第17話【魔王編】ゴンザレスとメリッサ裏話①
世界最強と呼ばれる存在がいる。
曰く、全てを見通す千里眼を持つ大軍師。
曰く、万の敵すらも打ちのめす大将軍。
曰く、病の悉くを治療して人を救う聖者
曰く、最強にして無敗、ランクNo.1も超えた最強ランクNo.0
だが、その正体は一切不明。
男か女かオカマか、年齢も不詳なら、生まれも公爵家の捨て子だとか転生者とか生まれながらの救世主だとか、数え上げたらキリがない。
それら全てを合わせて、誰も見たことがないという。
それが、世界最強ランクNo.0
だが、とある詐欺師は
元々そんなのいねぇよ、と。
真昼の凶行!
No.1のいたいけな詐欺師襲撃事件から数日後。
走りに走りなんとか帝国に帰って来れました。
今度は商人のキャラバンの中に紛れ込んで帰って来たよ。
商人のキャラバンは当然、関係者同士でないと参加出来ない。
何々村の何々という人に聞けば俺のこと知ってるよ、とか。
何々村のこういう出来事が〜とか、地元の人しか知らないはずのネタを言うと、その村のことを知っている人が居ればある程度信用してもらえる。
ただし、不思議なものでその当人がその場にいたりすることもあるので、そこは細心の注意が必要だ。
その反面、商人の中に何処かで見たことがある奴が居れば最高。
あ、お前、何々村の……とか言うと名前を知らなくても、向こうも俺の名前が分かっていないから、あ〜、みたいなお互いが知り合いみたいな空気になる。
とにかく、そんなこんなでなんとか帝国に入って、形見の黒曜石のナイフを妹さんに渡して美味しい報酬ゲットした、うひひ。
もうその頃には想定した通り、世界の叡智の塔に魔王の名が刻まれた。
おお、、、古き伝承は真であったか、、、と震えながら、とにかく1番近くて安全そうな帝都に移動することにした。
世界最強のNo.1が居るコルランの方が安全かもしれないが、あんな風に突然、街の中心で魔力を暴走させるという凶行に及ぶかもしれない。
奴は、イケメン紳士の皮を被った狂人だ!間違いない!!
いたいけな詐欺師をいじめおって!
魔獣からは安全かもしれないけど、俺、、、なんでかNo.0と思われてるからなぁ、、、最近は、キョウちゃんといい、すぐ切れる人が多くて怖過ぎる。
そうして、辿り着いた帝都で、可愛いメメちゃんにチョッカイ掛けながら、今後の世界の動向などゆっくり確認してから行動することにした。
「メメちゃ〜ん! 来たよ〜!」
「あー、アレスさん。今、忙しいのでまた後でー……」
なんて目を上に向けながら、昼間のガランとした店内でそう言われた。
この酒場は今はガランとしているが、夜にはそこそこ繁盛している。
お値段もお手頃、可愛い看板娘も居る。
流行らないわけがない!
奥の方で酔っ払いが寝ている。
前も居た男だ。
君、暇なの? 任務は?
なんでわざわざ、第3諜報部の酒場で飲んでるんだ、とか。
詐欺師なのにもう一度捕まったりしないの、とか思われがちだが、前回のご依頼で俺は無罪放免だ。
そもそも、詐欺師として捕まえるならその時点で捕まえるでしょ?
何より!!
第3諜報部直轄なので安いし、聞き耳立てているだけで帝国の方針を探れるし、1番は何と言ってもメメちゃん可愛いし!!
ソーニャちゃんも顔を見せないかなぁと期待したけど全く顔を見せない。
まあ、普通、こんな街の一般人向けの酒場に公爵令嬢が現れる方がおかしいのだ。
しかし、この店だけではなく、他の店も
「魔王、魔王ねぇ〜……」
現在、世界は魔王の脅威に
1000年前に多大なる犠牲を払い討伐した魔王の復活である。
興味はないし関わりたくもない。
ところが魔王について分かっている人が殆ど居ない。
殆ど居ないために、世界の最高戦力ナンバーズの半数が殺された。
流石においおい、と思ってしまった。
特定の場所の特定の魔力を持つナリアちゃんのいた村のその泉は、ある寄生虫を呼び寄せる。
ただし、その寄生虫は1000年前の魔王の時に消滅したとされている。
魔王が人々を滅ぼそうとした時に発生させた疫病の元が、その寄生虫だったと古い文献の中にあったのだ。
その寄生虫が湧いた。
他にもいくつかの前兆と共に、それを魔王復活の前兆ではないかと疑った。
だから、俺は念のため魔力で見知ったナンバーズの半数を魔王の標的から外した。
そうしなければ、アイツらも危なかったのは間違いない。
後、No.8の小娘美女だし、ちょっと勿体ないかなぁと思ったのもある。
帝都内では魔王や魔獣に対しての情報を酒場や娼館、時には中央市場の果物屋のおばちゃんと雑談しながら集める。
関連書物はある程度頭に入ってるしね、今は安全第一。
魔王が討伐されるまで何処かの金持ちの屋敷にでも転がりたいなぁ、というのが本音。
戦争と同じで貧乏人は食うのにも困るだろうけど、金持ちや有力貴族なら食べるのに困らないからね!
帝都にやって来てしばらく……。
日ごとに娼館でよく鉢合わせていた兵士の顔を見なくなっていく。
「お?
最近、あいつ娼館で見ないけど、どうしたん?」
「あー、あいつ第二部隊の兵士だろ?
招集されたよ。近々、ダレム辺りで大作戦があるとか言ってたな」
こんな風に人相手の戦争ではないから、情報統制はそこまで神経質にはなっていないようだ。
ちょこちょこ情報が手に入る。
帝国国民の間に暗い空気は流れていない。
帝国は4つある大国の中でも今、1番勢いがある。
国民からの帝国軍への信頼も熱い。
しかし……と俺は思う。
ダレムって確か、すぐそこの大森林だよなぁ?
……もしかして、帝国は魔王と魔獣に対する対処方が分かって居ないのかもしれない。
本当に僅かながらの変化だが、どことなく第3諜報部の面々の顔色が暗くなっていっている気がするのだ。
「メメちゃ〜ん! 働き詰めで疲れてない〜? 癒してあげるよー!」
「あはは……」
そう俺が声を掛けると、メメちゃんも最近は引き攣った顔で愛想笑いを返すだけになってきた。
……俺が嫌われ出している訳ではないと信じたい。
そうやってぼやぼやしていると、帝都のすぐ側にあるダレムの大森林で大規模な討伐作戦が行われるという噂を聞きつけた。
大規模な出陣式も行われている。
この辺りになると、俺はなんとも言えない嫌な予感がしていた。
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