第155話ゴンザレスVS世界最強No.0⑥

「あの3番目と4番目、そっちのCのチームに組み込んで。

 小柄だけど防御時の粘りが凄いから支えるのに向いてる。


 あそこの10番目と15番目、アイツらは戦術を考えて動いてる。

 だから隊の長に組み込んで」


 小高い丘の上から、平地で集団訓練をしている300人の配置を追加で指示。

 ゴリマッチョが敬礼して走って行く。


 戦闘時には300人を10人単位に振り分け再編して、山岳の中で少数による罠と不意打ちが基本の戦い方となる。

 つまりゲリラ戦を仕掛けるわけだ。


 他のマッチョもそれぞれの隊について、俺の基本方針に従って指揮し行動する。


 それを時々こうして指示を出しながら、妖艶娘ミランダと一緒に座って眺める。


「なあ、残念妖艶娘。

 俺、詐欺師のはずなのに何やってんだろ……」


 俺は何処か遠い目をして、自らの状況を振り返る。

 隣の残念妖艶娘のミランダも、何故か一緒に遠い目をしながら答えてくれる。


「……そうだね。

 ゴンちゃんが嘘をついてないのは分かるけど、今のゴンちゃんを見て、詐欺師だと思う人は居ないと思うよ?」


 そうだよなぁ……。

 俺、何やってるんだろ?


「魔王倒した英雄なら詐欺師なんてやらなくて良いんじゃないの?

 何かこだわり?」


 妖艶娘は不思議そうにこちらを見て小首を傾げる。

 妖艶なのだがその態度は可愛いらしい小娘のよう。

 年齢は若いのだろう。

 妖艶なのは見た目だけで。


 俺は首を横に振る。


「いいや、金のため。

 でも、俺……魔王討伐した時って無報酬ただなんだ」


 だって依頼とか受けたんじゃなくて、メリッサたちに連れて行かれて、最後には巻き込まれただけだから。


「ゲシュタルトで総司令官してた時は?」

 あの時は……報酬貰う前に逃げ出したから。

 ……そして魔獣の大群に追いかけられた。


 その苦難を思い出し、俺は涙をこらえながら首を横に振る。


 ゴンザレス、泣かない。

 だって男の子だもん。


「ドリームチーム撃退した時は?」

「生活を守るためだと思ったから……」


 勝てなきゃ、魔王討伐に連れて行かれるから……。

 結局、巻き込まれたけど。


 なんだろう妖艶娘の声もなんか哀しげだ。


「ゴンちゃん……お給料貰ったこと、ある?」

「あるよ?

 コルランで研究員してた時。

 月5銀貨、頑張れば夫婦2人で1ヶ月暮らせる分。

 魔獣素材の転用論文書いたの俺なんだぁ」


 研究員としてなら詐欺師辞めても良かったなぁ。

 あの頃は幸せだった……。


 世界最強ランクNo.1ハムウェイの罠に引っ掛からなければ!!

 おのれ、イケメン!!!


 そうでなくてもイリスにはいつか捕まった気はするけど。


「ゲフタルから購入したことあるけど大儲けらしいね。

 1kgで金貨1枚ぐらい。

 国によってはt(トン)でやり取りだから、1回1000金貨以上が飛び交ってるらしいね?」


 そうだったんだ……。

 シュバイン……俺、軍師だったけど月3銀貨しか貰って無かったけど?

 君たち稼いでたんだね?

 提案者、俺だけど?


「ゴンちゃん……。

 貴方、どれか一つでもまともに報酬貰ってたら、とっくに大金持ちだよ……」


 妖艶娘が泣いている。

 俺のために泣いてくれてんのか?


 そう思ってたら地面叩き出した。

 最後には、お腹抱えて笑い出した。

 笑いすぎて泣いていたようだ。


 俺は涙した。








「ま、ププ、まさか、詐欺師が……、事あるごとに詐欺られてるなんて……」


 俺は膝を抱えて丸くなっている。

 どうせ、俺はスラム上がりの貧乏人だよ。

 報酬貰えるって気づかなかったよ……。


 本当に今頃になって気付いたけど、メリッサが商業連合国との交渉の後、追加で報酬貰えるってそういう意味だったんだ……。


 お金で報酬貰えるっていう意味だったのね……。


 分かった後でも、メリッサから同じ夜のご褒美貰っただろうけど。


「ゴンちゃんが1雇われるっていうから、何か他に狙いがあるかと思ったら……。

 ゴンちゃんにとって破格だったのね」


 だって金貨1枚だよ?

 10日で10枚だよ?


「指揮させたら必ず勝利する指揮官なんて。

 ……世界中探しても何処にも居ないよ?

 そんな人雇えるなら日に金貨100枚どころじゃないと思うけど?」


「お金をかせぐって、大変だよね……」

 自分の報酬の値段交渉なんてしたことなかった……。

 大事なことなのね。


 世の中、黙っているとお金は増えません。

 ちゃんと適正価格を把握して賃金交渉しましょう。

 詐欺師ゴンザレスからのアドバイスよ?


 ……そのゴンザレスですが、詐欺師しているつもりで色々詐欺に遭ってました。

 これが詐欺の怖いところです。

 皆さん気をつけましょう。


 妖艶娘はポンっと俺の肩を叩き、親指を立てて微妙にいい笑顔でニカッと笑う。


「ユー、里長になっちゃいなよ?

 給料出すよ?

 むしろ支払う側よ?」


 それはヤダ……。








 なお、余談ではあるがカストロ公爵であるアレスが、実は幾らでも贅沢の出来る超大金持ちであることは……本人であるチンケな詐欺師も、小さな里の女王も全く知らないことである。


 誰か教えてあげて。

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