第129話ゴンザレスとNo.1、あとエルフ女③

「君たちの言う通りだ」


 え? 何が?

 No.1が突然ほざいた意味が分からず俺は首を傾げると、エルフ女が耳打ちしてくれる。

「経験不足のことじゃない?」


 ああ、そうか。


「ハムウェイ……、お前もハーレムを作りたかったんだな。

 でも忠告しておくぞ?

 マジで怖いからやめとけ。

 なんでそうなったか全く理解出来ないから。

 チョー怖い」


「なんでここでハーレムの話になるのよ?

 それはアンタが手当たり次第に騙すからでしょ?」


「いやいや普通、そんな簡単に引っかからないよ!?

 酒場のお姉ちゃん落とすのにどれだけ金注ぎ込んだか!


 アイツら知ってるか!?

 S級のくせに注ぎ込まれるどころか俺に注ぎ込んでくるんだぞ?

 こえーよ?

 俺、詐欺師じゃなくてホストだったっけ?」


「似たようなもんじゃない?」

 ち、ちげーし!

 知ってるか?

 稼げるホストは結構、マメなんだぞ?


 あと女性を食い物にする奴も多いから気を付けろよ?

 食い物にする奴はマメじゃないからな?

 よく思うが、クズ男はどれほど女が尽くそうとクズだからな?

 そこのクズ男好き、気を付けろよ?


「私、クズ男好きじゃないわよ?

 詐欺に引っ掛かっただけだし。

 それにそもそも、あんたって……」


 自覚のないクズ男好きエルフ女がそう言い返す。


 あー、はいはい、クズ男に引っ掛かったヤツはいつもそう言うんだ。

 マジで気を付けろよ!?


「詐欺に引っ掛けた当人に心配されても……」


 それはもっとも……いやいや、そもそもチンケな詐欺師の俺はそんなことはしない。

 せいぜい、一時の夢を一緒に見るだけだ。


「チンケなホストって言い換えればいい?」

 何か微妙な言い方に変わるからやめて?


「まあ、アンタは相手を幸せにしているから、まだ良いんだけどね」

「へ?」

「自覚なしかい!」


 そこでおずおずとハムウェイが手を挙げる。


 ハイ! そこのハムウェイくん。

 存在を忘れていたわけじゃないぞ!

 イケメンだから無視していただけだ!!

「それも大概酷いわね……」


 だまらっしゃい、エルフ女さん!


「No.0はつまり、自分は詐欺師と言いたいのかい?」

「YES!」

「アンタ、No.1の前でそこ肯定したらダメなんじゃないの?」


 ……。


「しまったぁぁぁあああ!!!」


 ひーえー! 命ばかりはお助けを〜!

 だが、ハムウェイは今度は睨む訳でもなく笑い出した。


 頭おかしくなった?


「いや、もういいから。

 君が本当はどうあれ僕自身が未熟なこととは関係がない。

 世界ランク1位だとか何とか持ち上げられて、調子に乗って大切な人を失うところだった。

 君の意図がどうであれ僕が君に救われたことに違いはない」


 イケメンフェイスでイケメンスマイルを浮かべる世界最強イケメン男ハムウェイ。

 ……ヤバい惚れる!


 それはそうと、そんなに素直だとあんた、騙されるよ?


「そう? それなら良いんだけど……」

 まあ、俺に害が無ければどうでも良いや。


 そのタイミングを狙い済ましたように馬車が遠慮がちにコンコンとノックされる。


 いつの間にか馬車は停止していたらしい。


 扉からひょこりと顔を半分だけ、ノック同様遠慮がちにツバメが顔を出す。


 ちょっと顔が赤い。


「あの〜……もうお済みでしょうか?

 外にまで、イクとか昇天とか散らすとか聞こえたので、大分激しかったようですけど……」


 ん?

 お済みってなんだ?

 ツバメは扉を開け俺たちを見てホッとしたような残念なような複雑な顔をした後、指をモジモジさせる。


「その〜ですね……。

 アレスさんが元男でも愛せる慈愛の人とは噂で聞いてましたけどぉ〜……。

 その〜確かにハムウェイさんはイケメンさんですけどぉ〜……。

 お互い相手が居る身ですから……。

 もう! エルフィーナさんもちゃんと止めないとダメですよ!

 自分だけ一緒になって!


 あ、いえ、私はアレスさん以外はご遠慮しますので混ざったりはしませんが、ちょっと見たかったなぁ〜、なんて……」


 俺の背中に冷たい汗が流れる。


 ははは、いやぁ参ったな、とハムウェイは苦笑い。

 おい、まず否定しろよ?


 エルフ女は堂々とした様子で。

「私は混ざってないわよ?

 アレスが必死になるのを見てただけよ?」


 おい! エルフ女ぁぁあああ!!!

 お前、絶対分かって言ってるよな?

 ふざけんなぁ!!


 ツバメはエルフ女の言葉を受けよろめく。

「な、何ですって!?

 見てただけ!?

 特等席でぇぇ〜!!


 なんて羨ま、じゃなくてけしからんことを!!!!

 ど、どうするんですか!

 これでアレスさんが完全に覚醒して、に目覚めちゃったら!

 皆で見学するしかなくなるじゃないですか!」


「何をだ!?」

「え? ナニを?」


 何処で覚えたんだ、そんなこと!?

 ツバメは田舎出の純朴少女だったはず!


「帝国親衛隊で流行ってまして〜。

 特にNo.0とNo.1の伝説の絡みは1番人気で、チェイミーなんて3冊も購入して……」


 なんの流行り!?


 外に出ると、3人の皇女王女元皇女が円になって、シクシク泣いている。

「ご主人様が〜男に走ったぁ……」

「どうしよ〜、皇帝候補が男に走ったぁ。

 確かに一部の国では男色はたしなみとか真実の愛とか言うけど……」

「うう……やはり初恋は実らないのですね……」


 俺はどうして良いか分からず、円になった皇女集団に指を差したまま口をパクパクした。


 メリッサはある意味いつも通りだけど、エストリア王女様は詐欺師が初恋って色々、致命的じゃね?


 あとカレン姫。

 俺は皇帝になんかならないからな!

 絶対にならないからなぁ!!!


 エルフ女は俺の肩をポンっと叩き、ニヤニヤ笑う。

「いやぁ〜、面白い事になったねぇ」


 誤解を解けやぁあああ!!!!

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