを吹き飛ばし、飛び付いてきた。

 一発でバレた!


「セバスチャン!

 この人、指揮出来る人だ!

 じゃ、じゃあ!! 劣勢の状態から戦況を覆したりとか出来たりするんじゃない!?」


「ば!? そんなことあり得るわけが……」

「出来るんだぁぁあああ!!!!!!」


 しまったぁぁああああ!!!!!

 いつものように誤魔化そうとしてしまったぁぁああ!!!!


「もしかして、もーしかーしてー!!

 それこそナンバーズとか魔王みたいなの撃退したことや、大量の魔獣から街を守ったり、逃げ切ったりしたことまであったりする!?」


 な、なんでそんな的確な質問なんだ!?

 肯定も否定も出来ん……、ならば!!!


「イイイ、ノゥ」

「あるんだぁぁぁああああ!!!!!!」


 なんでこれでバレるんだぁぁあああ!!!


 妖艶娘はニヤリと笑う。

「私、星見の力で本当か嘘か分かるんだ」


 な、なんて詐欺師殺し……。


 ゴンザレス最大の危機。

 さらに追及を受けてゴンザレスの名前も……バレました……。


「やった! やったぁあ!

 これで里が救われる!

 救われるったら、救われるぅう!!」


 見た目と違い無邪気に飛び跳ねる妖艶残念娘。

 ガックリと項垂れる、俺。


 ……だが、まだ終わらんよ!

 勝負の神様見ていてくれ!


 隙を見て逃げ出せばどうということはない!!


「あ、報酬は私が出来ることなら『なんでも』いいよ?

 そうでもしないと滅びちゃう訳だし」


「『なんでも』ってなんでも?」

 妖艶残念娘を指差す。

 繰り返すが、この娘S級美女だ。


「『なんでも』」

 妖艶残念娘は自分の胸に手を当て深く頷く。


 ゲームセット!!

 勝負はついた。


「『なんでも』と言われれば仕方がない。

 出来る限りはしよう」

「うん。

 じゃあ、よろしくね、里長」


 ……里長?


「私、里の女王だから。

 その相手だから里長。

 当然でしょ?」


 妖艶残念娘はニコッと笑う。

 大人のお姉さんの笑みである。


 うん、分かった。


「この度はご縁がなかったということで……」

 ガシッと妖艶残念娘が全身でしがみ付いてくる。


「なぁんでよー!!!

 さっき出来る限りするって言ったじゃない!

 嘘吐きは詐欺師の始まりだよ!!」

「は、離せ! 俺、詐欺師だから良いんだよ!」


 ……結局、2つの条件で引き受けることにした。

 報酬は日に金貨1枚、成功ボーナスあり。

 ヤバいと思ったら立ち去ることも認める。

 ただし、事前に妖艶残念娘には伝えること。


 引き受けないと呪ってやると言われた。

 本気で呪われそうだから条件付けて引き受けたのだ。


 これで一応は引き受けたから呪うなよ!

 呪われないように念押し。

 女の恨みは怖いからなぁ……。


 メリッサとイリスに再会したら必死にご機嫌を取ろう。

 呪われないようにそうしよう。

 俺は堅く心に誓った。


「ところでゴンちゃん、本当にNo.0じゃないの?

 今言った条件に満たしている人なんて、No.0以外聞いたことないけど?」


「断固として違います」


 これは本当だぁ〜、と妖艶残念娘は首を傾げる。


「そっかぁ。

 じゃあ、ゲシュタルト王宮に居るNo.0がやっぱり本物なのかな?」

「ゲシュタルト王宮に?」


 No.0存在したんだな。

 もっと早くに姿を見せろよなぁ。

 それなら、俺が魔王討伐に連れ出されずに済んだのに。


 そんな訳で状況確認。

 ゲシュタルトからゲシュタルト連邦王国統一のためにという口実で、宣戦布告を受けたそうな。


 ゲシュタルト寄りの半島部に位置した星見の里が侵攻ルート真っ正面。


 グリノア本隊も別箇所で戦線を開いているがNo.0の強さに押されっぱなしで、星見の里へ援軍を回す余裕はないと通達。


 こうしてグリノア本体からは見捨てられ、星見の里への援軍は無し。


 ついでにこの度、ゲシュタルトからも怪しげな占星術なる儀式を行う里として邪教認定された。


 万の軍隊を率いる世界最強No.0のゲシュタルトVS星見の里。

 ……戦闘員300程度。


「じゃ! そういうことで!」

 妖艶残念娘からガシッと全力でしがみ付かれる。


「逃〜が〜さ〜なーいー」

「離せ! ヤバいと思ったら逃げていい契約だ!!

 こんなのヤバいどころじゃねぇ!!

 完全に詰んでるだろうが!

 明らかに里を捨てて逃げるのが最善だろうがぁぁあああ!!!!」


 俺はぁぁあああ!!!!!

 逃げるぞぉぉぉおおお!!!!!

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