第9話領主ゴンザレス①
俺の名はアレス。詐欺師だ。
かつてはゴンザレスと呼ばれた。
過去は捨てた男だ。
絶賛、執務室の椅子で領主業務をやっている。
ねえ? コレってどういうこと?
スラム育ちの俺にそんなこと出来る訳ないじゃん。
なんでこんなことになったんだ?
あの日、エストリア国の侯爵に土地をもらったと女が言った。
逃げたかったけど、頼みの綱の勇者も可愛い女の子になるという事故が発生して、泣く泣く女に連れられ、その指定の土地にまで移動した。
ちなみに元男の勇者のキョウちゃんはとっても可愛かった。
元々線が細かったのもあったが、薬のせいで胸が出て立派な巨乳ちゃんとなっていた。
いつも付き纏う自爆女と是非チェンジして欲しかったが、怯えられてそれどころではなかった。無念。
元男? ぜ〜んぜんおっけー。
「あるじ様、奴隷のリストと追加の仕事です」
この女は年の功は10代後半といったところ。
亜麻色の髪を肩まで伸ばし、田舎っぽさを感じる綺麗より可愛い系の女だ。
容姿は良いんだが、世界ランクNo.8の化け物だ。俺をNo.0と勘違いしている。
俺はリストを受け取り目を通す。
当然、理解できん。
奴隷のプロフィールが書いてあるが、何をどうしろと。
だいたい土地をもらっただけのはずなのに、なんで領地経営なんだ?
なんでもエストリア国は封建社会で貴族の領地内では、その貴族が王みたいなもので、王自体はその貴族の選挙で選ばれる代表みたいな感じらしい。
だからその土地の貴族が譲渡すると言えば、その土地一帯の領地を貰うことになるとか。
さらにエストリア国の侯爵は大貴族であり、その切り分けた一部の土地すらでかい。
どのくらいでかいかと言えば、この女の亡国ウラハラの1/3に当たる広さらしい。
はんぱねー。
名義上はこの女の持ち物だが、あるじ様のために確保した土地だとして譲らず、俺の秘書の真似事に徹している。
お前ほんと俺をどうしたいの?
「コイツとコイツ。
この2人に選ばせろ。
金はこの2人の言い値だ。
その後、この件はこの2人が代表だ。
委細全てを任せろ」
一瞬だけ驚いた表情をしたが、この女はふわりと笑い一言。
「御意」
何度も言うが俺に領地経営なんざ出来ん。
奴隷を選べと言われても、どれが良いとかサッパリだ。
リストの中は男ばっかりだったしな〜。
だから適当だ。
あ〜あ、この金が自由に使えるんなら娼館に繰り出すのにな。
そうだ!
「娼館の女をここに呼べ」
「それは……いえ、御意」
少しだけ抵抗しようとしたが、それ以上反論せず女はそう返事をした。
くひひ、せっかくの領主たる者、酒池肉林はさせて頂こうかな!
で、まあ、娼館勤めの娘さんたちがいる訳だが……。
コレはないだろ?
若さとか容姿やスタイルとかそういうことじゃないんだ。
コレがもう臭いの何のって。
もうね、ここの領地の前任者何してたの?
何でここまで酷く出来るの?
前任者あのデブ侯爵かー。
まあ、娼館に興味がなかったのかも知んないけどさー。
娼館の担当者いる?
あ、居ない?
この土地では娼館を公営で管理していない。
娼館は保護すべきだ! 俺のために。
この地方は田舎であり、かつ戦端こそ開かれてはいないが隣国コルランとも近い。
国境の要になるのは、この地より少し北に離れて位置する大要塞サルビアだ。
つまるところ、戦争になればこの地は見捨てられやすい土地といえた。
それゆえにケーリー侯爵も手放しやすい土地でもあったのだ。
上手い話には裏があるものである、気をつけよう。
話を娼館に戻すが、そういった事情があるために、奴隷も娼館も訳有りが非常に多く集まる。
当然、ここに集められた娼婦もリストの奴隷もかなりの訳有りだが、俺にはそんなこと知ったことではない。
「とりあえず、風呂だ。
それとそんなにガリガリでは話にならん。
食事の改善、衛生面の改善が必要だな。
衛生面は掃除にうがい手洗いの徹底だ。
管理者はそこのお前。
お前が衛生担当と食事担当を任命し以後管理しろ。
困った事があれば近いうちに、新しい担当が来るからそいつを頼り予算を確保してもらえ。
後、この中から領主邸に務めさせろ。
もちろん、見た目が良く優秀な奴だぞ」
俺はやや年配でキツめな目をしていた女に責任を押し付けて、手でサッサと行くように指示する。
適当に指示したが、予算なんてないからどうしようもないな。
ま、いっか、俺も不貞寝しよう。
それから俺はゴロゴロして過ごした。
金については、女が魔物を討伐してそれで稼いでなんとかなっているらしい。
女が初めて役に立った瞬間だ。
たまーに、奴隷から指名した奴が俺に問題が発生した仕事をどうしたらいいか聞きに来るから、人の候補を出させて適当に任命しておいた。
何週間かすると、見目麗しい娘が領主館に出入りするようになった。
娼館から回ってきた娘たちだ。
是非、お手付きにしようと思ったが常に走り回ってなかなか捕まえられなかったり、気配を察知したようにNo.8の女が邪魔しに来る。
もうねー、我慢の限界なの、お兄さん。分かる?
でも命が惜しいからNo.8の女には手を出さない。
まさに俺は命をかけてスッキリするか、耐えるかの究極の2択を迫られていた。
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