第159話ゴンザレスVS世界最強No.0⑩
カバは大軍に向けて猛然と突っ込んで来た!
怒りじゃぁぁああ!!
大地のカバ様の怒りじゃぁぁああ!!!
俺はゲシュタルト軍が巨大カバを足止めしてくれている間に馬に乗り逃げる!
あばよ!
残念だが命有っての物種だ。
後方は大量の罠を仕掛けているが、人用の罠なのでカバの足止めにもならない。
カバの巻き添えになってしまえ、と小太りたちのそばを馬で走り抜ける。
「むむ!? 逃すか!」
小太りが反応する。
反応せんでいい!!!
あっちいけ!
だが、そのタイミングで巨大カバは更に雄叫びを一つ、地面が揺れた。
巨大カバの目が光った!?
すると周りに居た兵が吹き飛ばされる。
な、なんだとー!?
そして、さらに加速して……こ、こっちに来やがったぁぁあああ!!!
カバの突進で地面が揺れ、なかなか思うように逃げられない!
さらには意識を取り戻したNo.0が目を覚まし、サッと起き上がりカバの前に武器を構え立ちはだかる。
「俺様を誰と心得る! 世界最強!
その名を!」
プチッと、巨大カバに踏まれる。
巨大カバが突っ込んで来てるのに名乗ってんじゃねぇぇええ!!
戦場は大混乱。
大軍だったゲシュタルト軍も右往左往しながら散り散りになっていく。
何故か俺の後を追ってくる巨大カバ。
妖艶娘がハンカチを振っているのが見える。
妖艶娘覚えてろよ!
次は必ずベッドに連れ込んで、里長にもならず逃げ切ってやるからなぁ!
というか、日当よこせ!!
内心でそう叫びながら必死に馬を走らせた。
馬で走りやすい道を優先すると、自ずと道は限られた。
まるで何かに誘導されるようだ。
これぞ、運命って……関係あるかぁぁああ!!
俺は三日三晩走り続けた。
馬!?
前に魔獣に追いかけられた時と同じで、途中で逃げられたよ!
途中で進軍中のグリノア軍がいたがカバに蹴散らされた。
とんでもなく強ぇえんだ、このカバ。
途中のそんな足止めにも、なんのその!
カバは真っ直ぐ俺を追ってくるんだぁぁああ!
カバの欲望が俺に向いているからってことだろうが、納得できるかぁぁああ!!
そして、ついに……。
世界の叡智の塔のあるグリノア中心部に。
世界の叡智の塔の裏に素早く回り込むが、カバは気にもせず世界の叡智の塔に突撃。
崩れ落ちる世界の叡智の塔、その向こうに巨大カバ!!
腰を抜かしてしまった俺。
カバはゆっくりと俺に近づき……その大きな口を開き。
パクッと。
俺の服を口で器用に掴み、ぽ〜んと空中へ放り投げる。
空中3回転捻りをする俺。
ああ……空は青かった。
ぽすんという感じで、カバの背中に乗せられ、俺は何処かへ運ばれて行くのであった。
ああ……カバよ、何処へ行く……。
その日、ゲシュタルトの万を超える大軍が僅か300のグリノアの星見の里に敗北し、同時にグリノアにあった世界の叡智の塔が破壊された。
それを成したのは誰あろう、本物の世界最強No.0。
それまでグリノアを散々叩きのめしていたゲシュタルトの偽No.0を一撃で仕留め、その圧倒的な強さを見せつけた。
それだけではない。
No.0はかつて誰もなし得なかった、ある現象を引き起こした。
それは魔獣を操ること。
兼ねてより噂はあった。
ゲフタルにてドリームチームを撃退した時も、ゲシュタルトの王都を救う際も、あろうことか魔王討伐時も。
そしてついに魔獣、いや聖獣と共にグリノアにあった世界の叡智の塔を破壊した。
これによりゲシュタルト連邦王国に広がっていたゲシュタルトの野心から始まった戦乱は、王国全土で大火となる前に急速に収束することとなる。
世界の叡智の塔を破壊したNo.0。
残る世界の叡智の塔は一つだけ。
最後に残された世界の叡智の塔。
そこにNo.0の名は、ない。
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