第89話ゴンザレスとゲシュタルト②

 どうもアレスです。


 商隊に紛れ込んで途中で人体実験なんてしつつ、謝礼も貰いウハウハしながら何処に行くかと言えば、灯台下暗し!


 ゲシュタルトです!


 そう、ゲフタルを威圧しようとしていた、あのゲシュタルト連邦王国の盟主ゲシュタルトの王都である。


 そんな感じで旅すること数日。

 そしてその目的のゲシュタルトの王都に到着。


 人を隠すなら森の中……ではなく人混みの王都!

 ここならヤツらにも見つかるまい。

 さあ! 夢とロマンスの夜の街に繰り出すぞ!


 夢にワクワクしながら商隊と一緒に並んでいると、城門の衛兵にこいこいと呼ばれた。


 もちろん、気付かないフリして逃げようとした。

 しかし笑顔で回り込まれた!

 やられたー!


 詐欺がバレた!?


 あれ? ゲシュタルト連邦王国で詐欺してないはずだけど?


 王都に来る前に人を実験台にしたのは、成功したから問題ないはずだ!

 失敗したら?

 ほら、失敗しても恨むなと言ってあったから大丈夫。


 連行というわけではないが、前後を衛兵に挟まれ連れていかれる。

 に、逃げられない……まさか、こんなところで最大のピンチを迎えるとは!


 だが、俺は何としても生き延びる。

 生きるぞー!!!


 あれよあれよという間に何処かへと連れていかれる。

 そして、連れてこられたのは……。


 あっれ〜? とっても豪華な建物で、高価そうな調度品のある廊下。


 不思議だなぁ、チンケな詐欺師でスラム上がりの俺が、何度もこういう感じにところに足を踏み入れたことがあるって。


 人生って分かんないね。

 はっはっは、俺、ひょっとして誰かに騙されてる?

 実はやんごとなきお方だったりする?


 うん、そんな訳ない。

 そんな訳ないけど、とんでもない所には連れてこられた。


 ここ、王宮だ。


 そして、目の前で丁寧に挨拶をしてくる人は高貴な人だ。


 戦姫と呼ばれた第3王女シュナ・ゲシュタルトっていう偉い人。

 んで、S級美女。

 なんだか詐欺に遭ってしまいそうな純粋そうな美女。


 でも何故かしら?


 目の前の美女に疑うべき気配はないのに、とあるS級美女たちと同じ香りがするのは。


 キョロキョロと周りを見回す。


 衛兵も後ろに下がって、目の前にはシュナ王女とシャキッとした強そうな爺さんの2人。

 俺の周りには他に誰も居ない。


 ゴンザレス、やっぱり騙されてる?

 ゴンザレス、貴方夢を見ているのよ!

 起きるのよ! 起きて詐欺をするのよ!


 ほっぺたつねる。

 いてぇな。


 やっぱ夢だな、うん。

 帰ろう。


 くるっと後ろを向き、スタスタ。


 ガシッと肩を爺さんに掴まれる。

 は、離せ!

 頼む、放してくれ!!


 俺はもうこんなところに、居てられるか!


「まあまあ、No.0様。

 そんなに慌てて出て行かれずとも良いではありませんか」


「ち、違う! 誤解だ! 俺はNo.0なんかじゃない! 酷い風評被害だ!!」


「まあまあ、ゲフタルとの戦いの噂を流したのが、銀髪の貴方様というのは情報が入っておりますぞ?」


 俺はガバッと土下座する。


「お許し下さい!

 仕方なかったのです!

 ゲフタルに命令されて仕方なかったのです!

 何卒、命ばかりはお許しを!」


 いやだー!

 処刑はいやだー!!


「あ、あの……No.0様?

 私たちは、むしろお礼を言おうと……」


「お礼?」

 土下座をしたまま、顔を上げる。


 後、何度も言うけどNo.0じゃないからね?

 間違わないでね?


「はい。私たちゲシュタルトはあのままならば、士気の低下が抑えられず壊滅の危機にありました。


 魔王討伐軍の方々が頑張ってくれてはいましたが、何せ戦線は広がりきっております。


 カバー出来るには限界がありまして……」


 ああ、良かった。

 これなら処刑されなさそうだな、と安心して立ち上がり、ようやく相手の顔をちゃんと見る。


 長い金髪で、どこか儚げな雰囲気の美女。

 俺のS級レーダーにもバッチリ反応している。

 戦姫というイメージはない。


 手を出したいけど、手を出すと隣の怖そうな爺さんに切られそうだ。

 さっき掴まれた時も力強かった。


 よし、処刑はないと分かったら安心だ!


「じゃ! そういうことで!」


 俺はまた彼女らに背を向け……。

 ガシッと肩をまたしても掴まれた。


「は、離してくれ……もう用は無い、はず!

 あと俺はNo.0じゃない。

 ゴンザレスだ!」


 アレスはNo.0の名前で通っている可能性があるから、ついに俺はゴンザレスの名を告げる。


「ゴンザレス様、ですか?」

 俺は覚悟を持って頷く。


 ついに真実の名を誤魔化すでもなく女性に告げた。

 ゴンザレス、ああ、ゴンザレス。


 なんか変な名前だろ?

 へへ……、笑って良いんだぜ……?


「ゴンザレス様ですね。分かりました」


 おお! これが聖女か。

 そう言いたくなるほどの輝かんばかりの満面の笑みのシュナ王女。

 ところで、聖女ってやらしく感じるの俺だけ?


 それと王女様に様付けされてる俺って結局、なんなのだろう?


 ただの詐欺師じゃなかったっけ?

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