第158話ゴンザレスVS世界最強No.0⑨
立てー!
立つんだ、No.0!!
立って、その後であっさりやられてくれぇぇえええええ!!!
これではまるで、まるで!!!
俺が一撃で世界最強No.0を倒したみたいじゃないか!!!!!
エルフ女みたいなジト目で見てくるな、妖艶娘ぇぇええ!!!
……なんだその目は?
ち、違うぞ!?
流れ石で当たりどころが悪かっただけだぞ!?
犯人は俺じゃない!!
俺は必死に首を横に振ることで無罪を主張する。
妖艶娘も静かに首を横に振る。
心の声が聞こえる。
『現行犯だから』
動揺している俺の耳に誰かが……ポツリと言った言葉が届く。
「本物の世界最強No.0だ……」
ポツリと言ったのに、皆が沈黙しているものだから、そんな声さえ辺りに響きわたってしまう。
それを皮切りに口々と阿鼻叫喚の叫びが轟く。
「世界最強!」
「魔王殺し!」
「ドリームチームリーダー!」
「『本物の』ゲシュタルト総司令官!」
「ゲシュタルト次期国王!」
おい、最後のちょっと待てぇいい!!
必死に第3王女に手を出すの我慢したんだからな!
国王になんかならねぇぞ!!
……ていうか、なれねぇからな!!!
万の兵が大恐慌を起こす様子を俺たちは呆然と眺めてしまう。
「鎮まれ! 世界最強No.0が何するものぞ!
そのような者、この俺が叩き切ってくれるわ!」
伯爵息子がサーベルを掲げる。
いいや、待て待て。
なんで世界最強No.0を連れて来たあんたらが、それを叩き切ろうとしてんだよ。
「いや、世界最強No.0はそちらの……」
「ええい! 黙れ、黙れぇいい!!」
伯爵息子は首を横に振り、話を聞かないと叫ぶ。
「ゴンちゃん、本物のNo.0なんでしょ?
もう正直になったら?」
妖艶娘がボソボソと何かを言う!
お、俺は認めんぞ!
本物はそちらで気絶なされているお方だ!
決して俺ではない!
「……だって、今、向こうで叫ばれてる内容って、全部心当たりあるんでしょ?」
「み、認めんぞ!」
心当たりなんてない!
絶対にないからな!!
特に次期国王なんて!
本当にそうなるぐらいなら、きっちり第3王女に手を出す!
せっかくのS級美女を血の涙を飲んで我慢したのに……あんまりだ!!!!
「あぁ……、大体分かった。
ゴンちゃんってそういうやつなのね……。」
お、俺の何を分かったというのだ!
そんなことは俺とベッドに入るまでは分かったと認めないぞ!
「はいはい……」
チクショー!
「里を人質に取れば俺が手を出せないと思ってー!」
「里を人質ってなんか違う……」
だまらっしゃい!
まるでエルフ女みたいな言い方しおって。
噂をすればなんとやらにならないかと、キョロキョロと周りを見るがエルフ女の姿はない。
普段ならこういうタイミングでは何故か姿を見せるが、やっぱりこの辺りには居ないようだ。
「えーい! この俺を無視するな!!」
サーベルを掲げたままで伯爵息子が
あ、忘れてた。
しかし伯爵息子はその場でムキーと叫ぶばかりで突っ込んで来ない。
一歩いや、半歩、足を出してみる。
……一歩下がられた。
本物のNo.0と誤解されているらしい。
このまま、お帰りしてくれないかなぁ。
起きる前に気絶されておりますNo.0様にトドメを刺したいので。
もう一歩、進む、下がる。
「がおー」
両手を広げ百獣の王のポーズ。
「ひー!」
伯爵息子殿は腰を抜かす。
おもしれー。
「坊っちゃま!!
おのれ! 坊っちゃまのカタキー!!」
従者な小太りが切りかかってくる。
いや、坊っちゃま死んでないから!
意外に素早い突撃にワタワタと俺は逃げ出す。
妖艶娘がその刃を小刀で止める。
おお! 妖艶娘が初めて役に立った!
妖艶娘が押され気味。
小太りは余裕そう。
「セバスチャン! ゴー!」
俺の合図と共にマッチョセバスチャンが参戦!
だが、それを小太りが軽くいなす。
こ、小太りのくせにつぇええ!!!
「ゲシュタルト8剣が1人、鋼のセルバンティス!
小娘や見せかけ筋肉なんかに負けん!」
ひー!
大ピンチ!
誰かー!
誰かおらぬかー!!
今、俺的最大の危機を迎えた気がする。
あれ? いつも危機だよな?
その時!! 俺の視界に何かが映る。
ゲシュタルトの大軍より、右手の高台の上。
日の光に照らされた巨大なカバ。
『ぶるぉぉおおおおお!!!!』
巨大カバは雄叫びをあげる。
……へー、カバって雄叫び上げるんだ。
上げたっけ?
「ぬ!?」
切り結んでいた小太りが妖艶娘を蹴りつけ距離を取る。
妖艶娘は蹴り飛ばされても、荒い息のままキッと相手を睨みつけ小刀を構える。
激しい動きで全身から汗をかきながら。
それが妖艶さと合わさり、えもしれぬ色気を醸し出す。
色っぺぇな〜。
今なら誘惑されたら喜んでベッドinしちゃうね!
もちろん里長にされる前に逃げるがね!
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