第70話ゴンザレスと聖剣⑤

 聖剣はあっさり見つかった。


 ここまで来るのは、大変は大変だったが、特に何を邪魔された訳でもない。


 意外にも、と言うか大雑把にエルフ女が砂漠を大きく丸をしたのでビビったが、地図上で砂漠の何処なのかが分からないだけで、道順は知っていたらしい。


 砂漠移動中に、何匹か魔獣が出たが、最強クラスの3人のおかげで一瞬だった。


 俺? 見てただけだよ?


「アレス様が出るまでもありません」

 サソリの魔獣を一撃で真っ二つにしながら、No.8はそう言った。


 うん、俺が出たならそれはもう全滅してるということだ。

 そうなると俺は真っ先に逃げるので、やっぱり俺が出る可能性はゼロだ。


 砂漠の地下に入る遺跡があり、そこに入り歩くこと1時間ほど。


 ひろ〜い空間に大きな剣が直立に立っている。


 そう、立っているのだ。

 ちなみにその剣、人が持てるようなサイズではない。


 縦に俺10人分ぐらいの大きさだ。


「師匠、これはどうやって使うのです?」

 キョウちゃんが聖剣を見てそう言った。


 エルフ女はフロアをウロウロして、隅のほうにあった手のひらサイズの箱を持ってくる。


「これよ。」

 箱をカパっと開けると、中には丸い……。


「ボタン?」

 俺はそれを押そうと指を出す。


「危ない!」

 見事なエルフ女からの左フック。

 ゴロゴロ〜と3回転。


 あ、あんた……世界を狙える良いパンチ持ってるぜ?


「これを押すと剣が飛び出してしまうわ!」

「え!?

 師匠、この剣ってミサイルか何かですか!?」


 エルフ女は神妙に皆の顔を見回す。

 俺は倒れたまま。

 痛い〜。


 No.8が大丈夫ですか、とハンカチを当ててくれる。

 こういうところは良いんだけどなぁ〜。

 地雷女なんだよねぇ……。



 近寄らないようにしたい。

 ……もう手遅れだけどな!



「ミサイルが何かはわからないけれど、これこそが聖剣◯カッドミサイルよ。

 マーカーを付けた相手に飛んで来て刺さり、その瞬間、聖剣のエネルギーが放出、周囲一体を巻き込み大爆発を起こすの。


 かつてはもう一本魔剣テ○ドンがあったけど、事情により失われたと聞くわ」


「え!?

 それってやっぱりミサイルですよね?

 ……というかミサイルと言いましたよね!?

 聖剣何処言ったんですか!

 あと魔剣が消えた理由って大人の事情ですよね!?」


 キョウちゃんがよく分からないことを地団駄踏みながら訴える中、エルフ女は気にせず更にフロアをガサゴソ。

 マーカーと呼ばれる物体を持って来る。


 その後、壁にある何かのボタンをポチポチ。

 よし、と頷くと手招き。


「だから、これが聖剣だってば。

 さあ、この箱とマーカーを持って行くわよ」

「僕の知ってるファンタジーと違う……。

 ここってSFだったかなぁ……」


 思い込みはダメよ?

 ファンタジーは幻想で幻さ。

 そんなものに囚われていたら詐欺に遭うぞ?


 そもそも本にも転生してやっふーとか言ってるとそれ自体が詐欺でしたが現実である。


 キョウちゃんも現実見て生きなさいね?

 君、現時点でこの世界に誘拐されて来てるから。


 キョウちゃんがぶつぶつ言いながら、エルフ女の後について歩く。


 俺たちは聖剣(装置)をゲットした。


 行きもそうだったが、帰りも何も問題なく進む。


 十匹ほどのでっかいトカゲに囲まれた時も、3人がしゅぴっと動き、ズバズバッと解決。


 うん、やっぱり俺いらないよね?


「ずっとおかしいとは思ってたけど、やっぱり今回の魔王襲撃って変なのよねぇ〜?」


 エルフ女は唐突にそう言った。


「何がでしょう? 師匠」

「魔獣が弱すぎるのよ」


 そりゃあ、お前らにかかればな!


「ねえ、イリス。何処かで魔王の組織的な魔獣の侵攻ってあった?」


 話を振られイリスは少し思案。


「いえ、過分にして。

 せいぜいナンバーズの襲撃ぐらいでしょうか?」

「ナンバーズの襲撃?

 何それ?」


 イリスはナンバーズのNo.3、4、5、6、7が殺された魔獣襲撃事件について、説明する。


「え……!?

 ナンバーズって、イリスみたいな化け物集団でしょ!?

 殺されたの?」


 あー、そっか。

 その時はまだ、エルフ女は密林の中だったな。

 怖いお話だ。

 目立つと暗殺されるのは世の常だ。


 世界最強だろうと変わりはないので、皆さん注意しよう。

 人はクソもすれば寝なければ死ぬ。

 魔法は奇跡ではないので自然の摂理を超えるものではない。

 超えたらそれはもう人ではない。


「ええ、No.2が殺されそうになりましたが、アレス様にどうにかお止めていただきましたが」


 俺を見て、No.8がニコッと笑う。

 こ、こっちに話を振るなーーーー!!!

 関係ない話と思って、心の中で好き勝手言ってたのに!


 目を見開いてエルフ女が俺に詰め寄り、襟首持って俺に詰め寄る。


(どういうことよ!

 あんたやっぱりなんか隠してる!?

 隠してるよね?)


(やっぱりってなんだ!

 隠してない!

 こいつが勝手に言ってるだけだ!)


 エルフ女に詰め寄られながら、No.8に誤解を解くように言う。


「イリス、待て!

 誤解を与えてる!

 それはNo.0の仕業って話だろ!?」


「そうですね、No.0の……あ!

 アレス様とは別人ということでしたわね」


 にっこり。


 わざとかー!

 貴様、わざとだな!

 しかも、『ということ』ではなくて別人じゃーー!!!


「え、No.0はNo.0じゃないの?」

 キョウちゃんがキョトンとした顔で俺を見る。


 火に油を注ぎやがったー!!!


 だがエルフ女は弟子の様子に逆に落ち着いたのか、呆れた目をしながら俺を下ろす。

(あんた……、No.0、カストロ公爵、詐欺師、どれ?)


(詐欺師だけ本当。後全部、誤解)


(あんたもう色々諦めたら?)


 ヤダ!!!


 エルフ女はため息一つ。


「とにかく魔王の組織的な動きが見えないのよ。

 確かに魔獣が一気に増えて壊滅する街や村が出てるけど、国が潰れたりしてないじゃない?」


「アレス様が帝国とエール共和国を救いましたから」


 No.8がまた口を挟む。

 それ、俺じゃないから。


 エルフ女はただ肩をすくめて見せる。


「それもあるでしょうけど、本来の魔王ならそれを軍隊として組織しながら行なっているはずよ?

 つまり魔王軍ってやつよ。

 今回の魔王にそういった意思みたいなものを感じないのよ」


「そう言った意思があるのが本来の魔王だと、エルフィーナはおっしゃるのですか?」


 そういうこと、とエルフ女はまた肩を竦める。


 うん、どーでもいーわ。

 大体、魔王だろうが魔獣一匹だろうと俺には同じ。


 どっちもやべーよ!





 エルフ女が、なんだかややこしそうな話をする中、バーミリオンの街が見えて来た。


 街は大量の魔獣に囲まれ、城壁で兵士たちが魔獣の侵入を防いでいる。

 街の正門付近では象に乗った裸の王太子が、激しくダンスを踊っていた。


 ……何あれ?


 なお、パンツらしき物は残っている。

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