外伝36:世界最強ランクNo.0真実の物語7
「良いから続き読むわよ〜?」
エルフ女がそう呼び掛け、続きを読もうとする。
メリッサは次は自分の話のためか、レイナちゃんを自分の前に座らせて、やたらとニコニコしている。
ちなみにバクレースは、信じない〜信じない〜と妙な歌を歌いながら、うつろな目だ。
大丈夫か?
「……アレスさんは詐欺師、私は騙されただけ、ヨシヨシ」
最終的にバクレースが自分自身を納得させるように何度も繰り返す。
「そうだぞ〜、お城でのんびりしているとか詐欺だから気にするなよ〜?」
バクレースは無表情で俺を見て、無表情のまま顔を近付けてくる。
やだ、ちょっと怖いじゃないのよ。
わたくしホラーは好みじゃなくてよ?
「お城でのんびり出来る詐欺って、何?」
なんだろ?
逮捕されたり?
「ここって牢屋なの?」
1番見晴らしと質の良いお部屋。
うん、でも俺はここに閉じ込められてるようなものだから、やっぱり捕まったってことで良いのかな?
「ご主人様はすぐに逃げちゃいますからねぇ〜」
メリッサはレイナとねぇ〜、と可愛くそう言った。
その2人に対してもグルっと無表情でバクレースは振り返る。
こらっ!
レイナちゃんを怖がらせちゃいけません。
バクレースはすぐにごめんねとレイナに謝ってから、メリッサに恐る恐る声をかける。
「え〜っと、メリッサさん?」
「なんでしょう?」
「メリッサさんはどういう御身分のお方で御座いましょう?」
メリッサは俺の方をジーッと見て。
「どういう身分になりますか?」
真っ向から聞いてきた。
どどど、どんな御身分とおっしゃられましても、ただのチンケな詐欺師のわたくしめにはとんとさっぱり分かりませんですことよ?
メリッサはわざとらしく頬に手を当てて、困ったわぁ〜と言いながら、丁度思い付いたとでも言うようにわざとらしく手を叩く。
つまり全体的にわざとである。
「そうですね……、あっ、ちょうど良いことにこれから私とご主人様の出会いの物語のシーンからですね!
エルフィーナ、お願いしますね!」
「あいよ〜」
それを聞いてバクレースが俺の袖を掴んでくる。
「ねえ? 今、世界最強No.0でアレス皇王の話をメリッサさんとアレスさんの出会いの話って言わなかった、ねぇ?
嘘だよね?
嘘だと言ってよ」
それ、俺が嘘だと言ったら信じるの?
「信じる訳ないでしょ」
バクレースはキッパリハッキリ言い切った。
はっはっは、詐欺師を信じないのは良いことだ。
じゃあ、俺って誰よ?
「哲学ね。
私は私である、その自覚こそが自己の認識において重要であり……」
バクレースが自己逃避を始めたところでエルフ女が本を読み始めた。
現皇妃にしてレイド皇国の元皇女のメリッサ・レイドとアレス皇王が、帝国という国の命運を賭けた出来事に触れる前にこの話に触れなければならない。
そうレイド皇国が滅びた直後の運命の出会いの物語。
酷く悔いることばかりではあるが、この私、グローリーがエストリア国の宰相であった頃。
罪深いことではあるがレイド皇国の滅亡に大きく関わり……いいや、はっきりと言おう。
我が愚かな思いによりレイド皇国を滅ぼした罪に幾許かの救いを見出せるのは、やはりアレス皇王その人のお陰であった。
……そう他ならぬ、レイド皇国最後の皇女を救い出したのは世界最強No.0と後に呼ばれることになるアレス皇王であったのだ。
「ちょっと待った、ちょっと待った」
俺が本を読むエルフ女を制すると、呆れたようにエルフ女はまたぁ〜、とジト目で俺を見る。
「あんた、この時もやらかしてたのね〜。
やっぱり私に会うずっと前からやらかしまくりじゃないの」
え?
なんで?
なんでバレてんの?
メリッサを見るとニッコニッコと満面の笑み。
そう……あれは10年程前。
俺が10を越えた頃。
コルランのスラムから抜け出し、世界のあらゆる本を手に入れようと野望に燃えていた時のこと……。
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