第135話逃亡者ゴンザレス①
世界最強と呼ばれる存在がいる。
曰く、全てを見通す千里眼を持つ大軍師。
曰く、万の敵すらも打ちのめす大将軍。
曰く、病の悉くを治療して人を救う聖者
曰く、最強にして無敗、世界の叡智の塔に刻まれるランクNo.1も超えた最強ランクNo.0
だが、その正体は一切不明。
男か女かオカマか、年齢も不詳なら、生まれも公爵様だとか、転生者とか、生まれながらの救世主だとか、魔王を指先一つで討伐したとか、数え上げたらキリがない。
それら全てを合わせて、誰も見たことがないという。
それが、世界最強ランクNo.0
どうも〜アレスです。
荷馬車でのんびり旅です。
いえいえ仕事中なんですがね。
今、最大のピンチです。
「へっへっへ、有り金全部出しなぁ」
3人の汚いオッサンに刃物を突きつけられて囲まれております。
通常、この手の盗賊にはパターンがありまして。
1つは、地域密着型。
地域を牛耳る一族などが土地を無断で通る者に対し見せしめに盗賊をする。
この場合、案内人をつけたり挨拶を怠らなければ、むしろ旅の安全を保証してくれる。
そしてもう1つは、根こそぎ奪うタイプの盗賊。
村が冬の時期に収穫代わりに人を襲う村人型もこのパターンだったり、隣の国の村や町を襲う略奪型もこれだ。
これの問題点は交渉が通じないことが多いこと。
奪うことが目的だからだ。
前にあった棟梁たちは前者で今回は後者である。
どうする! どうするー!!!
やべぇやべぇええ!!!!
アレスがいつも通りピンチを迎えていた頃。
エストリア国、怪物と呼ばれたグローリー元宰相はどうしてこうなったのか分からずイラ立っていた。
兼ねてより計画していたクーデターが思うように進んでいない件だ。
そもそもでいけば、レイド皇国を滅亡させる時から計画していたことだ。
頂点に立ちたい。
王となりたい。
裏の権力者としてだけではなく表の頂点としても。
これ以上、愚王に仕える人生など我慢ならん!!!
権力を得ることは容易ではない。
前段階の宰相に上り詰めるだけで、何十年と掛かってしまった。
これでは王になる前に寿命が来てしまう。
欲望は妄執となり更なる欲望を生み出した。
勇者召喚を使い邪神の力を利用してでも。
その欲望が増幅されることになった要因に、世界の叡智の塔が関わっていることに気付くことはない。
その勇者召喚の秘術の秘密がレイド皇国にあった。
1000年を超える昔、正邪の戦いがあったという。
それは神々の代理戦争?
勇者と魔王の戦い?
やがて邪神は封印され次元の彼方へ。
だが邪神の力を得た者は多くの恩恵があった。
それは別の神話における天使と悪魔の関係に似ている。
悪魔は契約により人々に力を与える。
だが、天使は奇跡は起こせど何も与えはしない。
グローリーがどちらを選ぶか明白だった。
計画は順調であった。
レイド皇国は滅び、勇者召喚以外の秘術はグローリーの手の中にあった。
全てとは言わないが世界の叡智の塔を使い邪神の力を操る手法も。
エストリア国でも怪物と呼ばれ宰相の地位は不動の物となり、多くの優秀な者を自陣に引き込んだ。
狂い出したのはいつからか。
魔王も邪神の出現も、予想外ではあってもグローリーの栄光へと繋がっていたので何も狂ってはいない。
ナンバーズなど不要だ。
グローリーは単純な力など信じてはいない。
それはすぐに衰えるし何より人ならば後ろから刺されれば死ぬのだ。
今代の勇者召喚で呼ばれた者、キョウ・クジョウは人であった。
強くはあったが騙されやすく手段を選ばなければ容易く暗殺出来たことだろう。
そう人であるならば。
最強など、お笑い種だ。
かつての滅びた旧文明における勇者召喚の秘術で呼ばれた者は、正しく人ではなかったのではなかろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます