第53話ゴンザレス領地(?)に帰る②
俺たちは更に移動してカストロ公爵領の屋敷に到着。
前に滞在した時より、ずっと大きく立派になっている。
怖いNo.8の女のことを聞く。
「No.8……ああ! はい、もうじきメーべ島からの買い出しから戻って来ると思います。
先に戻られた事を知ったら驚く事でしょう」
内政官男は嬉しそうにそう言った。
あ、そう。
じゃあ、その前に逃げないと……。
なんか逃げれそうな雰囲気ないけど。
ビクビクと豪勢な風呂に入り、やたらと着心地の良い服に着せ替え。
何コレ……前より待遇良くて超怖い。
食事は長〜いテーブルにフルコース。
目の前にはドレスを着て金髪を纏め上げた貴婦人な美女エルフ女。
「ねえ? 私、テーブルマナーってよく分かんないんだけど?」
「俺も分かんねぇよ。右端から順番に使うんだっけかな?」
前にちょこっとだけ教えてもらったが、忘れた。
「え? え? このお肉何!? 超柔らかいんだけど? なんの肉!?」
「そちらはこの領で取れたビートモア最高級Aランクのお肉となっております」
控えていたギャルソン? ていうのがそう答えた。
前回、ここの領地に来た時はこんなの居なかったけど!? 一体何が起きたんだ!?
「見事な味だ。美味い」
俺がそう言うと、料理人らしきマッチョが出てありがとうございます、と涙を流す。
こえーよ。
よく分からない食事を終え、部屋はとりあえずエルフ女と一緒にしてもらった。
こんな魔界に1人で居るのは怖すぎた。
エルフ女は何故かとってもスケスケなネグリジェ。
それもまた柔らかく上等な物。
「ねえ? アレス? あんた詐欺師じゃなかったの?」
「そのはずなんだけど、俺、本で読んだパラレルワールドに転移したかも」
「……きっと、そうよ」
なんだかとても疲れ切った俺たちは、そのまま眠りについた。
次の日、何故か大きなテーブルのある会議室みたいなところの中央で居並ぶ人を眺める。
無理矢理隣に座って貰ったエルフ女に目で合図。
(なんとかして!)
エルフ女は見惚れるような良い笑顔で、
(無理!)
首を横に振る。
「では、お館様。この度は家臣一同、お戻り心よりお待ちしておりました」
その言葉を合図に皆が一斉に立ち上がり頭を下げる。
動揺して自分も立ち上がろうとするエルフ女を俺は必死に引き留める。
エルフ女にまで立ち上がられたら、俺はもうどうして良いか分からん!
既に分からんが!
……あれ? 君たちいつまで頭下げてるの?
誰か止めてあげて?
俺とエルフ女以外、全員頭下げたままだけど。
(アレス! これあんたが、言ってあげないといけないやつじゃないの!?)
(え!? なんで俺が!?)
(いいから早く!)
見回し、ほんとに誰も言わないので仕方なく俺は口を開く。
「もういいんじゃない……かな?」
その声に反応して、全員がバッと頭を上げる。
座らないので恐る恐る手を上下。
一斉に着席。
一糸乱れぬ動きというやつ。
泣きそうな顔でエルフ女を見る。
(こっち見るな!)
冷たい! エルフ女冷たい!
友を助けろよ!
「ところでお館様。そちらの女性はどなたになるのでしょう?」
お館様って俺なんだよね?
うん、もう分かった。
「あー、エルフ女。自己紹介。よろしく」
ちょっと嫌そうな顔をするが、俺ではなんと説明して良いか分からん。
そもそも俺自身が誰だよ! という感じだから。
「まだエルフ女よばわりか!
初めまして。
私は、アルフィーナ。
剣聖の担い手で通じるかしら?」
あ、『私』ってカッコつけてる。
ざわざわと何人かが反応する。
あ、すげぇ、知ってる奴居るんだ。
「バーミリオン国? その近くの密林で1000年ほど勇者を待ってたんだけどね。
先にこのアレスがやって来たから、これも運命と思ってついて来たのよ。
よろしくね?」
更にざわざわ。
所々で流石はアレス様だ、お館様だとか言ってるけど、密林で迷子になって詐欺ったら付いて来ただけだから。
もうなんなのこの異次元。
はは〜ん! 人生そんな簡単に上手く行くなら、俺も詐欺師になってねえよ! チクショー!
というか実際に直面したら、謎の期待が超こえー、早く逃げたい。
やることなす事上手く行くとかないし、とんでもない時に失敗するんだろうなーと普通に思う。
とにかく早く話を終わらせて逃げよう。
「あんた、今、さっさと逃げようとか考えてるでしょ?
ダメよ。勇者が来るまでは居なさい」
ちっ、バレたか。
そこからは公爵領の状況に収支報告、これからの展望。
あ、あと俺が船で思い付きでNo.8に言った話が採用されて、実際に魔獣を狩って素材回収を始めてるらしい。
ふ〜ん、良かったね?
俺いる? 最初から要らんよね? 開放して?
「次に今回、急激に増えた領地についてですが……」
周りがあーだこーだというのを黙って聞く。
そして、急に全員で黙って悩み出す。
エルフ女が俺を肘で突っつく。
(何か言いなさいよ!)
(いやいや、このタイミング!? なんで狙ったように全員黙るんだ!? おかしいだろ!)
(いいから、早くなんでもいいから言え!)
仕方なく俺はゴホンと咳払い、するとザッと音がしそうなほど綺麗に俺を見る。
君ら演劇団か何か?
そうだよね?
もういっそ、そうだと言ってくれよ……。
俺は諦めて口を開く。
どうなっても知らんぞ?
「……あー、奴隷とか使ったら良いんじゃないか?」
全員が一斉にざわざわと騒ぎ出した。
……もうどうしたいんだよ。
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