外伝:世界最強ランクNo.0真実の章
外伝30:世界最強ランクNo.0真実の物語
ここに一冊の本がある。
かの丞相、グローリーが我が唯一の王として仕えるアレス皇王その人の物語。
そして、マークレスト王朝始まりの物語。
物語はこう始まる。
なにぶん、伝説とも言われるお方の謎めいた全てを知ることは叶わない。
それでも私は私の持てる全てを持って、かのお方の真実を語ろう。
世界最強と呼ばれる存在がいる。
曰く、全てを見通す千里眼を持つ大軍師。
曰く、万の敵すらも打ちのめす大将軍。
曰く、病の悉くを治療して人を救う聖者
曰く、最強にして無敗、ランクNo.1も超えた最強ランクNo.0
だが、その正体は一切不明。
男か女かオカマか、年齢も不詳なら、生まれも公爵家の捨て子だとか転生者とか生まれながらの救世主だとか、数え上げたらキリがない。
それら全てを合わせて、誰も見たことがないという。
俺は子供たち上に乗っかられて、半ば埋もれながら絵本を読んであげていた。
「ゴンれー! これ読んでー!!」
3歳になるカレンとの長女レイナが俺の頭に乗っかりながら、差し出して来たのがその本だった。
「何これ?」
子供たちにシュトレーゼンから持ち帰った本の中に、一際豪勢な装丁の本を見つけた。
こんな本、買ったかなぁ?
「あ、それ!
私が読もうと思って紛れ込ませた本!
なんでもこの国の王様のことなんだってー!」
バクレース、お前いつの間に……。
そ、それと君、もしかして気付いてないの?
「何がです?」
可愛く首を傾げるバクレース。
今はボサボサの髪も整えられ、軽くウェーブした金髪はフワフワで全体的な容姿と相まって妖精のような感じ。
丸メガネだけ健在だが、上質の丸メガネに代わっているので、瞳の色も綺麗に分かる。
前を知ってるからギャップが酷ぇえ!
今の姿は素直にS級美女と呼んで良い。
「ねえ、アレスさん?
何がです?
ねえ?」
そ、そのうち分かるんじゃないかな?
俺がとぼけると、バクレースは涙目で縋り付くように。
「ねえ?
何が?
そんな風に話を逸らされると余計に怖いんだけど!?
ねえ! 何があるの!?」
ローラみたいな反応だよね?
ローラもそんな感じに俺の嫁になったなぁ〜。
俺は明後日の方向を見て、バクレースから目を逸らす。
「アレスさぁ〜ん!!」
そこに絵本とお茶を持ってメリッサがやって来た。
「バクレース、気にしなくて良いですよ。
何が変わる訳でもないのですから」
いやぁ〜、どうかなぁー?
「ゴンれー! 読んでー!!」
レイナの声に合わせて、読んでー、読んでーと他の子たちも舌足らずで声を揃える。
あのね、レイナちゃん?
君たち俺をなんだと思ってんの?
「ゴンれーはゴンれーだよー?」
ゴンれーってなんだろうね?
ゴンザレスの略だろうけど。
子供たちの世話は俺が積極的にした。
子供は嫌いではないのもあるが、出来立ての国で暇だったのが俺だけだったのが1番大きい。
「いえ、決してご主人様がお暇だった訳ではないですからね?
逃げ回ってただけですからね?」
俺は目を逸らし、口笛を吹く。
そうだったけかなぁ〜?
そもそも詐欺師の俺に責任の重い仕事を任せるのが間違っている、うん、そうだ。
「……まだ詐欺師と言い張りますか」
メリッサがジト目だ。
それはご褒美よ?
「そうですよね?
アレスさん、詐欺師ですよね?
よくこんな立派なお城で雇って貰えましたね?」
そ、そうね?
人徳かな?
あ、ちょっと声震えちゃった。
「……そうですね、間違ってはいないですわね」
バクレースはメリッサがさらりと俺をご主人様呼びしたのは、聞き逃したのか、あえて聞こえなかったことにしたのか。
スルースキル凄いね……?
あとレイナちゃん?
君たちの父上は誰か分かっているのかな?
「知ってるよ〜!
レイナのお父様、王様なんだよー!
だからレイナお姫様なんだよー!
偉いんだよー!」
そうだねー。
でもいいかい?
偉いと言うことは、それに伴う義務がある。
皆がレイナちゃんを助けてくれる代わりに、レイナちゃんも皆を助けるんだよ?
守り守られ、そうやって世界は作られているんだ。
ガタッ、ガチャーンとメリッサがお茶を落とす。
衝撃のあまりに目を見開いて。
背後に落雷が落ちたような幻覚すら見える。
「ご、ご主人様が……真っ当なことを言っている……!?」
たいがい失礼だよね?
俺も子供には大切なことを言うよ?
詐欺には気をつけろとか。
「分かったー!」
レイナと子供たちは元気よくお返事。
良きかな良きかな。
それからレイナはモジモジとして、秘密ごとを教えてくれる。
「……でもね、レイナ。
見たことのない王様お父様より、ゴンれーの方が好きだよ?
秘密ね?」
モジモジ。
可愛いねぇ〜、と俺はレイナの頭を撫でる。
赤ん坊の頃からお世話してきたからなぁ〜。
俺が城を抜け出している間、泣きまくっていたらしいし。
うんうん。
そっかぁー、レイナちゃんはお父様に会ったことがないかぁー。
「うん」
そっかぁー。
俺はうんうんと頷きながら、3歳になるカレンと俺との子供である長女のレイナの頭を撫でておいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます