第163話ゴンザレスと年貢の納め時③
ひたすら古文書を読み進める俺。
特大級の死亡フラグを立てられた気はしたが、まだなんの音沙汰もない。
何をする訳でもなく入れ替わり立ち替わり、エルフ女とナユタと妖艶娘が遊びに来る。
そして、今日はついに……。
「ご主人様ぁ〜……」
書物の保管のために少し暗い書庫の入り口に、美しいが恐ろしいメリッサ・レイド。
エルフ女がとっくの昔に連絡してたらしい。
おのれ! エルフ女、図ったな!!
「ひ!」
休憩中のソファーの上で震えながら、近付くメリッサから逃げることも出来ず……。
ギャー。
……ご褒美(?)を頂いて数時間後。
「ご主人様は私のことが嫌いなんですね?
そうなんですよね?」
そんなことはありませんと、ソファーの上でしなだれかかるメリッサを
「あのね、メリッサさんや?
貴女S級美女なのにどうしてこんな詐欺師をご主人様呼びしているのかな?」
もう色々疲れ切った俺は、ついに尋ねてしまった。
なんだかんだで詐欺師であることを告げずにいたのに……バレバレだったけど。
「助けてもらったからですが?
そういう契約でしたよね?」
可愛く俺の上に乗っかったまま、不思議そうに小首を傾げる。
可愛いからもう良いかな、と思わなくもないが、訳分かんなくて怖いのでもうこの際聞いてしまう。
「カレン姫助けたの、俺じゃないけど?」
そう言うと、クスッと笑われる。
それはエルフ女ともナユタとも共通する笑い方。
簡単に言うと、分かってますって笑い方。
「助けてもらいましたよ?
カレン姫様の元に連れて行ってくれて、私ごとカレン姫様を救ってくれましたよ?」
だから、それが誤解だと……。
それを口にしてしまう前に、俺の口の前にメリッサが指を一本。
笑みを浮かべ目を細めて俺を見ている。
その仕草が色っぺぇのなんの。
そしてその後、メリッサ・レイドの本気の反撃に遭う。
「全ては誤解で私は詐欺に掛けられただけ……、ですね?
良いですよ? それで。
そうですね……ただ言うなら。
あの時、私を手に入れてそのまま逃げても良かったでしょうに。
ご主人様は契約を果たしてくれましたね。
それから森に入りましたね、万の魔獣の居る危険な森に。
知らなかった?
いいえ、ご主人様は詐欺師とご自身で謳うだけあって、市井に流れる情報収集を怠りません。
帝国が作戦中なので一般人は間違って近寄らないように、しっかり通達されてたはずです。
あの酒場でも聞いてたはずです。
むしろ、あそこでその手の情報を聞き逃すなんてことないですよ?
帝国諜報部隊直属のお店なんですから。
知ってて私を連れて行ってくれたのです。
カレン姫様の場所を知らない?
ご冗談を……。
カレン姫様がどう戦い、どう逃げるか予測していた筈です。
道中、魔獣の死骸を遠目で確認しながら、その予測地点に真っ直ぐ向かいましたね?
私が逃げる時も誘導を……こっちに来るなと言っただけだ?
そうですね。
あの油の毒の沼の前に待ち構えておりましたね。
火をつけるタイミングと隠れる木の位置、測っておられましたでしょう?
分からないとお思いでしたか?
これでもレイド皇国の直系です。
心の内を読むなど容易いことです。
それも誤解だ?
ええ、繰り返しますが、そういうことで良いですよ?
誤解のまま……ずっとお側に控えさせていただきます。
逃げられない?
今度の今度こそ、逃げないで頂けると助かります」
俺は観念せざるを得なかった。
「……それとご主人様。
詐欺師を名乗るのであれば、あの目をやめていただけますか?」
一気に捲し上げられ、体力も精神力も0なのよ、これ以上何があるというのかしら?
わたくし、もう限界よ?
「ど、どんな目で御座いましょうか、メリッサさん?」
エロい目をやめるのは無理だぞ?
あと現在進行形で『酷い目』に遭っております。
「やっぱりお気付きじゃないのですね。
私たちをお助けする時。
すっごく、すぅごぉぉおく優しい目をされるんです。
弱ってる時にあの目をされて!
あっさりと救われると、どんな鉄の女もあっさり堕ちてしまいます!
この、王女様ホイホイ!!!」
知りません!!!!
そんな目してません!
詐欺師の目はそんな目じゃないんだ!!
それは獲物を狙う目なだけだぁぁぁあああ!!!!
「それと……」
何!? まだなんかあるの!?
「いえ、これはまだ分かりませんので。
いずれにせよ、私はご主人様と共にあります。
それだけはお忘れなきよう」
怖い!!
まだなんかあるの!?
もうゴンザレスお腹いっぱい!
その時、俺は何か予感があった。
この時、ついにチンケな詐欺師に戻れないような何かが……。
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