第154話ゴンザレスVS世界最強No.0⑤

「だって世界最強だよ!?

 世界最強は世界で一番強いから世界最強なんだよ!?


 無理だよ! 

 無理無理無理無理無理無理!!!!!」


 道の真ん中で妖艶残念娘は両手をブンブン振りながら叫ぶ。


 あぶねーよ!

 振ってる手が当たるじゃねぇか!

 なんて残念な妖艶娘なんだ!!


「え〜い! うるさい!

 る前から諦めんな!

 殺ってみて考えろ!」


「まず殺れないって言ってんの!

 大体、どうやるのよ!

 ナンバーズが束になっても敵わないって話なんだよ!」


「そんな奴が居るか!

 ナンバーズはマジでバケモンだ。

 あいつらが束になって負けるわけがあるか!」


 そこで瞬間的に残念な妖艶娘はキョトンとした顔をして、ピタッと動きを止める。


 俺は悟る。

 あっ、やっちまったと。


「あいつらって……、ナンバーズの人たちに会ったことあるの?」

 小動物のように純粋な瞳で、不思議そうに首を傾げる。


「ちょ、ちょっと街で、す……すれ違って……」

「嘘だ。

 ナンバーズとか魔王みたいなの撃退したことあるって……言ったよね?」


 言ってない。

 決して言ってない。

 バレただけだ。


「ゴンちゃん……。

 貴方……ナンバーズ、いいえ。

『ドリームチーム』を撃退……しましたね?」


 俺は目を逸らす。


 YESもNOもイイイノゥもダメ!

 絶体絶命!?


「沈黙はYES、だよね?」


 背中に冷たい汗が流れる。

 この危機を乗り越えられる術はあるのか!?


 キュピーン!

 その時、俺の頭に星が流れた。


「ドリームチームを撃退したのは彼らのリーダーのNo.0だ。

 No.0は俺ではないからな!」


 俺がNo.0ではない事は先程証明済みだ。

 実はここで奇妙な矛盾が出来ている。


 奴らのリーダーが仮に本当に俺だとしても俺はNo.0ではない。

 だが、奴らのリーダーは公式的にはNo.0でもある。


 よってドリームチームのリーダーが本当にNo.0であり、俺が撃退したことでもあるので、今の言い方なら嘘は無いことになる。

 ただ

 嘘でもないけど、真実でもないだけだ。


 そう、これは高度にしてよくある詐欺の言い方である!



「……そっかぁ〜。

 じゃあ、ゴンちゃんナンバーズも魔王も撃退してないのかぁ」

「うむ」


 俺は頷いた。


 あ、あれ?

 目をまん丸くして妖艶娘が俺を見ている。


 妖艶娘は嘘が分かる。

 今の言い方を訳すとこうなる。


『ゴンちゃん、魔王ヤッチマッタよね?』

『ウン、ヤッチマッタ』


「じゃあ、魔王倒したのゴンちゃんなんだ……」

「いや、俺は巻き込まれただけで……」


「え? でも、倒したんでしょ?

 あ、あれ? 魔王倒したのって確かドリームチームとそのリーダーで……。


 えっ、え!? えーーーーー!?

 じゃ、じゃあNo.0じゃないけどゴンちゃん、ドリームチームのリーダー!?」


 俺は目を逸らすしか出来なかった。

 無念でござる……。


「……という事は、No.0じゃないけどドリームチームを撃退したのも、魔王を討伐したのも、ついでにゲシュタルトの王都を守り切った総司令官してたのもゴンちゃん!?」


 俺はやっぱり目を逸らす。

 答えれば、即ち、バレる。


「……沈黙はYESということで」


 しかし残念妖艶娘はこんな時も追い討ちをかける。


 ……逃げ道、なし!


「ハッハッハ! そうとも! 全て俺だ!

 俺がやっちまったよ!

 ……ちっくしょぉぉぉおお!!!!!」


 俺はガクッと大地に両手をつく。


「ゴンちゃんスパイ?

 スパイなら処刑だけど……」

 俺は首を振る。


 こんなスパイがいてたまるか。

 こんな総司令官もいないけど。


「ゴンちゃん、なんでここに居るの?」


 なんでだろ?


 ポンっと妖艶娘が俺の肩を叩く。

「……ドンマイ」


 うるせいやい。







 妖艶娘の屋敷は里の集会場も兼務しているという事で、取りまとめ役のメンバーに集まってもらった。


 スキンヘッドと妖艶娘と他3人。

 右からマッチョ、ゴリマッチョ、細マッチョである。

 ちなみに名前は、エイク、ベック、クロークらしい。

 マッチョABCでいいや。


 妖艶娘が俺を紹介する。

「こちらが指揮をしてくれるゴンちゃん。

 彼は魔王討伐軍ドリームチームのリーダーで、ゲシュタルトの魔獣襲撃時の総司令官」


 マッチョCが手を挙げる。


「ミランダ。それマジか?」

「大マジ」


 ポカ〜ンとするマッチョ集団。


「なんでこんなところにいるんだ?」

 もっともな疑問です。

「船酔いで降りたら置いて行かれた」


 マッチョ集団は妖艶娘ミランダを見る。

 妖艶娘は神妙な顔で首を横に振る。


「マジよ」


 マッチョ集団は頭を抱える。


「とにかく実績は本物。

 里が生き残るためにも彼の指示に従って。

 いい?」


 マッチョ集団は、頭を抱えながらも頷いた。

 是非も無い。

 何もしなければこのまま踏み潰されるだけ。

 それならば、怪しい男だろうと賭けてみようといったところか。


 俺はとにかく自分が生きるためにマッチョ集団を利用し尽くすことにした。


「現状、ハッキリ言って勝ち目はない。

 だから潮目が変わるまで粘る。

 この一点に賭けるしかない。

 そのためにまず世界最強No.0を殺す」


 マッチョ集団が息を飲む。

 るっきゃないのよ、殺るきゃ。

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