外伝40インターミッション:ゴンザレス、教師になる3

 まあ、とにかく。


 シュトレーゼン王家と外交特使のカレンたちが交渉を行う中に便乗して、その間だけ臨時教師として経験豊富なエルフ女を引き連れて学校にやって来たのだ。


 ちなみにエルフ女がなぜ各地で臨時教師をやっているかといえば、エルフ女は知る人ぞ知る伝説の教師なのだ!


 たしかに勇者であったキョウちゃんとか、ナデシコとかを育てあげたベテラン師匠だけど、伝説の教師って……。




 そしてさらに3日。

 俺が教師をやってみた結論として。


「やってられるかァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 とりあえず素敵なテスト用紙やら今後の予定や学校からのお知らせやらクラブ活動の案内や子供の親からのクレームとか近所の他人(紛うことなき他人)からの意見書などの書類を天井に放り投げた。


 あまりの教師としての仕事の過酷さにもはや限界だった。

 なお、地獄を見ているのは俺たちだけじゃない。


 半数以上の真面目でまともな教師から地獄への道をひた走っているのだ。

 地獄を逃れるのは人としてなにかおかしい人だけ。

 色々と間違ってる……。


 ねえ、教師っていつ休んでるの?

 お給料を時給計算したら笑える数字になるんだけど?

 クレーマーという名の親とか近所の人(つまり無関係)とか何!?


 あっ、逆だ。


 近所の人(つまり無関係)とか親という名のクレーマーってなに!?

 パワハラしたり無茶振りとか、無茶振りとかしてくる偉そうなおっさんは誰?

 教師? 上司? 教育委員◯? 文部◯◯省!?


 いつの時でも、どこでもいじめ問題とか色々あるけど、まず教師が溺れてるのに、溺れてる子供助けられるわけないじゃん!

 なぜそれがわからん!


 そしてそんな奴ほど、人に責任を押し付けて上に行く!

 世の中間違ってる!


「詐欺師と自称するあんたに言われたらおしまいよねぇ〜」

「自称じゃねぇし。もう良いじゃん、こんな国さっさと滅ぼしちゃおう、もう無理だって」


「あんたが言うと洒落になんないんだって!

 いいから教育するよ、文字を教えてたくさん本を沢山書いてもらって、それを読むんでしょ!」

「うう……、俺頑張るよ……」


 そして、さらにさらに2日……。


 俺は詐欺師の本分を思い出し、金を持っていても使う機会のない教師たちに詐欺をかけた。


 曰く、お金を預けておくと勝手に増えて、いつか教師をやめてゆっくり休めるよ、とか。


 曰く、ストレス発散できる秘密クラブの会員権あるよ。子供の親とか近所の人(無関係!!)の目とか気にせず、ストレス発散出来るよ、とか。


 無論、詐欺だ。


 そして俺は、金貨が山積みになった机に突っ伏した。

「教師騙されやす過ぎる……、詐欺する余地すらねぇ……」

「教師ほどストレスからの救いを求めている人たちはいないかもねぇ〜」


「もう無理だって、とりあえず校長◯そうぜ!?」

「いつになく過激よね〜。でもダメよ、校長は悲しい中間管理職。全てを牛耳るのは◯部科学◯よ」


「シュトレーゼンはなんでそんなヤツらに従ってんだ!? 生まれながらにしての奴隷なのか!?」


 俺は時間になったので散らばった書類の山を踏み越えて、子供たちが大人しく座って待つ教室へと足を運ぶ。


 俺もう疲れたよ……。


 なので開口一番、隣のエルフ女に告げる。


「俺もう子供たちになにを教えたらいいんだよ……」

「とりあえず教訓とか教えたらいいじゃない?」


 なので、俺は子供たちに向かって宣言する。


「よーし、俺は心から思ってることを教えるぞ? 無理なことはなにがなんでも断れ! 絶対に安請け合いするな! 金をもらったら契約だ! 受け取った時点で意地でもこなせ! いいか? 納品するか、死ぬか。世の中は2択だとでも言えというのか!? 俺に教師なんてできるかァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」


「あんたらしくもないわねぇ〜、いつも通り詐欺でどうにかしなさいよ」


「できるかぁぁああああああああ! おまえ子供たちの純真な目を見たか!? まずもってあの年代は大半が先生を疑ってないんだぞ!? その目を裏切れるか!? 裏切れるような人に俺はなりたくない!!」


「詐欺師がなにを言うのよ。まあ、あんた何気に子供に優しいもんね」


「大事なことだから口を酸っぱくして言うが、人間できることとできないことがある。子供たちにあんな純粋な目で見つめられても、人間には限界があるんだ。それを繰り返して答えのない問題にばかり目を向けてると精神が病むんだよ! もうあとはそれを乗り越えられる超人か、人として最初から歪んだ人間か、諦めたヤツだけだ。その時点でもう答えなんてねぇんだよ!」


「じゃあ、どうすりゃあいいのよ。子供たちを見捨てろとでも?」


 エルフ女がケンタという大人しめの男の子の背後に回り、ぎゅっと後ろから抱きしめて俺に訴えた。


 おう、マセガキ。


 エルフ女に抱きしめられて赤くなってんじゃねぇよ……いや、おまえ悪くないわ。

 これで性癖歪んじまうだろうけど強く生きろよ?

 おまえの人生のピークここだから。


「あんたねぇ……、子供に変なこと教えないでよ」

「いや、これに関しちゃ間違いなくお前が悪い」

「どうしてよー!?」


 エルフ女みたいなS級美女に後ろからぎゅっと抱きしめられてみろ、同い年ぐらいの異性なんて永遠に興味持てなくなるぞ。


 俺もS級美女にばかり嫁にしてしまったもんだから、もう並の相手では興奮一つしねぇ……。


 そんな俺にエルフ女が訴える。

「とにかくどうにかしてよ」


 おまえもちょっと無茶振りすぎんか?

 マジでできることとできないことあるんだけど!?

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