第15話冒険者ゴンザレス②

 朝方まで楽しんだから、村人が慌てて俺たちを起こしに来た時はまだ惰眠を貪っていた。


 3人共裸だったが、村人は余程慌てていたのか言いたいことをまくし立てる。


「い、急いで来てくれ!


 ドラゴンが、ドラゴンが出たんだ!!!」


 ドラゴン……?


 こんな村にか?


 もちろん、本当にドラゴンなら速攻で逃げる。


 服を着て、村長のところへ。

 昨夜の情事を思わす臭いだが、もしドラゴンの話が本当なら急いで逃げなければいけないので、我慢する。


 呼びに来た村人はまだ慌てているので、気にしていないが、村長は少しムッとした顔をする。


 いいから早く説明しろよ。


「巨大な黒いドラゴンがこっちに向かっているそうです。

 すでに此処から見えるほどに……」


 本当に早く言えよ!

 急いで家の外に。


 巨大な黒い巨体が、昨日いた森の向こうから突っ込んで来ている。


 はい、撤収〜。


「じゃ!」と手を挙げてドラゴンの進行方向から横に歩き出す。


「ちょちょちょ……!」

 村長が慌てて止める。


「なんだよ?」

 命に危険が掛かってるんだ、早くしろよ。

 昨日までは紳士然とした口調だったが、今は取り繕う暇がない。


 急がないとドラゴン様、それも悪名高いブラックドラゴン様のお腹の中だ。

 光栄すぎて漏れちまいそうだ。


 俺の態度に気圧されながらも、村長は詰め寄る。

「なんとか出来ませんか?」

「マジでどうやって? ブラックドラゴンなんてSSSランクだろ?

 しかもあの巨体、暗黒の暴龍だろ? 


 アレって世界レベルの災害じゃないか。

 ナンバーズ連れて来いよ、ナンバーズ」

 俺の言い方はどうあれ、言ってることに間違いはない。


「一体なぜ今になって……。龍の姫巫女が生贄になって大人しくしている筈なのに……」

 村長はぶつぶつ言いながら、膝をつく。

 逃げないなら勝手にしろ。俺は逃げる。


 2人の女に声をかけ走り出す。


 村人は危機感がないのか、それとも諦めか。

 いずれにせよ、俺には理解出来ん!


 走り続けて暫し……。

 あれ? あの黒いヤツ、なんかこっちに来てないか?


 あ、村から逸れたね!


 こうして村は救われましたとさ! メデタシメデタシ。

 ふざけんなーーー!!!

 世界の誰より俺が救われねぇと意味がねぇわ!!!!


「わ、私のせいです。私が逃げたから……」

 A子が何か言ってるな。

 そういや、俺、この女2人の名前しらねぇな。

 一夜を共に過ごしたのに、1回も名前呼ばなかったんだな。


 流石に、それは俺自身のことながら、ちょっと思うことが無いでもなかった。

 これを無事に逃げれたら、ベットで名前を呼んでやろう。


 黒いお方は脇目もふらず、近づいて来る。

 うわ、こっぇええ! なんでこっち来るんだ?


「私を置いて、逃げて下さい!」

と女A。

「そんなこと!」

と女B。

「でないと、暗黒の暴龍に貴方達まで!」


 何? 置いてったら、なんか良いことあるの?


「暗黒の暴龍は、私を生贄の姫巫女を狙っているのです! お願いですから、私を置いて逃げて下さい!」


 いやいや、そういうなら、一緒に走って付いて来るなよ!

 足止めて、黒いヤツのところ行ったら良いじゃん!


「私は絶対に貴女を見捨てない!

 あの時、生贄の役目で山に行く途中の貴女を、連れて逃げた時から、絶対見捨てないって決めたから!」

と女B。


 お前が連れて逃げたせいかよ!


 えーい! 貴様ら! あくまで俺に付いて来るなら、俺にも覚悟がある!

 俺だけでも絶対生きるという覚悟がな!


 だから、崖になっているところで2人を蹴り出した。


「あばよ!」

 驚愕に染まる2人の顔、笑顔で見送る俺。

 悪く思うなよ。


 2人が下の川に落ちるのを確認して、俺はまた走り出した。

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