第82話ゴンザレスと連邦王国②
ゲシュタルト連邦王国は3つの部族から成る。
その3つはお世辞にも、仲が良いとはいえなかった。
そうは言っても、それでは諸外国から侵略を受け、各部族で各個撃破され、代々からの土地を全て失っては元も子もない。
故に、対外的に3つの部族は手を結び、連邦王国となった。
つまり、ゲシュタルトとゲフタルとグリノアの連合体がゲシュタルト連邦王国だ。
その総主となったのが最大部族のゲシュタルトであり、今のゲシュタルト連邦王国の名前となった。
無論、他の2部族ゲフタル、グリノアは面白くない。
それでも魔王の件が起こるまでは表面上どうにか上手くいっていた。
それが変化したのが、皮肉なことながら、海洋封鎖が原因だ。
海に逃げ場がない以上、資源と土地を求め3部族で緊張が高まった。
そこに魔獣の侵攻があった。
3部族が連携して事に当たれば良かったのだろうがそうはならなかった。
ゲシュタルトがNo.3を見捨てたのだ。
当然これに怒ったのがシュバインたちゲフタルだ。
もちろんゲシュタルトも見捨てようと思いそうした訳ではない。
数十万もの魔物の大群を押し留めることなど出来なかったのだ。
むしろゲフタルの部族が生き残っただけ、No.3の非凡さの結果と言えよう。
自らの命を犠牲にしての結果ではあるが。
もう一つの部族グリノアは最初から沈黙を守ったまま、協力することもなければ邪魔することもなかった。
一応は国として崩壊している訳ではない。
かなり揉めてるけど……。
そんな状況下で俺はこの国に連れて来られた。
「魔王討伐軍はゲシュタルトに協力している。
こちらの土地に入るなら奴らも敵だ」
ふ〜ん、と思うだけ。
まともに戦うと碌な結果にはならないだろうね。
奴ら世界初のナンバーズのドリームチームだから。
ま、それより魔獣から土地を守らんとね。
俺はシュバインに地図を見ながら話す。
「魔王城が推定ここの地点にあるなら、つまり魔獣発生源もここだということだ。
そんな訳で魔王城とゲフタルの直線上にあるこの渓谷を利用して、魔獣の『収穫地』を作るのが良いな。
魔獣にもよるが上手く加工すれば長期間腐らず使用出来る素材も多いし、意外と食べられる魔獣も多い。
後でリスト化しておくよ。
それを蓄えておいて魔王討伐軍のドリームチームの魔王打倒後に海が開放されたら、交易を開始するといい。
コルラン国でも素材の有効性が広まり生活に根差す日も近い。
そうなると世界全土で素材は使われる。
しかし反面、魔王討伐後になると今よりも魔獣収穫は期待出来ない。
まさに今がかき入れ時ってやつだ」
その案にシュバインは素直に驚きを
「魔獣が収穫物と同じ、か。
その発想はなかったな」
「ゲフタルの土地は天然の要害があるからね。
正直、魔獣収穫には理想的な土地だからいける方法でもある。
反対にゲシュタルトの土地は厳しいだろうなぁ。
平原が多いから農作物を作るには適しているが、魔獣を狩るには不利だったりする」
聞きながらふーむと唸っていたシュバインは、そこで首を傾げる。
「貴様のその知識はどこで得たのだ?
今更、貴様をスパイなどとは思わんが、貴様を連れて来た者も何か役割を持たせるためではないのか?」
それに関しては俺は肩をすくめて見せる。
「さあね。
なんで俺を連れて来たのか、お偉方の考えることはさっぱり分からんね。
俺自身はスラム育ちの根なし草なんでね、旅と本で得た知識にしか過ぎない。
実際、今回の案も実行してみるとそれなりの問題が出てくるんじゃないか?」
今度は納得したのかシュバインは頷く。
「実行時の問題を調整するのはこちらの役目だ。
アイデアが有るだけで、そこから如何様にでも発展出来る物だからな。
今後も頼むぞ」
俺は、あいよ、と返事をするに留めた。
海に囲まれたこの国では迂闊に詐欺っても逃げる場所はない。
ドリームチームが魔王討伐するまでは俺も大人しくするしかない。
可愛い子ちゃんも何人か居るしね!
そうなのだ!
このゲフタルの部族、意外と美形が多い!
No.1はこのシュバインの妹、シーレイン。
義兄様と呼ぶ日も近いかもしれない!
……ガードが固くて一言も話せてないけど。
ぐぬぬ。
とりあえず次席の皆のアイドル、エッリンちゃんを狙うかなぁ。
倍率凄いけど。
そんな平和な日々を送っていると、あの驚くべき報せが舞い込んできた。
魔王討伐軍が攻め込んで来た、と。
なんでやねん。
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