第128話ゴンザレスとNo.1、あとエルフ女②

 俺は先程の土下座ポーズから一転。


 脚と腕を偉そうに組み、フッと皮肉げに笑ってみせる。

「それだよ、世界ランクNo.1ハムウェイ」

「何?」


 今にも飛びかからんとしていたハムウェイの機先を制する。


 ふ〜っとため息。

 このわずかな間にも頭は全力回転。

 頭の中でカラカラとハムスターが回転して走る!


「つい最近、その早とちりする性格で失敗したばかりじゃないのか?」


 痛いところを付けたらしく、悔しそうな顔をして乗り出していた身体を座席に沈めるハムウェイ。


 よし! クリティカル!

 ここは畳み掛ける!


「しっかりしてくれよ?

 これから行くのは戦場だ。

 気の迷いが致命傷となる。

 大体、お前はゲフタルでも俺の挑発でまんまと罠にかかっただろ?

 それは明らかな弱点だ」


 項垂れるハムウェイ。

 そこでコソコソっとエルフ女がチャチャを入れる。


(今、ついにゲフタルでの事、自分の仕業と認めたよね!)


(だまらっしゃい!

 今、大事なところなんだから!

 あと、認めたんじゃない!

 物は言いようという奴だ!)


(俺の挑発って言ったじゃ〜ん)

(だまらっしゃい! 気のせいだ!)


 よく思い返してみれば、ハムウェイの前で大元のバレるようなことを言ったのはエルフ女じゃないか!

 なんてことだ!

 犯人はこいつだった!


 ハムウェイはすっかりしょげて何事か考えている。


(だけどさぁー。

 コイツといい、ナンバーズって騙されやすくない?

 いくら何でも俺みたいなチンケな詐欺師の言うことをほいほい信じたらダメじゃね?)


 う〜ん、とちょっと悩む素振りを見せるエルフ女。

 元々の容姿の良さも相まってなんか可愛くて良い。


(自分で言うなって感じだけど、そうね。

 でも、仕方無いんじゃない?)


 仕方ない?

 俺は首を傾げる。


(世界の叡智の塔が現れて、突然、世界のトップだ〜なんて持てはやされて、強さだけはとんでもない化け物だけど経験不足なのよね。


 多分だけどさぁー。

 アンタが魔王城で合流しなかったらアタシら全滅してたんじゃないかな?

 初めて仲間失って精神的に追い込まれてたし。

 アタシも疲れ切ってたしさ)


 あまりにあっけらかんと言うので、俺はちょっとギョッとしてしまった。


(何?

 お前らそんなにヤバかったの?

 俺があのカバ魔獣に連れて来られる前に誰か死んだか?)


 幻のメンバーが居たのだ、そいつこそきっとNo.0に違いない!


 ……それだったら、死んでるっちゅーことになるから違うな。


(チェイミーよ。

 アンタが助けたでしょ?

 それを死んだと思っていた私らは酷いもんよ?

 ツバメなんて瞬きもせずに泣いてたんだから)


(こわっ!)

(酷い!!)


 いやいや、想像したら怖くね?

 ただでさえ綺麗な顔なんだから余計に怖い気がする。


(だからアンタが魔王を倒したってのは、誇張でもなんでもないのよ?

 あの後、皆の顔も明るくなったし魔獣も出なかったし)


 俺は逃げるのに必死でそれどころじゃなかったなぁ……。

 そういや、あの時の宝石どこかに落としたな。

 高く売れそうだったのに。


 今は金が無くても全部出してもらってるけど。

 ナニソレ、コワイワ。

 詐欺をしていない詐欺師に貢ぐなんてどういうこと?

 まさか、詐欺に遭っているのはわたくしの方だったかしら?


(話変わるけど、そういや今、俺たちの旅の金とか誰が出してるんだ?)

(ほんとに急に話変えたわね?

 知らないわよ?

 そこのNo.1のところの国じゃないの?)


 なんと!?

 パトロンを凹ませてしまった!

 急いでフォローせねば!!


(なんでだろ?

 アンタが何考えているか、手に取るように分かってしまうわ)


 やったね!

 立派な詐欺師になれるね!


(ならないし、なれないから。

 アンタも詐欺師にはなれないわよ?)


 嘘だ!! 俺は詐欺師だ!

 それかバグ博士のところで研究員になるか、街で古本屋をするかどちらかだ!!


(意外と堅実ね。

 どっちも叶わぬ夢だけど)


 なんでだよ!

 夢を諦めるなよ!

 夢は叶うんだ!


(ほら、夢見てないで現実見てNo.1のフォローする!)


 おっとそうだった。

 立ち上がるのよ、ゴンザレス!

 貴方にはまだやるべきことが残っているのよ。


 早くなんとかしないと、1級犯罪者の詐欺師として成敗されてしまう!!!


「つまりだな、ハムウェイ」

「いや、君たちの会話聞こえてたから。

 それとお金を出してるのはカストロ公爵だから、君だよ?」

 いつの間にかこちらを見ながら苦笑いを浮かべるハムウェイ。


「聞かれてたぞ!

 エルフ女!!

 どうしてくれんだ!!」


「知らないわよ!

 こんな狭い場所の中で話を聞かれないと思う方がどうかしてんのよ!」


 俺はNo.1に必死に訴える。


「きゃー!

 やめてー!

 逝っちゃう!

 逝っちゃうから!

 そんな太い自慢のモノ(槍)で突こうとしないでー!

 昇天しちゃう!!

 おたすけー!

 こんなところで(命を)散らしちゃうー!!」


 お、お許しをー!!!


「いや、だからあんた、それ。

 わざとよね?」

 エルフ女がやけに目を細め、スンって顔でそう言ってくる。


 何がだァァァアアアア!!!

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