第46話詐欺師最期の日
イリスとルカちゃんに案内されながら、コルランの王宮へ入る。
あ、衛兵のジョニーじゃん。
バグ博士のところで研究員助手してたときの飲み仲間。
俺が王として皆に囲まれながらジョニーに手を振ってやった。
するとジョニーのやつは顎が外れるんじゃないかと思うぐらいガクンと口を開けて、俺を指差して隣の同僚にどつかれていた。
そういえば、前に会った時はただの研究員助手だったもんな。
今は王様よ?
……研究員助手は逆立ちしても王様にはならないはずなんだが、なんでだろう。
今更だけど。
王宮から廊下の端にコルランの官僚たちらしき人たちが並んでいる。
そこから、ず〜っと奥の超豪華な部屋に案内されて入ると、メイドさんや執事と侍女姿の密偵ちゃん。
ドレス姿のローラや着飾った両親にハムウェイにバグ博士にパーミットちゃんに、要するに全員居た。
遅れてピシッとした有能そうな雰囲気のおじさん。
あ、前に外交の時に見たことがある。
コルラン国外相のターマハルとかいう人だ。
「陛下。この度は戴冠おめでとうございます」
この人も協力者だったらしい。
かなりの大物が寝返っていたらしい。
そりゃ、コルランも崩れるわ〜。
「時代は変わりました。
古きコルランは不要なのです。
人は前に進まねばならない。
私めはそう思います」
強い意志を持つ出来る男である。
ごめんな……俺、そこまで考えてない。
コルランのことはこの男に任せよう。
コルランの政務の責任を押し付ける相手を見つけた瞬間であった。
「しっかし、こんな簡単にコルランが崩れるならクソジジイとクソババアを連れて来なくても良かったかもなぁ」
継承権を騙る際に片棒を担いでもらう予定だったが。
「そう言うな、ゴンザレス。
俺も昔のツテを使い頑張ったんだ。
少しは役に立ったと思うぞ?」
「でも、ゴンザレス。
まさか貴方が自力で王位を奪うなんてねぇ……」
両親のツテってスラムじゃないのか?
まあ、何処から仕入れるのか分からない情報網持ってたしな。
もっとも10歳を過ぎた頃には、ほとんど関わる事がなくなってたがな。
戴冠式の段取り……と言っても言われるがままだが、その説明と風呂やら超豪華な服とか合わせ、他の有力貴族との顔合わせを済ませ、次の日。
戴冠式前に旧王と御対面。
「貴様が……」
旧王は罪人のように衛兵に捕らえられ、縛られて身動きが取れない状態。
あれ?
罪人扱いなんだな。
すんなりと隠居とはいかなかったんだな?
俺が疑問に思っていると、イリスが解答を教えてくれる。
「この男は先代王を暗殺した罪で捕縛しております。
古くから王宮に居る者から証言が取れました」
ふ〜ん、でっち上げじゃなくて本当にやっちまってたんだな。
こんな風にならなかっても、俺がその罪をでっち上げて退任に追い込んでただろうから、結局のところ一緒だったかもね。
くたびれた顔したチンケな元王を冷ややかな半目で俺が眺めていると、クソババアが優雅な足取りで前に進み出た。
本当に
スラムでどんな経験積んでんだよ。
……そう思ってたら。
「お久しぶりですね、叔父様」
クソババア……見た目には淑女の美女だが、俺の母に当たる女はチンケな元王にたおやかな微笑でそう言った。
「き、貴様は!? ソフィア!?
生きていたのか!!」
驚くチンケな元王の前にクソジジイ……こちらは着飾っても性格の悪そうだが、俺にはいくぶん劣るがイケメン顔のチンケな親父も進み出る。
「よう、オッサン。
いいご身分になったな、似合ってるぜ?」
「ガーラント……!
そうか、貴様がソフィアを保護していたのか……。
王家隠密の筆頭だった貴様ですら、もう復帰は出来まいと思っていたが」
「流石の俺もスラムに堕とされて、ソフィアを守ることでせいっぱいでな。
このままスラムでいつか野垂れ死ぬもんだとばかり思ってたぜ?」
……今更ですが、俺のパピーとマミーはガーラントとソフィアという名前だったようです。
知らんかった。
親の名前なんて興味ないし。
ところでパピー、マミー。
そこのチンケな元王の人、お知り合いでおじゃるか?
「ゴンザレスからしたら大叔父になるかしら?」
へぇ〜。
へー……。
……どういうこと?
「ククク、そうか! そういうことか!!
貴様らが自らの子を世界最強No.0と名乗らせ。
どういうツテを使ったか分からぬが、帝国とエストリア、さらにはゲシュタルト連邦までも掌握して行ったという訳だな?
直系の一族として自らこそがコルランの真の王だと認めさせるために。
昔の貴様らの仲間も同様に地獄に叩き落とせたと思っていたが……どうやらツメが甘かったようだな……」
憎々しげに2人を睨むチンケな元王。
俺は呆然とそれを眺め、周りのイリスたちは……。
あっれぇ、なんでだろう?
生温〜い目でチンケな元王を眺めている。
パピーとマミーは互いに目を合わせて苦笑いを浮かべる。
「違うのよ。
その子が勝手にやったのよ」
マミーが俺を指差す。
パピーも呆れ100%で俺を見ながら。
「言ったろ?
俺もスラムでいつか野垂れ死ぬと思ってたって。
なんでかしらねぇけど、滅びたウラハラ国の公爵になってて、気付いたら大国の王になって迎えに来やがった。
公爵ってのは要するに王族だぞ?
なんでお前、よその国の王族になってんだよ?
お前はコルランの直系の王族だぞ?」
チンケな元王が口をあんぐり開けて俺を見る。
俺も知らないよ?
……おい、待て。
詐欺にしても酷過ぎる!
元々俺は詐欺師ですらなかったっていうのか!?
コルラン王の直系って、何!?
俺、生まれも育ちもやんごとあるスラムじゃないの!?
誰か嘘だと言ってくれ!!!!!
「王の血筋かどうかは関係ありません。
ただ、正しくアレス様が世界最強No.0である。
ただそれだけのことであります」
イリスが微笑でもってそう答えると、全員が頷いた。
……違うよ?
こうして戴冠式が速やかに行われ、俺は大国3国の王となった。
……そう思ってた。
「あ、アレス様。
カレンさんより報告が来まして、帝国のバルト元皇太子が謀叛を起こそうとして捕縛。
その結果、皇太子を降ろされ、皇帝陛下よりアレス様に帝位継承をとの要請を受け受諾しました。
合わせてエール共和国やバーミリオン国などの各小国も、アレス様に臣従するとの連絡を受けました。
これにてアレス様が世界全土の覇者となられました」
う、嘘だぁぁああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!
「いえ、本当です」
チンケな元詐欺師(偽)。
世界の覇王となりました。
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